決意
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ハッと目を開けば、そこは見慣れた天井。
飛鳥組の客間だ。
「ぅあ…ダル…。」
重い頭を押さえながら、起き上がってみると、赤いものが視界の端を滑ってきた。
「あ?なんだ?」
空いた手で掴み、グイッと引っ張ってみると、自分の頭が痛くなった。
暫し、思考も動きも停止する。
―――ガラ
「ああ、起きた?具合はどう?」
流が入室して来たが、未だ回復しない。
パンッと流の張り手が、竜の後頭部に炸裂した。
「起きた?」
「おう…。」
叩かれた場所を摩りながら、手元の真紅のものに視線は固定されている。
流も、その手元を覗き込む。
「あのさ、流さん…。」
「ん?」
「コレ…髪?」
「髪ね。」
「俺の?」
「あんたのね。」
頭に櫛が通されるのを感じた。
手元の髪が後ろに梳かれる。
引っ張られる感覚と、髪が揺れる感覚。
「はい、出来た。」
ぽんぽんと頭部を叩かれ、結び終わった事を知らされる。
皮膚が引っ張られて少し違和感を感じる。
「尻尾が出来たね。可愛いよ。」
ふふ、と流が笑いながら、竜の髪をくいくいと引っ張った。
なんだか照れ臭い。
不意に思い出した、祖父の言葉。
―――千鶴に…彼の先代に伝えてくれ…。
「そうだ…伝えなくちゃ、いけない。」
それには、と顔を上げた。
「まず、強くならなくちゃ…。」
その呟きに、流は何も言わず、笑みを深めた。
「世界を…救える力を…。」