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信頼

「春樹って料理上手ね。」

「いや、あのね、カレーくらい誰でも作れるよ?今度教えようか?」

「いや、いいよ...。」


なんとも歯切れの悪い回答。

なにか過去に失敗でもあったかのような言い方だ。


「まあさ、なんか困ったことあったら言ってよ。近所だしさ助け合おうよ。」

「春樹ってなかなかくさいこというのね。」

「ん?そうかな?」

「そうだよ。でも、助けてもらうのはありがたいかも。明日もさ起こしに来てくれない?私朝弱くて。」

「おいおい、今日知ったばかりの男に対してその態度は少々まずいぞ。しかも、朝起こしに来いってことは真夏実寝てるんだろ?俺なんかを信用していいのか?」

「うん。その点に関しては大丈夫だと思う。今日接してみてだけど、春樹はヘタレっぽそうだし。」

「誰がヘタレだ!と言いたいところだが否定出来ないかもしれない現実がある...。」

「ふふふ、春樹って正直で面白いね。」

「笑ってもらって光栄だよ!」


皮肉を言いつつ真夏実の会話を楽しんでいるとあっという間に時間が過ぎた。

時刻は夜八時。


「真夏実ってさ家事とか全くしないんだろ?」

「うん。基本しないわね。」

「じゃあさ、風呂って湯船に浸かってないかんじ?」

「うん。」

「あちゃー。まだ寒いよ?それをシャワーで終わらせるとか大丈夫?」

「なんかその言い方失礼ね!でも図星かも。シャワーだけど寒いんだよね。春樹、お風呂洗ってよ。」

「え、なんで俺が。それくらい自分しろよ。」

「めんどくさい。」

「嘘だろ...。おれは真夏実の使用人かよ...。」


真夏実の極度の家事をしたくない心。

普通なら寒いと風呂をめんどくさくても洗うが、その常識が春樹の前にいる彼女、吉中真夏実には通用しない。


「あーもう!わかったよ!やればいいんだろやれば。」

「流石春樹。」

「何様のつもりだよ...。だがな!条件がある!」

「条件?」

「そうだ条件。俺が家事を少しはしてやる。だが、真夏実もちゃんと家事を覚えろ!これをしないと俺は何もしない!」

「めんどくさいな...。でも、してもらえないのも困る。」


ここで真夏実がある考えに至った。

なかなか覚えれないフリをして春樹に家事をやらせようと。


「因みに言っておくが、覚える気がなくて俺に全てを任せようとしたっていうのわかった瞬間俺は家事をやめる!」

「春樹心でも読めるの!?」

「それくらい誰でも考えるだろう...。だから、先に希望を潰すことでやらなければいけない現実を見せてやろうとおもったんだ。」

「ケチっ。」


拗ねたように顔を背ける真夏実。

それに対して少し言いすぎたかんは否めないがそれが社会に出た時の常識なのだとまだ中学生ながら考えている春樹。


「春樹ってほんとにお母さんみたい。」

「誰がお母さんだ。そんなこと言っている暇があったら皿を洗うか風呂を洗うか選べ!」

「ど、どっちも嫌だよ!」


春樹が突き出した二択。

それに対して真夏実は逃げるようにして自分の部屋へと一気に走っていった。

そんなのを春樹が許すはずがないが。


「真夏実、出てこい。」


ただひたすらに低い声で真夏実を呼ぶ。

これは雪がわがままを言って優しくしても言うことを聞かない時に使う技だ。

普段温厚な春樹が使うからこそ効果がある技だ。

そして、それは真夏実にも同じだったらしい。


「怖いよ!」

「よし!捕まえた!んじゃ行くぞ。」

「え、どこへ...」


一日しか接していない真夏実でも春樹が声を低くすることはあまり無いと判断し、部屋から出てきた。

真夏実の腕をとっさに掴みもう離さないとばかりに不気味な笑顔を浮かべる。

そして、無理矢理皿洗いをさせるのだ。


「真夏実、今日はカレーだからそんなに量も多くないし簡単だよ?」

「でも、めんどくさいじゃん?」

「すべこべ言わず手を動かす。」

「はい...。」


何故か包丁はないくせに食器洗い用の洗剤とスポンジはあった。

なぜ料理をしないのにその後片付けをする用の道具は揃っている、謎である。

真夏実が洗った皿をみてそれがちゃんと洗えているか確かめる。


「んー、惜しいな。ここにまだ少し残ってるからもう一回。」

「はぁ、」

「ため息つかない!幸せが逃げるよ?」

「はいはいやりますよ...。」


それからというもの真夏実の食器洗いはスムーズに終わった。


「真夏実覚えるの早いね。」

「そうね。昔から勉強とかは出来たし何かを覚えるっていうことに関してはけっこう早い方かも。テレビとか見ててやってみたいっていうことがあればすぐできるようになったし。」

「なるほど。それが原因で友達から嫉妬されていじめられるようになったと。」

「なんで分かるのよ!?私の傷を抉らないでよ...。」

「ごめんごめん。ついやっちゃったよ。」


笑いながら詫びる春樹に対してあからさまに怒ったように頬を膨らませる真夏実。

実に可愛い。

ただこの性格がなければの話だか。


「食器洗いは真夏実がやってくれたし風呂は洗うよ。風呂洗い終わったら俺は帰るね。」

「了解。」


風呂は洗う必要がないくらい綺麗だった。

一応洗っておいたが。


「んじゃ真夏実俺帰るわ。」

「あ、ちょっと待って。」

「どうしたの?」

「これ持っといて。」


真夏実が春樹に渡したものそれは鍵だ。

今日だけでも真夏実のなかでは春樹が鍵を渡すレベルで信頼出来ると判断したのであろう。


「鍵ってやばくね?」

「これがなかったら朝起こしに来れないでしょ。だから持ってて。」

「ん。わかったよ。」


春樹も常識から少し外れている人物の一人。

そのためこの普通は変なシチュエーションも受け入れられる。


「じゃあ帰るわ。おやすみ。」

「うん。おやすみ。」


そう言って春樹は真夏実宅を出ていった。

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