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全ては神の思し召し~神の使徒として転生してしまった俺の改善改革次第~  作者: 於田縫紀
第20章 冬の終わりに

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第111話 落ち着かない日

 いよいよ2月になってしまった。

 今年2月の最初の安息日は3日。

 国立中等学校を受験する生徒は会場がアネイアなので前日の2日に出発。

 でも南部や北部の領立中等学校を受験する生徒も早い生徒は2日に出る。

 何せ最大で5日かかる場所もあるのだ。

 悪天候とかを考えると余裕を持って出た方がいい。


 3年生は本日から自由登校。

 寮にいても学校に来てもいい。

 わからない処は質問に来い、あとは自由という状態。

 生徒連中の様子はまあ色々。

 とにかく最後まで色々対策をやらないと落ち着かない生徒もいる。

 余裕こいている生徒もいる。


 なお試験が無い連中はもうやりたい放題。

 中には木工所でちゃっかり自分用の家具なんて作っている奴までいる。

 マニエルお前だお前!

 就職が決まっているし新居もすぐそこだからと言って調子にのるんじゃない。

 ダリアお前も同罪だ!

 マニエル用の食器と自分用の家具類をバーター取引するんじゃない!

 グレタに自分用の鍋を頼むのはまあいいとして。

 あいつは遠くに行くしお金を持っていた方がいいからな。


 2日の朝、国立希望者、ナープラより南の領立中等学校希望7人、北部のウェネティより先の領立中学校希望者をそれぞれの馬車に乗せ、3年に関わりのある先生や寮監全員で見送る。

 俺達としてはやるべき事はやったつもりだ。

 あとは落ち着いて実力を発揮してこいとしか言えない。


「行ってらっしゃい」

「お土産買ってくるね」

「土産はいらないから合格してこい」

 そんな感じで馬車を見送って、ちょっと一息。


「いよいよ始まりましたね」

「ええ」

「どうも落ち着きませんね。私達が落ち着かなくても何も変わらないのに」

「最初の生徒ですからね。仕方無いですよ」

 そんな事を話しながらイザベル以下は学校へ。

 俺は使徒様として説法や最高幹部会議のために本部ドームへ。


 最高幹部会議が終わって学校へと戻る。

 でも学校もそこそこ忙しい。

 3年の授業は無いが事務作業が山ほど増えているのだ。

 例えば卒業後進学する生徒のほとんどは自宅や寮以外に住む予定。

 それら生徒の住居やアルバイト先の打診作業なんてのもある。

 あらかじめ生徒の希望に添って各地の教会に連絡しておく訳だ。

 勿論新学期に入ってくる新入生に対しての準備作業もある。

 新入生の服装類一式から布団やシーツ、教材各種や農場等での仕事まで。


 俺がサインしなければならない書類だけでも山積み状態。

 何せ問い合わせだの注文だの外部に出す書類全て学校長名で出すから仕方ない。

 グロリアも今頃はこんな苦労は……あそこの卒業生は来年からか。

 来年は生徒数が多いからもっと大変だろうか。

 それとも今年で前例が出来た分少しは楽だろうか。


 仕事は多いが職員室は静かだ。

 休み時間なんかは特にそう感じる。

 2年生や1年生の生徒が時々質問にきたりもする。

 でも今まで一番うるさかった奴らがいない。

「静かすぎて落ち着かないのですよ」

「ああ」


 イザベルの手下4人組なんて休み時間ごとに顔を出していたからな。

 勿論後釜もいるのだがあいつら程じゃない。

 2年1組の連中も今の3年の連中ほど怪しい質問を持ってきたりしなかったし。

 その辺はまあ俺達先生側も学校に慣れた分、説明もうまくなったし色々手際よくなったりしたせいもある。

 俺が校長の仕事に追われ今では高学年主体に授業をしているせいもある。

 だけどまあ、奴らは最初の生徒だっただけに思い入れも余分にあるのは事実だ。


 仕事は進むのだが何か落ち着かない学校の仕事時間が終わる。

 イザベルと片付けながらちょっと雑談。

「朝出た連中ももう全員、宿になっている教会についているだろうな」

 南へ行く連中も北へ行く連中も、それぞれ馬車はもう到着している筈だ。


「国立の連中だとアネイア観光くらいしている可能性もあるのですよ」

 確かにやりかねない奴らもいるな。

 そう思った後、待てよと思い直す。

「流石にランベルト司教あたりが許さないと思うぞ。堅物だからな」

「下見とか言い訳して出るのですよ。出てしまえばこちらのものなのです」

 確かに。

「奴らならそれくらいの悪知恵は働きそうだな」

「3年かけて鍛えたのですよ」

 悪知恵をか、というのはおいておくとしてだ。


「何やかんや言ってこの期間でやるだけの事はしたと思うのです。あとは結果を待つだけなのです」

 どちらかというと自分に言い聞かせているような台詞だ。

 やはりイザベルも気になっているんだなというのはわかる。

 こういう時は気休めだ。

「何なら礼拝堂で祈っておくか?」


 使徒であり神の実在を知る俺が神頼みを気休めというのは失礼かもしれない。

 でも神は本来人間の判断基準や感情を理解できない。

 信者の通常の祈りも、神は祈った事実こそ理解できるがその意味を必ずしも理解できる訳ではない。

 だからこそ俺のような使徒という存在がいる訳だ。

 その事は誰よりも充分にわかっている。

 でも、それでもだ。


「そうですね。生命の神(セドナ)の御徳に受験合格があるかはわからないのですが」

「俺もそうしよう。これでも使徒だからそれなりの効果があるかもしれない」

「とりあえずマイナスにならないのなら祈っておくのですよ」

 そんな訳で2人で礼拝場ことドームの場所へ向かう。

「やはり受験は勝負だから勝利の神(ナイケ)が正しいのかな」

勝利の神(ナイケ)は勝負そのものには公平な神なのです。だから実力が無い者が祈っても無駄なのです」

「なら生命の(うちの)神に奴らに幸運あれとでも祈っておくか」

「その程度がきっとちょうどいいのですよ」

 そんな事を話しながら。

 

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