入学式
私立神天中学校。
そこは中、高、大とエスカレーターで進学のできる私立学校だ。
今年から女子校だったのが共学になり男子も入れるようになった。
そんな学校に来たのが渡辺春樹だ。
「んぁ〜。今日は入学式か。あの頃のような失態は絶対に犯さない。」
ベッドから降り目をこすってそう呟く。
ささっと新しい制服に着替えて初めての登校の準備をしてリビングへと移動した。
「春樹おはよ〜。」
「おはよ母さん。」
「おはよ春兄〜。」
リビングで朝ごはんを作っていた春樹の母親にあいさつを返す。
ランドセルをの準備をしていた女の子が春樹に愛を示すハグをする。
「おはよ雪。兄ちゃんの事好きなのはわかったから離れて。」
「やだ。春兄にずっとくっついてる〜。」
「そうはいかないだろ?」
そう言って春樹は妹の雪を自分から剥がして椅子へと座らせる。
春樹もその隣に座る。
「いただきます。」
「いっただきまーす。」
「ふぃふぁふぁふぃまふ。」
「雪。ご飯を食べる前に言うんだよ?」
「ふぁふぁった!」
「うわ、とんでる。ご飯を口に入れている時は喋らない。いいね?」
学習したのか首を振り肯定する。
そんな雪の頬についたご飯粒を優しくとり春樹も朝ごはんを食べ始める。
「母さん。父さんはどうしたの?」
「あれ?言ってなかったっけ?父さん出張で今日から三日間いないの。」
「そうなんだ。父さんの事だから母さん恋しくて泣いてるんじゃない?」
「ふふ、そうかもね。」
たわいもない話をしている間にご飯を食べ終わり片付けに入る。
「母さん今日って俺が当番だっけ?」
「そうよ。春樹よろしくー。」
「了解。」
当番は毎日変わり春樹と母親、父親で回されている。
そのうち妹の雪にも当番が回ってくるようになる。
「雪新しいクラス楽しみか?」
「うん!すっごく楽しみ!」
食器を洗いながら春樹はいままで自分のひとつだけの希望であったクラス替えについて聞いた。
そして、自分も緊張し始める。
実際小学校に行っていたころはあんな事があったのだから。
「よし!終わり。雪準備終わった?」
「うん!春兄行こ!」
「いや、まだ早いよ。俺準備終わってないし。テレビでも見て時間潰してて。」
「わかったー。」
洗面所へ移動し顔を洗い目を覚まさせる。
「今日が勝負。頑張るぞ春樹。」
自分に言い聞かせるようにして呟く。
それから歯磨きそしてもう一度顔を洗い準備を完了させる。
「雪準備終わったよ。行こっか。」
「ん。行こっ。」
玄関に置いていた学校が指定したいかにも私立学校のカバンといったカバンを持ちドアに手をかける。
「母さん行ってきます。」
「行ってきまーす。」
「行ってらっしゃい。二人とも車には気をつけてね。」
「「はーい。」」
小学校の方へと歩き出す。
地獄であった小学校に向かうのだ。
ただひとつ違うのは
「俺は雪をおくるだけってことだな。」
「春兄なんか言った?」
「ん?何もないよ。」
見上げてくる雪のに対して優しい笑顔でこたえる。
そんな春樹の手を握り雪は機嫌が良さそうに歩く。
そしてやってくる。
というか向かっている。
それが目の前に現れた。
「小学校...。」
「あ、雪ちゃん!」
「真琴ちゃん!」
「行っておいで。」
雪が友達を見つけそれを春樹はおくりだす。
吐き気を隠している事をバレないように。
雪をおくりだしあの恐怖の小学校を逃げるように離れて自分の学校へと向かっていると前方の曲がり角からよく知った顔がでてきた。
「飯塚!」
「お、春樹じゃん。」
飯塚そう春樹に呼ばれた男は春樹が小学校へ我慢し通っていた一番大きな理由である。
「飯塚新生活頑張っていこうな。」
「おう。春樹も頑張ろうな。」
その言葉はとても春樹の心にくるものだった。
小学校からの数少ない友達と一緒に通学しながら春樹は警戒もしていた。
「やっぱり恐いか春樹?」
「ああ、あいつらに出会いたくはない。」
「そうだな。僕もあいつらは苦手だ。」
周りをキョロキョロしながら歩く春樹は周りからしたら少し変なように見えるだろう。
しかし、それは当然のことなのだ。
あの事件で春樹の運命は変わってしまったのだから。
「なあ、春樹。多分だけどさ僕はたちが行く学校にはあいつらにはいないよ。だって遠いし。」
「そうであってほしいものだな...。」
春樹たちがこれから通う私立神天中学校は春樹たちが電車に乗って七駅ほどの距離である。
そのため小学校の頃一緒だったやつらは来ることはほとんどない。
わざわざ遠くの中学校を選んだ理由がそれだ。
「春樹初日だし楽しもうよ。」
「そうだな。」
「ほら駅見えてきたよ。」
「ああ、そうだな。」
京都駅。
それは京都最大級の駅であり周りには京都タワーなどがある。
そこから七駅の距離に私立神天中学校がある。
「春樹定期ある?」
「あるよ。」
「オッケーじゃあ行こっか。」
「行こう。」
手に冷や汗をかいているのを感じながら春樹は新しい学校へと歩を進めた。
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