第30話 料理教室実施結果
奥様メインの料理教室に俺が行くわけにもいかない。
なので今回の料理教室にはロレッタを派遣する事にした。
彼女は元々レストランのメニューの原型を考えた位に料理は得意だ。
近くの病院で子供を診療したりして地域にもある程度なじんでいる。
そんな訳で料理教室のメニューを決めたりレストランや教会との連絡をさせたり。
そういった作業はロレッタに任せる事にした。
なお彼女が抜けた分の授業は俺かイザベルが代行することにする。
俺達が別の仕事でいない場合は他の誰かにお任せだ。
基本的にプリントと授業用の教師用副読本があるのでどの先生でも全部の教科を教えられる事にはなっている。
ただそこは得意不得意、更にクラスとあうあわない等があるわけだ。
その辺はまあ色々考慮しての事になるけれど。
そんな訳で稟議書が通ってから約1月。
第1回料理教室は平日である2の曜日。
午前、午後と2回に分けて行うことになった。
2回に分ける理由は単純で単に申込者が多かったからである。
教会の施設を考えると1回の教室に10人がやっと。
だが参加したいという希望者は30人近くいたそうである。
取りあえず今回は先着順で受付け、もれた方には次週にという事にした。
なお今回のメニューは鶏肉の照り焼き、マヨネーズサラダ、味噌汁。
教団でも使っている味噌や水飴、マヨネーズを使ったレシピだ。
味噌も水飴もマヨネーズも既に商品化して市場経由で市販しているそうだ。
場所によっては信徒の農場等に委託して作って貰ったりもしているらしい。
「商品化とか俺は知らなかったぞ」
「どうせソーフィア大司教かその部下が考えたのだと思うのです。あの辺は油断も隙も無いのです」
「でも実業系はスコラダ大司教の担当じゃないのか」
「スコラダ大司教はそういった器用な真似は出来ないのです。間違いなくソーフィア大司教が横から口出しして事業部にやらせたのです。そんな事を考える大司教はソーフィア大司教だけなのです」
そんな感じだそうである。
さて、2の曜日に料理教室をして3の曜日には治療院の手伝い。
なので俺が報告を受けるのは4の曜日になる。
「どうだった、料理教室は」
「大好評でした。もし次回があるならそれも参加したいって全員が言っていました」
それは良かった。
「味噌やマヨネーズのようなものはどう使えばいいのか、わからない方も結構いたんみたいです。これだけでこんなに味が変わるなら是非家でも試してみたいと言っていました」
うんうん。
「これで教団が出している商品も少し売れ行きが上がるかもしれないな。試したのは20人でもそこから口コミで色々広がっていくだろうし」
「それくらいはソーフィア大司教も考えていると思うのです。おそらく商品もある程度増産して待ち構えていると思うのです」
イザベルの元上司に対する信頼? はあつい模様だ。
「でも料理教室を定期的にやられたら学校が大変だよな。少ない人数で回しているし、出来れば学校に応援を貰わないと」
「でも学校に応援を要請するのは気が引けるのです。これで応援を要請すればロレッタが料理教室専従として取られてしまう可能性が高いのです。こういった教室物はやはり腕や人格から出来る人が限られると思うのです。そしてロレッタは間違いなく料理教室の講師役としては適任なのです。これで学校に応援を呼んだなら、ロレッタは料理教室専従員としてあちこちの教会を回る担当にされてしまいかねないのです。ソーフィア大司教一味はそれくらいの事は考えそうなのですよ」
うわあ、確かにそうだ。
「何か対策はないか、イザベル」
「こうなったら先手を打つしかないのです。料理教室専従スタッフをあえて2人位要求するのです。配置されたらロレッタ指導の下で料理教室のノウハウをたたき込むのです。そうしてその専従員に各地の教会を回って料理教室をさせるのです」
なるほど。
「それにしてもソーフィア大司教の処って結構油断も隙もない部署なんだな」
「他の大司教方が企画関係を一切出来ないのですよ。他は儀式しか出来ない爺さんとくそ真面目に仕事をやる事しか出来ないおっさん、治療施術等の教育や施術そのものしか能の無いおばさんなのです。なのでちょっと変化があったりすると全てその辺の指示を事務部門がやらされるのです」
「そうそう。孤児院の先生や施術院の術師の養成は医療厚生部ですけれど、運営そのものは結局事務部門がやっていますから」
「教団の皆さんは善良なんですけれど往々にしてシビアな実務処理能力に欠けているのです。その分事務部門が色々鍛えられるのですよ」
なるほど。
色々大変な模様だ。
でもそうなるとまずやるべき事はだ。
「イザベル、稟議書の作成だ。さっき言った料理教室専従員の件を頼む」
「任せるのですよ」
これも俺達の業務であり日常だ。




