36.ご飯が食べたい
お久しぶりです…仕事が…忙しくて…うぅ。
とりあえず、なるべく早めに更新する様に、がんば、る_(:3」z)_
簡単な前回のあらすじ。
新しい相棒をGETしたので、やっと検証という名の狩りに行こうとしたが、ユズリハの腹減ったので、みんなでご飯食べにきた、以上。
「あぁ、良かった!屋台は閉まっちゃってたみたいだけど、まだやってたわ! ユズちゃん、ここよぉ〜♪」
ニッコニコ笑顔でカシスさんが指差したのは、とある三階建ての建物。
教会から少し歩いた先にある住宅地の一角にたたずむ、かなり古びた……壁やら屋根やらものすごくボロボロで… 廃墟までははいかないけど、人が住むにはいろいろと苦労しそうな感じの建物だった。
ってか、この建物、これ、地震が来たら確実に壊れるのでは??
なんてことを思いながら、あまりの建物のボロさに驚いて建物を見上げていると、突然グイッと腕を引かれる。
引っ張られた腕を見れば、一人の5歳ぐらいの女の子が、ギュッと私の腕に抱きついていた。紅い瞳で、金髪のツインテールを赤いリボンで結んでる、可愛らしい子だ。
え、可愛い子だけど、えっと、これは、どうしたらいいの…?? それにこの紅い瞳は、どこかで見たような……そんなことを思いつつ、、驚いた表情で見つめてしまう。
私が見ていることに気がついた女の子は可愛らしい笑顔でニッコリと微笑んだ。
「えっと……」
「おねぇちゃん、あのね、クッキー、好き?」
突然、女の子からの質問。
何かを期待するようにキラキラとした目をしながらみつめられて、混乱しつつ思わず素直に答えてしまう。
「うん、クッキー好きだよ」
「ほんと!!やった!!!」
私の返事を聞いた女の子が嬉しそうに笑うと、こっち!こっち!と腕を引っ張りながら、どこかに連れて行こうとするので焦る。ちょ、待って!待ってってば !!
いや、力は強くないので簡単にふり解けるけど、流石にそれは出来なくて……こ、困った、どうしよう。
助けを求めるように、カシスさんを見れば彼は楽しそうに微笑みつつ、女の子の頭をポンと軽く撫でた。
「こぉーらぁ!スゥちゃん! ダメでしょぉ、良いよって言ってないのに、無理に連れてくのは相手に失礼よぉ」
「あー!!カシスだ!!あ!!シロちゃんもいる!!」
「スゥリ、こんにちは。相変わらず元気ね」
カシスさんに声をかけられた女の子は、パァっとさらに笑顔になって嬉しそうにカシスさんと白妙さんの名前を呼んだ。どうやら2人はこの子と知り合いみたいだ。
「2人は、この子と知り合いなの?」
「えぇ、ほら、スゥリ、ユズリハちゃんにちゃんとご挨拶しましょう?」
白妙さんが女の子にそう言えば、いまだに私の腕にしがみついたまま(いつ、離してくれるんだろうか…ほんと…)の女の子は私を見て、もう一度ニッコリと微笑んだ。
「スゥリは、スゥリっていうの! おねぇちゃんは、カシスとシロちゃんのお友達?」
「うん、2人とはお友達だよ。私はユズリハだよ。よろしくね、スゥリちゃん」
私がそう挨拶すれば、さらに嬉しそうにギュッと腕に抱きつかれる。なぜ、さらに抱きつくのですか??いや、あのね、可愛いからいいんだけど、その、なんで??
「あらあら、スゥリに気に入られたわね。スゥリ、ユズリハちゃんのこと気に入ったの?」
「うん!クッキー好きって言ってくれたし、それに、ユズリハおねぇちゃん、良い匂いがするのー!なんかそばにいると安心するの、だから好き!!」
困惑気味の私と嬉しそうなスゥリちゃんの様子をみて、白妙さんが楽しそうスゥリちゃんに聞く。すると彼女は、そう嬉しそうに答えて私に向かってニッコリと笑った。えっ、良い匂い?なに、それ??
「はぁいはいっ!!もうっ!3人とも!戯れあっていないで、早く中に入りましょ? アタシもお腹空いちゃったわぁ」
ぱんぱんっ!とカシスさんが手を叩きながら私たちに注意をする。
そして、アタシのこと忘れないでよぉっ!と少し拗ねた感じに言われて、わわっ、カシスさんにごめんなさい…! カシスさんに申し訳ないと思いつつ、やっと当初の目的を思い出した。
「あ、そういえば、ご飯食べにきたんだった」
思わずそう呟けば、呆れたようにブラールが私を見つめ、ぐぅ…と唸った。うっ、そんな顔しないでよブラール……ちょっとその反応は傷つくぞ。
「みんなは、ごはん、食べにきたの?」
「えぇ、そうなの。まだ食べられる?」
「うん!だいじょーぶ!!」
じゃあ!こっちー!!と今度は手をぐいぐい引っ張れる。ちょいと、まって、スゥリちゃん!! ブラールは一緒に入っていいの? え、大丈夫、え、でも待って!!
