5話:全てはFに向かう ~ 謎の女神X=サキと自称変態奴隷騎士の出会い ~
「タイムスリップ完了。現地到着」
「グォン!」
時空ホールを抜けたサキ&機獣オーバード・ネメアTYPE2は山岳地帯に着地した。
現在時刻は、聖皇歴1251年・オルバードの月・第3週トーレリアの日・午後14時30分。天候は雨。
なぜかは分からないが、サキの頭の中でぼんやりと現在の時刻が浮かんできた。
しかし、異世界ではよくあることだ。異世界での生活を送る上で必要な知識は転生時に全てインストールされた。よって、必要な知識が自然と頭の中に浮かんでくる。そう考えるのが妥当だろう。
「鬱陶しい雨ね」
サキが着用するボディスーツは自動的にバリアを展開する仕組みになっている。そのため、サキは雨に濡れずに済んだ。
――パシャッ。
「自分が“何週目”なのか、疑問には思わないのかァい?」
「うわぁ!?」
名も知れぬ山の中腹地帯、荒れ野のぬかるみに降り立ったサキを出迎えたのは黒いローブを纏った怪しげな男だった。
思わず叫ぶサキ。男は『時ノ予定表』と記された革表紙の本を掲げた。
「――この預言書によるとォ!! 貴女様は未来、謎の女神Xになる運命ィッ!! 従って貴女様は神ィ!! わたくし奴隷騎士が仕えるに値する唯一にして絶対のォォォ、かァァァみィィィさまァァァッッ!!!」
「人違いです。さようなら」
サキは冷たい目で男を見据え、丁寧にお辞儀をしてその場を去った。
年上には敬語で接するぐらいの常識はある。そうとも、そのぐらいの“普通さ”はある。
疑問とも確信とも取れないそんな気持ちを抱えつつ、サキは目的の地に向かって歩む。機獣オーバード・ネメアTYPE2もまた、彼女の後を追って荒れ野を行く。
そんな彼女らを見送りながら、男は「くくっ」と愉悦の笑みを浮かべた。
「つれない神様だなァ。まァ、いいさァ。将来的に女神系ぴっちりスーツメカ少女風味ジト目無表情クール碧眼黒髪ロングストレート美少女はイイ。イイよォ。将来の女神に自ら奴隷として志願する歓びも格別……最ッ高だァ」
男は両腕を広げ、天を仰いだ。
雨に打たれながら、男は暗雲広がる空を慈しむようにして見上げる。
「貴女様は初めて異世界に転生したにも関わらず、この演算戦の“16週分”の記憶を受け継いだ謎の女神エェェェックスッ!
貴女様は“FFコンプレックス”を抱える子供たちの1人ッ! そんな貴女様がどんなマイホームを築き上げるのか、わたくしは楽しみで楽しみで仕方がないですよォォォォッ!!
アハハ、アハハハ、アハハハハハハハハハァッアーハくしゅんっ! アーッハハハハハハァァァッッ!!」
男の哄笑は、くしゃみを交えて、いつまでも雨の中に響き渡った――。
時間が空き次第、次話を更新しますm(_ _)m






