昔と同じ
「春樹、あんたの肉じゃがってめちゃくちゃ美味しいわね!」
晩御飯を食べ終わり、その美味しさに驚愕した真夏実が興奮しながら春樹に聞く。
それを自慢げに鼻で笑いながら春樹は
「ふふ、当たり前だよ。俺の得意料理の一つであり、俺が極めた料理の一つでもあるからな。」
「その言い方的にまだ春樹が極めた料理はあるの?」
「もちろん。また、今度ご馳走するよ。自分で言うのもあれだが、そこらの料理屋には負ける気がしないほどに自信がある。」
「それは楽しみ!」
春樹の料理の美味しさを知ってしまって他の物が食べられないほどに虜になった真夏実。
なかなか興奮が冷めない。
「真夏実姉〜春兄の料理そんなに美味しかったの〜?」
あんなに怒っていた相手である真夏実に直ぐに懐いた雪はいつものゆるゆるした性格で真夏実にそんな事を聞く。
美味しいのも無理はない。
春樹はいじめられていた二年間を料理に費やし研究を重ねたのだから。
「うん!雪、一緒にお風呂行こっ!」
「わかったぁ!行こ行こ。」
晩御飯を食べている内にいつの間にか仲良くなっていた二人だが春樹からしたらそれで良かったと思う。
何故ならば、久しぶりに雪の性格の豹変を見たからだ。
あれは単純に春樹の周りにいる女性を殺す程のものだ。
だからある程度仲良くなればブラコンの雪であっても危害は加えない...と思う。
ただ、威嚇はするが。
「お、真夏実達風呂入るのか?」
「うん。」
「そうか、ちょうど今茜もあがったばっかりだから湯がまだ暖かいから早めに入るのがいいぞ。」
「ん、ありがと。」
「ありがと〜茜姉〜。」
ちょうど風呂からあがってきた茜とすれ違ったようだ。
というか、茜が風呂に入っていることを知らないで風呂に入ろうとしていたなんて、それが春樹なら大問題だ。
「いい湯だったぞ。」
「ちょ、茜!」
風呂からあがってきた茜は下着姿だ。
その中学生一年にしては起伏がもはや大人の中でもそれなりに目立つほどのものを持っているものを布一枚で隠している。
「見るなだぞ!」
「ぐわし!」
茜が恥ずかしさのあまり春樹の頬を叩きそれに春樹が悲鳴を上げる。
「そんな不可抗力じゃないか...。」
「うるさいぞ!」
直ぐに風呂場に戻り服を着て戻ってきた茜が春樹に喋らせることを許さない。
「なんで下着だけで出てきたんだよ...。」
「それは...ちょっとした癖だぞ。」
「癖?もしかして茜って家でもこんな感じで...って痛っ!」
またもや茜が春樹の頬を叩く。
「今変な間があったぞ。絶対にいやらしいこと考えていたぞ。」
「あら、そうなの春樹?そのようなことはちゃんと責任をとれるようになってから方が母さんいいと思うの。」
「何言ってるの母さん!?」
少し事を大きく捉えたのか春樹の母親は斜め上の思考をする。
「母さん先走り過ぎた?」
「かなりね!俺と茜は幼馴染だよ?そんな関係にならないって!」
「そうなんだぞ...。」
声色が急に大人しくなった茜に驚き春樹は母親の事を忘れて茜の方を見る。
焦点があっていない。
そして何かを呟いている。
「おい、茜!しっかりしろ!」
「はっ、どうしたぞ?春樹...。」
春樹の声で気がついた茜が先の言葉を思い出して直ぐに落ち込む。
少し言いすぎた。
「茜、べ、別に茜を女性として見ていない訳では無いからな...。」
「ほんとだぞ?」
「ああ、本当だ。」
茜の顔が生き返る、否、生まれ変わるようにして変わる。
「なんでこんな恥ずかしいことを俺が言わなくちゃいけないんだよ...。」
「それは春樹が春樹だからだぞ。」
「そうね。春樹は春樹だものね。」
茜と春樹の母親の二人の間で同じ考えが浮かんだようだ。
「なにそれ?俺が俺だからってどういうこと?」
「そういうことだぞ!」
悪戯をするような小悪魔のような笑顔を浮かべる茜。
可愛いと思ってしまった。
その笑顔は昔もよく見た笑顔だ。
この笑顔の可愛さは茜そのもののように感じる。
「昔と変わってないんだな...。」
「なんか言ったぞ?」
「なんもない!」
ソファにズシッと体重をかけ座る。
その隣に楽しそうに茜が座り春樹の腕を掴んで頭を春樹の肩に乗せる。
そのまま茜の頭を撫でる。
これも昔からのことだ。
気持ち良さそうな顔をしてそして眠たくなってきたのか瞼が少し重そうな顔をする。
「茜今日はよく寝るな。」
「なんか今日は春樹と一緒に居れて楽しかったのすごく疲れて眠たいんだぞ。」
「そうか。久々だったしな。ゆっくり寝な。家までは送っていってやるから。」
「ありがと...う...。」
眠りにつく茜の顔を眺めているとニヤニヤした母親の存在を思い出した。
「母さん何その顔?」
「んー?何も無いよ。」
「そう?ならいいけど。そういえば茜が寝ちゃったら家が分からなくなっちゃうな。」
「それなら大丈夫!もう茜ちゃんのお母さんに連絡して住所送ってもらったから。」
「手際がいいね。」
苦笑をしながら母親の手際の良さにおどろく。
「これでいえも分かるし遅くならない内に送ってくるよ。補導とかされたくないし。」
「わかったわ。行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」
スマホのマップに住所を打ち込み茜の家までの道を見る。
「距離的には徒歩四十分といったところか。」
スマホを片手にチラチラと見ながら道を進む。
途中落ちそうになった茜を戻しながら。
もちろん大人しくにも負けない二つの果実のことなんて一ミリも考えていない。
本当だ。
「ここが家か。」
マップが案内した家はそこまで大きくないが新しく見える家だ。
確か茜の母親の兄夫婦の家だった気がする。
リフォームでもしたのか外見がとてもいい。
「すみませーん。」
「どちら様でしょうか?」
聞き覚えのある声だ。
「あ、春樹です。」
「お、春樹君か!ちょっとまってて。」
そう言って直ぐに玄関が開いた。
「久しぶりだね。今日どうしたんだい...って茜か。」
「はい、眠っちゃったので俺がおんぶして連れてきました。」
「そうかい。ありがとう上がってくれ。」
「わかりました。」
茜の部屋の場所を教えてもらい部屋に入った。
昔から変わらない家具があり、懐かしさを感じる。
茜を優しくベッドに寝かせて部屋を出た。
「おじさん。俺は今日はこれで。」
「そうかい?もう帰るのかい?」
「はい。家に妹もいますので。」
「わかった。せめて送っていくよ。」
「ありがとうございます。」
春樹は茜のおじの車で送ってもらい家に帰った。
ブックマーク登録、評価していってください。
↑重要!自分のやる気です!
感想もお待ちしております。