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水瓶座のナイト 3

□    □    □




「お前等は昔っからそうだ!意味も無く結界張り巡らして、関係の無い戦いをしやがる。ちったー成長を見せろ!」


水瓶座の騎士が地面に沈んだ後。

仁科は、鬼の形相で二人に正座するよう進言し、二人の正面に仁王立ちになり、その状態で20分近くの説教を続けている。

これは続く…と思いながら、ブロック塀に腰掛けた竜が周りを見渡せば、瓦礫の山。

死人が出てるのでは、と疑問を覚えるほどに悲惨な光景である。

その時、足元に誰かが膝を付いた。

茶色のツンツン頭の男。

その顔は、綺麗に整っている。


「初めまして。」


跪き、頭を下げる洸。

竜は驚愕の目を向けている。

対して、洸はなかなか顔を上げる事が出来ない。

目の前に居る青年が、自分達の王。

青年から溢れて来る力が、洸を圧倒して来る。

その美貌も直視する事が難しい。

美形は見慣れているつもりだったが、それの上を行く造形をしている。


「あー…と?ドチラさん?」

「“蟹座騎士(カンクロ・エクウィティ)”の保塚洸と言います。」


竜は少し考え、ああ、と声を上げた。


「蟹座の…アクベンスのか…。」


穏かな声で、初代の名を呼ばれハッと顔を上げれば、静かな微笑みに硬直してしまう。

それに気付いた仁科が、洸に歩み寄り、洸の頭を二度叩いた。


「戻って来い。竜、無駄にフェロモンを流してるんじゃない。」

「流したつもりは…。」


ない、と否定するが、仁科の後ろに居る青年が、子犬のように潤んだ目でこちらを見ている。

一瞬、竜の胸がキュンとなる。


「雅、もう良いからおいで。」


仁科が言えば、嬉しそうに破願して竜の足元に座り込んだ。

仁科と洸は呆れつつ、微笑んだ。


「竜、その子は“水瓶座騎士(アックワーリオ・エクウィティ)”の宇崎雅だ。」

「水瓶…サダルメリクか。」


ぽふ、と柔らかな髪の毛に右手を乗せれば、雅がはにかみ、竜の胸は更にキュン。

そういえば、と思い当たる。

水瓶座の“エクウィティ”は、“獅子の王”レグルスに対して正に犬のように従順だった。

そして、水瓶座の“オルディネ”は…。


(めっちゃ…睨んでますね。)


不穏な気配の先には、容赦なく竜を睨みつける男が一人。

正座をしている為、少し迫力に欠けるが…。


「アレは、“水瓶座騎士(アックワーリオ・オルディネ)”の井端瀬蓮。周りからは、セイレーンと呼ばれてる。で、察しの通り、初代の時からお前を勝手に敵対視してやがる。」


面倒臭そうに説明をする仁科に対し、「やっぱり…。」とげんなりしてしまった竜。

王が大好きな“水瓶座騎士(アックワーリオ・エクウィティ)”、それが途轍もなく許せない“水瓶座騎士(アックワーリオ・オルディネ)”、その理不尽な妬みに辟易する“獅子の王”。

昔からその構図に変わりは無いのが不思議な事である。


「ま、いいさ。雅!」

「あ?」

「近々、決着つけような…。」


寂しさの混じる瀬蓮の声。

小さな風と共に、その姿を消した。

振り向いていた雅の表情も、僅かに曇っている。

小さくパンと手を打つと、瞬時に瓦礫の山が元通り。

竜の目が点。

硬直である。


「結界消せば元通り。器物損害無い、人死なない。」


雅はいつもの無表情になると、竜の赤銅の目を見つめながら呟いた。

年下かと思いきや、雅の着ている制服の襟章から学年を読み取り、顔に出さないように驚いていた。







―――――同い年なんだ…。







と。

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