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異世界過酷ハウジング  作者: 半間浦太
第一章:17週目・Fを超えた先
7/16

6話:FFコンプレックス ~ 殺ドラゴン事件、新米ガーディアンサキは見た! ~


 フェイクド・ファミリー・コンプレックス。

 通称、FFコンプレックス。ネットの片隅で起きた思想運動の一種だ。名称の由来は、日本が擁する某有名SFアニメに登場する“個別の劣等感”を意味する単語だ。


 当然ながら、FFコンプレックスなるものは造語である。ある種の思想に対してネットの住民が適当に付けた名称であり、その時点ではただのジョークに過ぎない単語だった。


 だが、なぜか流行った。大流行した。挙句の果てに現実にまで密かな影響を及ぼした。


 FFコンプレックスなる造語が示す思想は、以下の通りである。



“大人は頼りにならないから、子供たちは子供たちの手で子供たちを守ろう”



 文面だけ受け取れば美しい言葉だ。


 ここで問題となるのは、この文面で言うところの“子供たち”の定義が極めて不明瞭な点にある。

 と言うのも、ネットの性質上、実年齢を偽ることは容易だからだ。

 理屈の上では何歳であろうと“子供たち”を名乗れる。例え40歳の男性であっても、自分は子供だと主張すれば、その時点で“子供たち”の仲間入りを果たすのだ。


 結果、ネット上で“子供たち”が年々増殖する事態となった。遂には血の繋がりを無視して“子供たち”が疑似家族を形成するに至った。


 社会研究者の一部は、この現象の根底にあるのは貧困であると推測した。

 曰く、「バブル崩壊以降、フルタイムで労働しても月給10万円以下の賃金しか支給されないという若者たちが急増した。それでいて国の資産はなぜか増加していく。どこかでカネの流れがおかしくなっているのは明らかである」と。


 親世代は親世代で子世代の苦労を知らないため、子供たちの境遇を理解・共感できず、簡単に切り捨てる。よって、子供たちは同じ境遇にある者同士で疑似家族を形成した、というのが一部の社会研究者の分析だった。同時に、それは国民からの一定的な支持を得られる主張でもあった。


 しかし、それもまた、FFコンプレックスという現象の一面を切り取って分析した意見のように感じられた。


 今やFFコンプレックスを抱える“子供たち”は多くなりすぎた。


 国がホームレスの人数を完全には把握できないように、FFコンプレックスを抱えた“子供たち”は誰にも把握されず、されど、確実に増加していった。




★          ★          ★




~ 異世界クロノス・ウィンディ 聖皇歴1251年・オルバードの月・第3週トーレリアの日・午後14時55分 ~


 

 機獣オーバード・ネメアTYPE2と一緒に荒れ野を行くサキは、崖の下に蹲る巨影を見つけた。


「タイムスリップ先で気になるものを見つけた。指示を請う」

『そのまま待機して、観察してみて下さい。セーフティデバイス02Dに通じる何かが発見できるかもしれません』

「了解」


 サキはエボニーとの通信を終えると、岩陰に隠れて崖の下を注視した。


 崖の下には、機械仕掛けのドラゴンの亡骸を見下ろす機獣オーバード・ハイドラがいた。


「クソッ! あいつら、俺の相棒の親を殺したのかッ! 許せねぇッ!」


 機獣オーバード・ハイドラの背中には、髪を逆立てた青年が乗っかっていた。


 彼の声には聞き覚えがあった。

 聖皇歴1252年の城塞都市ヘキサ・ゴートで戦った暴漢だ。外見に関して言えば、不良漫画の主人公みたいなキャラだった。


 それはともかくとして、もう間違いない。あの青年が機獣オーバード・ハイドラのパイロットだ。


 このような青年が1年後の未来ではあのようにチンピラじみた性格になるとは、人生というのは想像が付かないものだ。


「聖皇歴1251年で何が起きていたの?」

『この年代では冒険者がドラゴン狩りをしているケースが多々起きているようです。今回もそのケースに該当するようですね。

 殺されたドラゴンは、機獣ハイレシア・ドラゴンという種のようです。機獣オーバード・ハイドラの親のようですね』

「ドラゴン狩り……。私もソシャゲでよくやってた」

 

 地球のソシャゲで何回ドラゴンを狩っただろうか。数え切れないぐらい狩ったので、思い出すのも億劫だった。あまりにも狩りすぎて感動すら覚えない。今時の子供は、みな生まれついてのドラゴンハンターなのだ。


 とにかくも、この時代では、何者かの手によって機獣ハイレシア・ドラゴンが殺されるという事件が起きていたようだ。


「ちくしょう! 城塞都市ヘキサ・ゴートの連中め! 俺が“怒れる竜の涙”を取り戻してやるッ!!」


 髪を逆立てた不良風の青年は機獣オーバード・ハイドラに乗ったまま、下山していった。


「目標の移動を確認。指示を請う」

『念のため、証拠物を押収しましょう! サキさん、セーフティデバイスにはガンモードに変形できる機能が搭載されています』

「……撃つの?」

『はい! それだけじゃありません、セーフティデバイス・ガンモードには時間凍結銃としての機能がありまして、命中した物体の時間を停止、凍結させることが――』

「難しい。シンプルに言って」

『ガンモードで敵を撃つと、敵がアイテム化して自分の所有物になります』

「人間もアイテム化できる?」

『はい、できます』

「ハウジングアイテムにしよ」


 将来のマイホームに人間という名前のアイテムを設置するのも悪くない。

 だが、今は職務に準じる時だ。


 サキは時計の針の形をした剣――セーフティデバイス01Dを手に取り、音声認証を行った。


「セーフティデバイス、ガンモード」


 ――ガチャコン!


 セーフティデバイスの柄が90度の角度で折れ曲がり、銃身と化した。鍔はトリガー付きのグリップに変形したようで、このグリップを持って標的を撃つ仕組みになっているようだ。


「証拠品を押収する」


 パンッ。


 トリガーを引いてみたところ、割と軽い音を立てて、銃口から時間凍結構造動力体が発射された。


 機獣ハイレシア・ドラゴンの時間が止まり、カード状のアイテムと化した。


 カード化した機獣ハイレシア・ドラゴンはその場でくるくると回転し、サキの手元に帰ってきた。




 てれれれってれーん!


 サキは アイテム【機獣ハイレシア・ドラゴン(遺体)】を 手に入れた!


今回から主人公のステータスを表示する予定です。

時間が空き次第、次話を投稿しますm(_ _)m



●ステータス

名前:サキ

性別:女性

年齢:16歳

ガーディアンランク:E

アイテム:ヴァリアブルスーツ、セーフティデバイス01D

カード化済みのアイテム:機獣ハイレシア・ドラゴン(遺体)



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