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第3話 不器用な教団

 そんな訳で視察を早々に切り上げ、自室へ戻る。

 さて、それでは現状認識を使ってこの教団と今後の作戦を考えてみるとしよう。

 幸い紙とペンは部屋に置いてくれていた。

 古典的なつけペンだが無いよりはずっといい。

 さて、まずはこの教団の現状だ。

 なぜ貧乏なのだろうか。


 この生命の神(セドナ)教団、昔はかなり有力な教団だったらしい。

 今でも教団専従員の数は他の有力な教団、例えば商売の神(マーセス)勝利の神(ナイケ)とそう変わらないか、下手すればそれより多い位だ。

 でもその専従員のほとんどが農業に従事しているか他に働けない人々。

 つまり破綻した小作農や貧困で捨てられた人々等を救済する形で教団専従にしただけ。

 だから実際に神事に従事する人員はごく少ない。


 でもそれなら農産物の生産高が多くて自己資金が多そうなものだ。

 確かに教団内部の生産力は他の神殿より遙かに高い。

 ただそのほとんどが貧しい人や病人の救済に充てられてしまっている。

 他には食料の施しやら安価な施術院の開設、孤児院等の運営。

 そんな本来国がやるべき福祉部分まで自己資金で担ってしまっているのだ。

 その癖寄付金だの交付金だのは殆ど無かったりする。

 金持ちには受けない教団という訳だ。

 本殿からして少しぼろけていてみすぼらしいし。


 つまりこの教団は善良で人が良すぎて不器用だ。

 まさにあの生命の神(セドナ)の教団だなと頷けてしまう。

 同じような雰囲気を感じるのだ。

 ではこの教団により力をつけさせるにはどうすればいいか。

 それもこの善良な愛すべき部分を崩すこと無く。


 まず必要なのは金だ。

 何をやるにしろ必要なのはお金だ。

 さっきの俺の奇跡で今年の農業生産高はそこそこ上がるだろう。

 何なら教団の他の農場でも同じ事をやってくればいい。

 そうやって収入を地道に増やす。

 それがまず第一歩だろう。


 ある程度の資金が出来たらどうするか。

 金持ちに受ける施策を始める必要がある。

 この教団が他の教団より優れている点は生命の神(セドナ)の御力。

 つまり農業生産とか医療とかの分野だ。

 ここにしかない美味を提供するレストランとか、治療効果が他より優れている病院とか。

 勿論その辺はある程度贅沢かつ余裕がある作りにする。

 その分おぜぜも頂く訳だ。

 また教団との接点を増やしてここを理解してもらう。


 他にイメージ改革なんてのもする必要があるな。

 教団にわかりやすく人を引きつける何かをやらせる必要がある。

 例えば豪華で洒落た神殿なんてのは、それだけである程度人を引きつけるだろう。

 そんな建物はこの教団には似合わないけれども。

 何か他には無い、人を引きつける魅力が何か欲しいのだ。


 勿論そういった事をするには専従員の意識改革も必要だ。

 いつでも清貧の思想という訳ではく、使える時には使うのも善というように意識をかえて貰う必要がある。

 贅沢は敵だでは貧乏人しか集まらない。

 その貧乏人すら贅沢を味わえる身分になると去ってしまうのだ。


 つまり教団専従員の意識改革こそ一番大事だな。

 その辺について大司教の皆さんと話し合う必要がありそうだ。

 あと行動としてやるべき事はセンチュウ退治とグルメ発掘。

 特にグルメ関係はそれなりにいい材料がありそうな気がする。

 視察した限りでは農業技術もこの時代としては先進的だった。

 地球ならいわゆる農業革命で広まった休耕期間の少ない輪作が既に行われている。

 その辺は流石生命の神(セドナ)教団だけある。

 あとは調理法とか調味料、香辛料、ハーブ等を上手く活かせば金持ちを引きつけるような料理を作れるだろう。

 そんな事を思った時だ。


「使徒レン様、宜しいでしょうか」

 部屋の外からそんな声が聞こえた。

「大丈夫です。何でしょうか」

「夕食が出来ましたので食堂の方へとご案内致します」

 よし、まず食材を確認する機会が出来たぞ。

「わかりました。今行きます」

 そう言って俺は立ち上がった。

 

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