表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

7話 肥料集め

ブックマークと評価ありがとうございます!

励みになります。゜+.(*´∀`*)゜+.゜




「肥料の三大要素は、カリウム、窒素、リン酸」

「それは呪文でしょうか? お嬢様」

「根や茎を育てるカリウム、葉や茎を育てる窒素、花や実を育てるリン酸──確かに呪文のようね」

 私は笑みがこぼれた。

(前世で(つち)った家庭菜園の知識が活きるわ!)


 ルーシーに案内されたのは、屋敷の庭と雑木林──林も公爵家の土地だ──の間にある木造の小屋の前だった。小屋は、庭師が仕事で使う園芸用品を仕舞っている倉庫で、いざというときに道具を借りることができそうだ。

 周囲は土が()き出しになっていて、小屋の横には無造作に土の塊が積まれていた。この土は自由に使ってもいいらしい。


 さっそく土いじりをしたいところだが、その前にやるべきことがある。それが先ほど言った肥料だ。

 まずは材料を集める必要がある。


 ひとくちに、カリウム、窒素、リン酸と言ってもいくつもの種類がある。けれど、土魔法で集めるなら鉱物原料の物に絞られるだろう。


「カリウムはカリ鉱石……リン酸はリン鉱石……いや骨のほうが簡単に集まるかな……窒素は……」

 前世で触った肥料の感触を思い出そうとするも、土魔法で引き寄せられるほどのイメージが湧かない。ついでにリン酸の“酸”は化学知識が必要になりそうだけど、ただの家庭菜園づくりの一般人には厳しい。

(やっぱり鉱石集めは諦めて、骨と枯れ草集めかな)

 公爵家の林は広いから、小動物の骨くらい転がってるか地中に埋まっているだろう。

 その骨を粉にして微生物に分解してもらって、カリウムとリン酸を作れないかな。

 確か、落ち葉や枯れ草にはカリウムがたくさん含まれてるはず。これも微生物に分解してもらって堆肥にしたり、灰にしてまくことでカリウムの補給ができたはず。

(全部、この世界にも微生物がいると言うのが前提だけど、大丈夫かな?)

 有機肥料よりも効果の高い無機肥料を土魔法で作れたら、と思っていたのだけど、中学レベルの科学知識しかない私には無理な話で、原始的な有機肥料で挑戦するしかないようだ。


『文明が滅びた世界で一から科学文明を復活させていく、このD*.S*O*Eってアニメ、すっごくわくわくして面白いの!』


 ふと、前世の友人、友美(ゆみ)の言葉が甦った。

 同じように化学物質を一から作っていくお話があったはずだけど、タイトルも内容も思い出せない。

(漫画のようには行かないよね)


「枯れ草はいつでも取れるだろうから、骨集めから行きましょう!」

「骨集め!?」

 傍らで見守ってくれていたルーシーが、ひょうきんな声を上げた。

 こんなもので驚くなら、窒素肥料の原料集めで卒倒してしまうかもしれないな、と心苦しく思う──やめないけど。


 地表や地中に(まぎ)れた小さな骨の欠片を手探りで探すのは、だいぶ辛い。

(土魔法で骨を集められないかしら?)


 授業で教師は「土魔法で地中の物質を取り出せる」と言っていた。「地中の()()を取り出せる」とは言っていない。

 なら、地中にある骨も取り出せるのではないだろうか?


 倉庫から適当な鉢を引っ張り出し、目の前に置く。その鉢の上で手のひらを下に向け、両手を突き出すと、自身の指先の()へと魔力を纏わせた。その状態を維持しながら、林に向けて魔力を伸ばしていく。

 授業では、私の足を中心に円状に魔力を伸ばしたが、今回集めるのは骨なので、そんなに深さは必要ないだろうと判断し、深さ1メートル、縦横30メートル四方に魔力を伸ばした。

 授業の時より広範囲に魔力を使うので、魔力残量が心配だったけれど、使った魔力は十分の一にも達していなかった。

 林の地中にそれなりの数の小さな骨の欠片を感じた。自分の指骨と地中の骨片が魔力で結びいたのを確認し、要請(オールデン)する。

 

「我が骨と同じ物質、骨よ! 骨片よ! 骨粉よ! この手に集まれ!」


 魔力の流れに従い、骨片と骨粉が地中から飛び出してきた。しかし、砂鉄の時とは違い、魔力を散らす前にすぐに地面へと落ちて行った。

 真下に置いてあった鉢の中にカランと落ちる。

(さすがに土属性では無いものは地中から出たら、操作できないってことかしら)


「次は窒素の原料──尿素とアンモニアね!」

「尿……? まさか、まさか、お小水のことではないですよね!? お嬢様っ」

 気絶することはなかったが、ルーシーの目玉が飛び出そうになっていた。

「そう、お小水のことよ」

「そんな不浄なものをどうするのですか!?」

「材料に必要なのよ。不浄と言っても、手についたくらいなら洗えばすぐに()れるわ」

「そういうことではございませんっ。土いじりですら、ご令嬢の品位に関わりますのに骨集めに……ご不浄なんて……!」

 ルーシーがいつになく、険しい顔になった。

「お嬢様、これは本当に土いじりなのですか?」

「土いじりはこの後よ。これは植物の栄養を作るためのものなの」

 私は一旦そこで区切って改めて強く言った。

「これは私にとっては大事で、必要なものよ」

「……」

 いわゆる、押し切りである。


(自然界の尿素やアンモニアって粉末と液体が混合してそうね)

 入れ物がないと大惨事になりそうなので、ルーシーに用意して貰おう。

「ルーシー。使わない水差しがあれば、持ってきてちょうだい」


「ルーシー?」

 返事がない。


「お小水を……お嬢様がお小水集め……」

 ルーシーは明後日の方向を見つめ、固まっていて動かない。

「ルーシー!」

 強めに名前を呼ぶと、ふらふらと(やかた)に戻って行った。


 ふらつきながらも美しい立ち振る舞いを崩さないルーシーの後ろ姿を見て思う。

「どちらが令嬢か分からないわね」


 最初の宣言通り、1~7話を毎日投稿できてよかったです。(投稿してからも修正しまくってますが)

 久しぶりに小説を書くと新鮮で楽しく、この数日間は他のことそっちのけで書いてしまいした。

 ですが、そろそろ他のこともしなければならず、この一週間のような毎日投稿ができなくなります。


 8話以降はゆったり投稿することになると思いますが、よければお付き合いしていただけたら嬉しいです。なるべく早く投稿できるよう頑張ります。


* * *


「面白い、続きが気になる」と思ってくれた方は、ブックマークしていただけると嬉しいです!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