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異世界過酷ハウジング  作者: 半間浦太
第一章:17週目・Fを超えた先
4/16

3話:未来からの通信 ~ ガーディアンになって家を建てよう ~


「それで、あなたは誰なの?」


 城塞都市ヘキサ・ゴートから十分に距離を取った後、サキは喋る剣に問いかけた。


『ザ……ザー……ややこしい説明をしますけど、大丈夫ですか?』

「構わないわ。時間はたっぷりあるから」


 機獣オーバード・ネメアTYPE2は傍で待機している。

 尻尾を振る機獣の姿は、ちょっぴり可愛らしく見えた。


『僕はこの時間の住民じゃないんです。未来からこの時間に語りかけています』

「この世界の未来から?」

『はい。君が持っているこの剣は、セーフティデバイス01Dと言う代物で、未来との通信が可能になる機器なんです』

「どうして未来からこの時間に語りかけているの?」


 サキは喋る剣を地面に突き刺すと、柄に手を当てて、返答を待った。

 幸いにも、向こう側からの言葉はすぐに返ってきた。


『僕たちは時空を守護する機関、クロノ・ガーディアンっていう組織なんです。

 ある日、世界の時間を管理する12本のセーフティデバイスが時空犯罪者に盗まれて、各時代にばら撒かれてしまったんです』

「じゃあ、私が拾ったこの剣は……」

『時間を管理する12本のセーフティデバイスの内の1本、セーフティデバイス01Dです。

 経緯はともあれ、奪われたセーフティデバイスの内の1本が君の手に渡ったことを、僕は幸運に思います』


 サキは黙考した。


「もしかして、さっき私が倒した機獣にはセーフティデバイスが乗ってたりする?」

『え……。そうですけど。

 確かに、さっき君が倒した機獣オーバード・ハイドラには、セーフティデバイス02Dが乗っていました』


 話を要約してみよう。

 セーフティデバイスは、この世界の時間を管理するための装置だ。この装置は12本存在する。

 その内の1本に当たるセーフティデバイス01Dは、サキが所持している。


 2本目に当たるセーフティデバイス02Dは、機獣オーバード・ハイドラに搭載されていた。

 そして、機獣オーバード・ハイドラは爆発四散してしまった。サキと機獣オーバード・ネメアTYPE2の攻撃によって、セーフティデバイス02Dごと木っ端みじんになってしまった。


「………………」


 サキは、とんでもないことをやらかしてしまった気分になった。


「それって、いいことなの?」

『いや……それは、どうなんでしょう……』


 さすがに焦りを覚えたのか、向こう側の声が若干震えていた。


『いえ、大丈夫ですっ!

 この時間でセーフティデバイス02Dが破壊されても、無傷で取り返す方法ならあります!

 時間を遡って、セーフティデバイス02Dを取り返すんです!』

「機獣オーバード・ハイドラの手に渡る前に、セーフティデバイス02Dを奪取するのね」

『はい、そうです! サキさん、慣れてますね。もしかして、サキさんは時間渡航者ですか?』

「ううん。そんなことはない。私はこの世界に来たばかり」

『えっ。この世界に来たばかりって……』

「私は地球という世界で死んで、この世界で転生した。

 今この瞬間、この世界に、私は現れた」


 しばらく沈黙が続いた。


『う~ん。転生ですか。しかも、胎児のまま生まれるわけではなく、ある程度成長したまま転生したんですね』

「うん」

『資料を探ってみましたけど……そういうケースは無いわけではないですね。過去にもそういう事例は幾つかあったようです』

「いるんだ。異世界転生者」

『そういうことになりますね』


 サキは地球の頃を思い出し、内心でおろおろし始めた。


「異世界転生者と会ったら、どうしよう」

『どういうケースを想像しているのか僕には分かりませんけど、滅多に無いケースだと思いますよ、それ……』

「この世界には殺人許可証とかあるの?」

『ありますよ。ルールに従って悪人を罰するという場合に限り、ですけど』

「どこで手に入るの?」

『クロノ・ガーディアンに入って頂ければ、そういう許可証を渡せます』

「じゃあ入る」

『は、早いですね……』

「即断即決は基本」

『そうなんですか。苦労されてきたんですね……。

 こほん。サキさんのような正義に燃える方がセーフティデバイス01Dを拾ってくれて、僕は嬉しいです。

 サキさんの意向は分かりました。こちらで手続きを進めておきますね』


(正義……正義の味方、か)


