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第24話 次のプロジェクト

 今回の巡行は前回の半分の期間、1か月ちょいで済んだ。

 これはひとえにイザベルのおかげである。

 使用できる力の総量は流石に使徒である俺とイザベルには違いがある。

 でも施術の方法論さえわかればイザベルもほぼ俺と同等の事が可能だ。

 治療なんかも特に御力が必要な施術以外は肩代わりしてくれるしな。

 

 そんな訳で無事ラテラノの教団本部に到着。

 いつもの仕事部屋に到着すると何故か1人増えていた。

 しかも3人とも忙しそうになにやら書き物をしている。

 その見覚えが無い一人が俺を見て立ち上がった。

「使徒様はじめまして。私はつい1週間前にこちらに配置換えになったエヴェリーナ司祭補と申します。ここに来る前はテュランの孤児院担当でしたが、この度学校を設立するという事でこちらに参りました」

 既にソーフィア大司教は動き始めていたようだ。


「着任おめでとう。俺が使徒のレンだ。孤児院の現状を知っている人が来てくれて助かる。これからよろしく頼む」

「補佐のイザベル司教補なのです。よろしくお願いするのです」

 ひととおり挨拶をした後、早速打ち合わせに入る。

 帰って早々だが学校の件は早く進めておきたい。


「学校の件について今までの決定事項等を順を追って教えてくれ」

「はい、要点を1枚にまとめておきました」

 ロレッタ司祭長からメモが俺とイザベルに回って来た。

 わかりやすくて助かるな。

 俺はその1枚紙に目を通す。


 決定事項はだいたいこんな感じだ。

  〇 学校設立場所はラテラノの教団本部敷地内

  〇 生徒の入学時年齢は10歳以上12歳程度までを目安とする

  〇 生徒は当初100名、最終的には3学年で250名~300名程度の予定

    このうち40名は孤児院出身で他60名は募集

  〇 基本的に午前中は授業、午後は作業に従事

  〇 親に渡せる補助金は勤務稼働日数×正銅貨5枚(500円)程度

    1月毎の前払い

  〇 別に本人の補食等費用として勤務稼働日数×正銅貨3枚(300円)を支給

    これも1月毎の前払い

  〇 食事は1日3食教団員とおなじものを支給

    他衣類等も制服、私服、作業服をそれぞれ支給


「費用だの仕事の運用だのは先に決めておいてくれた訳なのですね」

「実際はほとんど孤児院担当のモニカ司教補が連絡してくれた内容です。使える予算と労働力を考えてとの事です」

「うわっ、あの怖いおばさんなのですか」

 イザベルは何かモニカ司教補に思うところがあるらしい。

「私はそう感じませんでしたけれど」

「よく予算でやりあっていたのですよ」

 なるほど。

 同じソーフィア大司教配下だからな。


「ただあのおばはんの言うことなら間違いはない筈なのです。とすると、あとは学校の教育内容は人員配置、日課時限等なのです」

 つまりその辺の具体的内容を決めなければならない訳だ。

「エヴェリーナ、まず例として孤児院で実際にやっている日課時限とか教育内容を教えてくれ。その辺から詰めるのが効率的だろう。まずは日課時限からだ」

「わかりました」

 まずは日常生活の時限から検討を開始する。


「宗教的行事はあえて最小限にしよう。朝の目覚めの礼拝と儀式、就寝前の礼拝と儀式、この2つがあれば十分だ」

「でもうちの教団にいる以上、朝の説教会と毎週1回の集会は義務だと思います」

「この学校は教団が運営しているけれど教団外の生徒も預かる訳だ。だから考え方は出来るだけ外に近い感覚で行こう。それに生徒は出来れば卒業後、教団外の色々な場所へ羽ばたいて欲しいんだ。将来的には教団と一般の人を繋ぐような形になって欲しい。わざわざ専従信者と同じ事をしなくても、朝夕の儀式に出るだけである程度教団の考え方については理解して貰えるだろう。それで十分だ」

「では何故起床時と就寝時だけは残すのですか」

「寮に住んでいる以上その辺の管理は必要だろう。点呼の代わりだと思えばいい」


 日課時限の骨格が決まったら、次はいよいよ授業等だ。

 1クラスを何人にするかとかその辺も含めて決めなければならない。

 その辺の兼ね合いで授業時間が決まってくる。

 そこから授業で教えられる内容量もおのずと決まる。

 そうすれば学校に必要な職員の数も出る訳だ。

 ただこの辺は色々激論になった。

 それぞれ皆さん教育に一家言あったのである。


「やはり歴史はしっかり学んでおくべきなのですよ」

「私はむしろ現代の国内の地理をまず覚える方が便利だと思いますわ」

「俺は数学こそやるべきだと思うな。思考の論理性を養うには一番だ」

「主な植物や動物の生態等について知った方が生きる上で役に立つと思います」

 こんな感じだ。

 なお一人議論に参加していないのはエヴェリーナ司祭補。

 彼女は孤児院では基本的に読み書きと加減算程度まで、あとは教団の教本等を読んで独学したそうである。


 俺としては算数を最低でも分数を使う文章題まで。

 出来れば一次方程式の文章題を解ける程度まで教えたい。

 そうすれば論理的思考力が相当高まると思うのだ。

 でも待てよ。

 それだと小学校6年プラス中学校1年くらいはかかるな。

 今回授業に使えるのは午前中だけの3年間。

 そうすると分数までいければ御の字、普通に考えれば割り算までか。

「よし、それじゃ3年間で教えるべき内容を書き出そう。まず国語、読み書きと単語を覚えるのは必要だろう。せめて初級の教本を読める程度にはならないと社会には出せない、違うか」

 そんな感じで国語、算数、理科、社会にわけて内容を書き出す。

 なおこの4区分にした事については少々物言いがついた。


「社会は歴史、地理、現代社会にわけるべきなのですよ」

「でもそれだと授業数が足りないだろう」

「なら理科と算数を削って……」

「算数は無理だぞ。これでも四則演算を教えるのが精いっぱいだと思うんだ」

「農林水産業にとっては理科は重要だと思います。だからここは譲れません」

 言い合い、いや熱心な討議は続く。

 

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