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エピローグ まだまだ続いていく日々

『前略 校長先生と副校長先生、ご結婚おめでとうございます。『もう少し早くくっつくと思ったんですけれど』なんてエレナは言っていますけれどね。


 ラテラノでの結婚式に参列できなくてごめんなさい。流石に学校がある平日にラテラノまで行くのは無理なので。校長先生みたいに何処でも短時間で行ける術が使えるといいのですけれど。私達がアネイアの寄宿舎に引っ越す頃にはカラバーラまで1時間かからないとか言っていましたよね。安息日に出かけて副校長先生が好きなハムとアマウリを貰ってきていたりしていましたし。

 ひょっとしたら今頃は副校長先生も同じ術を使えるようになっているのかな。もし出来るようになったら夏休みにでも教えて貰いたいです。


 結婚式の様子は参列したロザリア司祭に伺いました。

『結婚式は教団本部でささやかにやる予定なのですよ』

 そうお聞きした割には結構大変な結婚式だったようですね。招待客以外の参列者が溢れて本部ドームに入れない位だったとか、飛び入りで国王様までみえられたとか。校長先生のまいったという顔が想像できるようです。

 参列できなかったかわりにロザリア司祭に託した贈り物のテーブルクロスセット、使っていただいているでしょうか。エレナやアウロラ、キアラと4人で選んだものですけれど、確か副校長先生がこういう可愛い柄が好きでしたよね。使っていただけたら大変嬉しいです。


 こっちは皆元気です。4人は勿論他の皆も。ロベルトは相変わらず『ああ、もう駄目だ』『まずいまずい』なんて言いながらも好成績をキープしていますし、フラヴィアはやっぱり余裕綽々という感じだし。アデルモもバジリアもカミーラも元気です。学校も楽しいです。校長先生や副校長先生みたいに何でも質問に答えてくれる先生は流石にいないけれど、専門分野の事は色々詳しくてよく知っているし。本なんかも色々揃っていますしね。


 あと貴族の友達も出来たんですよ。ヴィオレッタさんと言ってあのグロリア先生の従姉妹だそうです。グロリア先生の事を知っていて、ここで何をしていたかとかどんな様子だったかとかも色々聞かれたりしました。グロリア先生って侯爵家のお嬢様だったんですね。ヴィオレッタに聞いて初めて知りました。なおヴィオレッタの家は伯爵様だそうです。


 他に副校長先生や校長先生についても色々聞かれましたね。副校長先生と仕事をしている事は以前手紙で知ったそうです。校長先生はまあ、使徒として色々有名人みたいですし。特にこの前の闇の神(アイバル)の使徒との戦いでこっちでは英雄扱いされています。普段はそんな雰囲気はないんだよって教えたら皆驚いていました。


 あと安息日にヴィオレッタの家にお呼ばれして遊びに行ったのですが、お家が凄く大きくて驚きました。家の中も沢山の人が働いていて。でも出たデザートはロレッタ先生や校長先生が作った物の方が美味しかったかな。私の今のところのデザートベスト1はロレッタ先生作のクリームブリュレで、2番が校長先生作のチーズケーキです。まだその2つを越えるデザートには出会ってないですね。


 まもなく期末テストですけれど、これが終われば夏休みになります。夏休みになったら4人でラテラノの学校に遊びに行こうと思っています。前に聞いたのですが今年は校長先生と副校長先生、巡行は無いのですよね。なので夏休みになり次第押しかけますのでどうぞ宜しく。一応生命の神(セドナ)の信徒なので教会で宿泊できますから。本当はロナあたりの部屋に泊まった方が楽しそうだけれど、エヴェリーナ先生辺りに怒られちゃうかな。


 それではまたお便りします。でも次は直接行く方が早いかなあ。それでは校長先生も副校長先生もお元気で。

                                   草々


 追伸 校長先生の件は諦めていません。折角副校長先生が生命の神(セドナ)の教えに可能性を残しておいてくれたので、いずれ有効に活用させて貰う予定です。せめて高等学校か研究院を卒業した後になるとは思いますが、その時は副校長先生、いえイザベル先生、どうぞ宜しくお願いしますね』


 ◇◇◇


 読み終わってなんだかなあ、と思う。

 何と言うかクロエちゃんらしい手紙だよな。

「なんだか強烈な追伸が入っているな、これ」


 イザベルは苦笑する。

 なお彼女は既にこの手紙を読了済みだ。

「あの教学の件に関しては私の不覚なのですよ。我ながら当時は世間知らずだったと思うのです。でも今更教学をまた再改訂するのは流石にはばかられるのですよ」

 確かに。

 当時のイザベルはむしろ多夫多妻を推進しようとまでしていたからな。

 あれからまだ4年ちょいしか経っていないのだけれども。


 俺がこの国に来てから5回目の夏を迎える。

 色々な事をやってきたけれど、まだまだやり足りない事は何気に多い。

 例えばもっと一般人に術を広める事業とか。

 初級施術程度の術なら誰でもある程度教えれば会得できる。

 例えば普通の人が灯火の施術や熱の施術を使えるようになったとしたら。

 暗いところでも困らないし、炊事も洗濯もお湯を使える分今まで以上に楽になる。

 生活が一段と豊かになると思うのだ。


 もっと大がかりな事だってある。

 例えば流通関係だ。

 今の流通のメインは馬車と沿海船。

 だが正直俺には物足りなく感じる。

 例えば馬車は精々1日120キロ程度までで積載も精々1トン程度。

 一応主な都市間は最低幅6メートル程度で石畳舗装の街道が整備済み。

 だが土地の起伏が大きく平坦な土地が少ない地形がそれ以上の速度を許さない。

 船に至っては縦帆の最新型船でも南部から北部まで1週間以上。

 ここの海は内海で風向きが安定しないというのが理由として大きい。


 でも俺が開発した術を使えばスティヴァーレ王国内なら何処でも1時間以内で人や物を移送できる。

 この術が使える術師が拠点都市に数名ずついるだけで流通が一気に変わる訳だ。

 なおこの術が使徒以外でも使えるのは確認済み。

 何故ならつい先日、イザベルもこの術を使えるようになったから。


 他にも現代日本の知識でこの世界に活かせるものは色々あると思う。

 数学とか理科的な知識とか。

 まだ手をつけていないが蒸気機関なんてものもいずれは挑戦してみるつもりだ。

 勿論俺一人で出来る訳では無い。

 イザベルもいるし、教団の皆さんもいる。

 守旧派の貴族連中も闇の神(アイバル)教団と使徒を倒した事で当分はおとなしくしているだろう。


「何を考えているのですか」

 イザベルが俺に尋ねる。

「いやさ、まだまだやれる事はいろいろあるな。そう思ったんだ」

「及ばずながら協力するのですよ」

「勿論イザベルには色々手伝って貰う。例えばさ」

 生命の神(セドナ)は俺の使徒としての目的は達成されたと言っていた。

 でもまだ俺は生きている。

 やれるべき事もあるしやりたい事もある。

 そしてイザベルが横にいてくれる。

 だから俺は今度も思いついた案の一つを早速イザベルに相談してみる訳だ。

「こんなのはどうだ。料理教室と同じ感じで初級施術教室というのは。内容はさ……」

 これでこの物語は終わりです。

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ありがとうございます。楽しんで読みました。一つ一つ、ゆっくりでも理想を実現していくために行動する人々の話。架空世界だけれど、現実の社会や自分の生き方について考えさせられました。 [気になる…
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