 クロノ・ガーディアンの中の人はサキを正義の味方だと言う。けれども、サキ自身は少し違うと思った。


 サキは時間の味方だ。自分自身の時間を取り戻し、操り、支配したいだけだ。


『正式に承認が下りました。今日からサキさんは、クロノ・ガーディアンの一員です!』

「よろしく」

『よろしくお願いしますね、サキさん!』

「そういえば、名前」

『え?』

「名前、聞くの忘れてた。あなたの名前は?」

『エボニー・フランシス、26歳、女性です! 今後ともよろしくお願いします!』


 まさかの年上で、同性だった。


(年上だったのかー)


 妙な感慨を抱くサキに、エボニーは陽気な感じの声をかけた。


『あっ、クロノ・ガーディアンの登録証をプリントしますね!』



 ピー。ガー。ヒョロロロロロロ。



 謎の音を立てて、セーフティデバイス01Dから紙切れが排出された。


(昔のパソコンみたい)


 太古の時代、世の中にはダイアルアップ接続方式のパソコンなるものがあったそうだ。

 ネット上の動画でダイアルアップ接続の光景を見たことがあるサキは、素直にそう思った。


 時空を超えてサキの手元に渡った紙切れには、こう記してあった。『この者をクロノ・ガーディアンの一員として任命する』と。


 サキは密かに、ぐっと拳を握った。


(殺人許可証、ゲット)


 これで異世界転生者を合法的に抹殺できる。

 サキの心境も知ってか知らずか、エボニーは語り続ける。


『そうそう、クロノ・ガーディアンにはガーディアンランクというものがありまして、お仕事をこなす内にランクが上がっていくんですよ。

 更に、ランク昇格に応じて報酬が与えられる仕組みになっています。具体的にはこんな感じです』



----------------------------------------------------------------------------


■ ガーディアンランク報酬一覧 ◼️


ランクS:ランクS初回昇格時、報酬として城の建設許可証と、ハウジングアイテムボックス(量子的ゆらぎ有り)が10個与えられる


ランクA:ランクA初回昇格時、報酬として大型マイホーム建設許可証と、ハウジングアイテムボックス(量子的ゆらぎ有り)が7個与えられる


ランクB:ランクB初回昇格時、報酬として中型マイホーム建設許可証と、ハウジングアイテムボックス(量子的ゆらぎ有り)が5個与えられる


ランクC:ランクC初回昇格時、報酬として小型マイホーム建設許可証と、ハウジング許可証と、ハウジングアイテムボックス(量子的ゆらぎ有り)が3個与えられる


ランクD:ランクD初回昇格時、報酬として交易許可証が与えられる


ランクE:クロノ・ガーディアンとしての一般的権限が与えられる


----------------------------------------------------------------------------


『サキさんはこのお仕事を始めたばかりですので、ランクEからの出発ですね。

 ランクに応じて、月ごとに給料も支払われます。各種保険、有給等の制度も完備しています。この辺はきっちりやらないと銀河労働基準法に抵触するので、きっちりやっています』

「すごい」


 すごい。銀河労働基準法、すごい。

 サキは目を輝かせた。


 以前から夢だったのだ。

 膨大な情報を一方的に送り続けてくるアニメとは無縁の生活。同調圧力を前提とした人間関係からの解放。夢に描いたスローライフ。自由に時間を使える空間。ああ、楽園はここにあったのか。


 サキにとっては瞬間瞬間が決断である。

 彼女は、静かに燃え上がる情熱を口にした。


「――決めた。ランクC以上のガーディアンになって、マイホームを建てる」




時間が空き次第、次話を更新しますm(_ _)m

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