始業式
「真夏実はさ学校行ったことあるの?」
「ないわよ。」
「え?じゃあ学校に行く方法とかもわからないじゃん。ちゃんと実際に行かないとどれくらい時間がかかるのかとかわからないし...。」
「私元々学校行くつもりなかったの。でも、私を邪魔だと判断した母親にね無理矢理入れられたの。試験は簡単だったし受かっちゃって。」
「あの試験が簡単だと...。」
私立神天中学校の試験問題、それはかなり高レベルなもの。
元々賢い女子しか入れなかった学校だが、春樹は共学になるのを知り、遠さを理由に猛勉強し入ったのだ。
勉強したからにはそれなりの実力がつき入学することはできたが、それでもその試験問題を簡単だと言う真夏実の学力に少し驚かされる。
「自分で言うのもあれだけど、私は小学校のころ入塾テストがとても難しい塾で満点とって入塾したの。だけどね塾の奴らときたら...!私が羨ましいのか塾内でいじめられ、そして同じ小学校のやつがほかのやつに嘘を吹き込みいじめられたのよ!」
「なんとも俺には到底理解できない理由だな...。そんなに羨ましいならもっと頑張って勉強したらいいのに。」
「そうよね!そうよね!私もそう思うの。だから入るのならっと思って母親に頼んで難関の中学校に入学したのよ。そして普通の中学校に行ったやつを見下してやったわ...。」
「おーおーすごい性格を持っているようで。結局真夏実が勝ち逃げをしたってことか。」
「いいえ違うわ。私は最初から勝っていたのよ。あのアホ共には勝ち目がなかったのがとても愉快だったわ!」
「すごーく本性出てますよ...。でもそれが真夏実なんだよね。なんだか昔から知っていたような気がするよ。」
「そうね。私もそんな気がする。」
そう言い合い二人一緒に吹き出す。
真夏実は想いを吐き出せて満足気。
春樹は真夏実の本性が知れて満足気だ。
ふと春樹の視界に知っている人物が映った。
「お、飯塚。こっちこっち。」
「春樹か...ってその人は?」
飯塚が尋ねる人物、それはもちろん真夏実のことだ。
春樹の背中に必死に隠れようとしている。
「真夏実、こいつは俺の数少ない友達だ。安心していい。」
「はじめまして。春樹の数少ない友人の一人の飯塚 大志です。」
「ほら、飯塚も挨拶してるし真夏実もしなきゃ。」
「わかってるわよ。お母さんみたいなこと言わないでって何度も言ってるでしょ。」
小声で春樹に文句を言う真夏実は春樹の背中から出てきて息をたくさん吸い、吐いて息を整えた。
「私は吉中 真夏実です。今後ともよろしくお願いします。」
「ま、真夏実が敬語を使っているだと...!」
「失礼ね!私だって初対面の人にくらい敬語使うわよ。」
「俺には使わなかったのに...。」
「そんなに硬くならないで。俺のことは好きなように呼んでくれていいからさ俺はなんて呼べばいい?」
「ま、真夏実でいいわよ...大志...。」
「そうか真夏実よろしくな!」
「...うん。」
真夏実が顔を赤くして飯塚の名前を呼ぶ。
そしてそれに応えるようにして飯塚は微笑んだ。
「あ、そうだ俺もいい機会だし飯塚のこと大志って呼ぶようにするよ。」
「おう、いいぞ。」
「じゃあ学校行くか。」
三人で仲良く歩き電車に乗り歩き学校についた。
楽しげに話をしてもりあがりながら。
「おはようみんな!さあ今日も元気よく挨拶をしようではないか!せーの、」
「おはようございます!」
昨日と同じように熱血教師が挨拶をする。
それに対して生徒も大きな挨拶を返した。
「ねえ春樹。あの先生は?」
「あの先生は俺たちの担任。見ての通り熱い人だと思う。」
「だよね...。めんどくさくない?」
「うん。いい人だしクラスが楽しくなると思うよ。」
「それならいい。」
担任に対しての警戒心。
それは小学校生活で担任への想いが何かあったのだろう。
春樹はそれは聞くべきではないと判断し真夏実をクラスへと案内した。
「おはよー。」
「お、春樹おはよ。」
クラスにはほとんどのクラスメイトが揃っている。
そのうちの何人かが春樹に挨拶をする。
そして席についてすぐに真夏実はクラスメイトに囲まれた。
「昨日休んでいた人だよね?」
「名前は?」
「渡辺君と飯塚君と一緒に登校していたけどどういう関係?」
まさに言葉責めだ。
だが、真夏実はそれを楽しそうに一人一人に答えを返している。
これで真夏実の中学校生活は一安心だ。
「春樹!真夏実ちゃんとは出来ていたりするのか?」
「いやいやいや、ないない。ただ昨日みんなより先に会っただけだよ。」
春樹に尋ねくる少女、彼女は春樹がいじめられていた時に元気をくれた人物の一人。
そして春樹が小学校へ行っていた一つの理由だ。
彼女名前は、
「茜がこの学校に来てくれて嬉しいよ。」
「そうだぞ春樹。茜がわざわざ親戚の家に引っ越してまで来てやったんだぞ。感謝して頭を撫でてくれてもいいんだぞ?」
「はいはい。ありがとな茜。」
「うん。」
竹之内 茜。
春樹の幼馴染で春樹にとても懐いている。
そんな茜の頭を撫でて感謝の言葉を言う。
「学校生活も大丈夫そうだな。」
「うん!」
新しい生活の一歩の成功。
それを春樹は実感し真夏実に安心した事を伝え、それに嬉しげに真夏実も応えた。
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