7話:ここはカードゲーム系異世界ではありません ~ VS時食いのしもべ(前編) ~
サキはカード化した【機獣ハイレシア・ドラゴン(遺体)】を手に取り、しげしげと眺めた。
見た目は普通のカードだ。
とは言っても、トランプで使うようなカードではない。トレーディング・カードゲームで使われるカードのようなデザインだった。
上部にはイラストが描かれており、下部はカード説明文となっている。丁度、こんな感じだ。
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カード名:機獣ハイレシア・ドラゴン(遺体)
カード説明:聖皇歴1251年に死亡した機獣ハイレシア・ドラゴンの遺体
効果:火W(1)献上 → マテリアルチェンジ(ドラゴンアーマー)
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『土地からウィルを引き出して、セーフティデバイスに献上すると、カードの効果を発揮できるようになります。
この年代の人はウィルを魔力と呼んでいるそうですので、読み替えて対処して下さい』
「この火Wっていうのは、火のウィルの略?」
『はい、そうです。火のウィルは、山や炎から引き出すことができます』
(カードゲーム系異世界の匂いがしてきた)
異世界ものはネタが被ると危険だ。
しかし、大丈夫だろう。何しろここはカードゲーム系異世界ではないのだから。どちらかと言うと、地球の漫画『パンター×パンター』に出てくるグリーズアイランド編だ。
『カード化した物体は、セーフティデバイス内のカードバインダーに収納できるようになってます。
サキさん、試しにバインダー、オンと言ってみて下さい』
「バインダー、オン」
ボンッ!
分かりやすい音を立てて、セーフティデバイスからバインダー型のホログラムが空間に投影された。
どうやらこのバインダー型ホログラムは、特殊なレーザーで投影しているらしい。便利な時代だ、とサキは感じた。
サキはカード【機獣ハイレシア・ドラゴン(遺体)】を、カードバインダーにそっと入れた。
すると、カードがバインダーに吸い込まれ、手元から消失した。
『これでバインダーにカードを収納できました。
カードバインダーを閉じたい時はバインダー、オフ。
カードバインダーからカードを取り出したい時は、ドロー。
カードを実体化させたい時は、リリースと唱えて下さい』
「わかった」
なかなかに分かりやすい説明で助かった。
さて、次は過去に行こう。尻尾を振って待っている機獣オーバード・ネメアTYPE2の傍に駆け寄った直後、エボニーが忠告を発した。
『ああっ! 気を付けて下さい、サキさん!
緊急警報です! そちらの時間方角に時食いのしもべが出現するようです!!』
まるでソシャゲのチュートリアルのような展開だ。
サキの前に時空ゲートが出現し、チンピラ(人間)が1体現れた。
「ここかぁ! カードゲーム系異世界ってのはぁ!」
「違います」
「おう、おうおうおう? 姉ちゃん、エロい格好してんなぁ。ぴっちりスーツってヤツかぁ! ちょっと一発ヤらせてくれやぁ!! ヤったら八つ裂きにして城塞都市の壁に張り付けてやるからよぉ!! これぞ示威(自慰)行為ッ!! なーんてなぁ、ヒャーハハハハァッ!!」
「この格好をエロい格好と言いますか……」
サキは瞬時に思考を切り替えた。
こいつは、殺していい人間だ。
「聖皇歴1252年の人たちは私を金属の悪魔、魔族と呼んだ。
――あなたはこの年代の人間じゃないわね」
サキの意志に呼応して、山から火のウィルが噴き出す。
漆黒の髪が赤いオーラを纏い、深紅の色に変じる。
赤の力を身に纏ったサキは、セーフティデバイス01D・ガンモードの銃口をチンピラに向けた。
「我は炎の時に目覚めし一輪の花、灼熱のロータスッ!!
――来なさいッ! 私が直々に引導を渡してあげるわッ!!」
時間が空き次第、次話を投稿しますm(_ _)m
●ステータス
名前:サキ
性別:女性
年齢:16歳
ガーディアンランク:E
アイテム:ヴァリアブルスーツ、セーフティデバイス01D
カード化済みのアイテム:機獣ハイレシア・ドラゴン(遺体)