また慌ててカシスさんと白妙さんを見れば、ニコニコ笑って私に対して手を振っていた。2人の目が言っている、お先に行っててね♪って感じだ。ブラールは少し後ろから付いてきてる。
そんな2人に見送られ、腕をスゥリちゃんに引っ張れながら、私は目の前のおんぼろ建物に入ったのだった。
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「ユズリハおねぇちゃん!ここだよ!ここ!」
手を引かれてスゥリちゃんに連れて行かれたのは、入口から長い廊下を歩いて突き当たりの食堂らしき場所だった。
ブラールは、中に入らず入り口あたりでお座りして待ってる。……ほんと賢いな、この子。
さて、この部屋の様子だけど、10人ぐらいが座れそうな木の長机が3つ、扉と反対側の壁には大きな食器棚とカウンター。そのカウンターの裏が厨房あるみたいだ。
ちなみに外観のおんぼろさとは違い、中はそれほど古くはなく質素だけど清潔感があった。まぁ、窓枠とか古そうだなぁ…壊れそうって感じは少ししたけども。
「シスター!!!おきゃくさまだよー!!」
「はぁい、ちょっと待ってね、スゥリ」
きょろきょろと周囲を見ていたら、スゥリちゃんがそう厨房に声をかけた。その声に応えるように厨房から声がして、修道服を着た1人の女性が現れる。亜麻色の髪に緑の瞳が優しい印象の人だった。
「ようこそ、いらっしゃいませ。わたくしはこちらの孤児院にて責任者をしております、ユーフィリアと申します。貴女のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「えっと……」
「ユズリハおねぇちゃんだよ!シスター!」
あらま、私が答える前にスゥリちゃんが答えちゃった。吃驚してスゥリちゃんを見れば、えへへ!偉いでしょ!といった感じの自信満々な表情でギュッと抱きつかれる。褒めて!褒めて!と目が訴えてくるから、頭を撫で撫でした。うん、可愛らしい。
ってか、ここ孤児院だったのか。それにしてもスゥリちゃん以外の子供を見かけないけどどこかに出かけてるのかな?
とりあえず自分からも名乗って自己紹介をしておこう。
「ユズリハです。あとあそこにいるのが私の従魔のブラールです。勝手に中まで連れてきてしまってすみません」
「ふふっ、大丈夫ですよ。こちらに呼んであげてくださいな。……それにしても、ユズリハ様はスゥリに懐かれましたね…珍しいですわ」
ユーフィリアさんに許可は貰ったので、ブラールをこちらに呼ぶ。左側にブラールがお座りし、右手(ってか腕か)にはスゥリちゃんが抱きついている。なんだろう、この状況。
そんな私の様子を見て、片手を頬に当てつつ少し驚いたようにそうユーフィリアさんが言う。
なんですと?? 初対面からめっちゃぐいぐいきてましたよ??この子? ?
「そうなんですか? さっき初めて会ったときから、こんな感じだったし、カシスさんと白妙さんにも懐いてたから、人懐っこい子なんだと思ってました」
「違うわぁ、ユズちゃん。アタシたちがスゥちゃんと仲良くなったのは何度かここに通ってからよぉ。最初はお話もしてくれなかったし、目も合わせてくれなかったのよぉ?」
私の疑問は追いついてきたカシスさんと白妙さんが答えてくれた。
初めて会った時のスゥリちゃんは、物陰からこちらをじっと見つめてるだけで、こちらから近づこうとしたり声を掛けるとすぐに逃げてしまう子だったそうだ。
何度かカシスさんたちが孤児院に通ってるうちに、徐々に距離が近くなっていって、ある日、気がついたらそばにいて話してくれるようになったらしい。
私が会った時の様子と真逆すぎて、思わずユーフィリアさんを見れば、肯定するようにユーフィリアさんがうなずいた。
「だからスゥちゃんが、初対面なのにユズちゃんにこぉんなに懐いてることに驚いたけど、流石ユズちゃんね、とも思ったわぁ」
「私の方は比較的すぐに仲良くなったけどユズリハちゃんほどじゃないわね。私の場合、この尻尾に惹かれたみたいで、気がついたら引っ付いてて驚いたわ」
なるほど、何かしらのスゥリちゃんと仲良くなるためのフラグがあるけど、私はすでに条件をクリアしてた感じなんだろう。
多分基本的なのがカシスさんので、何度かここに訪れて、驚かせたり怖がらせたりしないってのが条件っぽいなぁ。白妙さんは…もふもふ?が条件?うーんわからん。
私自身が当てはまりそうな条件か……。そう思ってスゥリちゃんを見る。
スゥリちゃんは小首を傾げて、なぁに?と綺麗な紅い瞳がじっとこちらを見つめていて……ん、紅い瞳? あっ、もしかして……
「えっと、もしかして、スゥリちゃんって幻影種か、それのハーフだったりしますか?」
「あら、ユズリハ様、よくお分かりになりましたね」
「えっとね、スゥリは、きゅーけつきと、人のはーふだよ!!」
「そっか、じゃあスゥリちゃんは私と一緒だね」
にっこにこ笑顔でスゥリちゃんが言う。しゃがんで、目線を合わせてスゥリちゃんにそういえば、おんなじー!と嬉しそうに抱きつかれた。
ちなみにスゥリちゃんと私の言葉にカシスさんと白妙さんが驚いてる気配がする。そして、何か言いたげな雰囲気がするけど、とりあえず今は無視しとこ、うん。
「あらあら、ユズリハ様もでしたのね。それでしたらスゥリが初対面で懐くのも分かりますわ」
ユーフィリアさんが、ふふっと笑う。
そして、不意に肩をガシッと掴まれた。そして耳元で囁かれた声に、思わずヒッ…!と変な声が出たのは不可抗力だと思います、はい。
「ゆぅずぅりぃはぁちゃぁ〜ん? あとで、いろいろ、おねぇーさんに、聞かせてくれるかしら??」
恐る恐る振り向けば、にっこにこ笑顔(こっちはなんか怖い)の白妙さん。カシスさんに助けを求めてみたら、腕をバツにして「ごめん、無理❤︎」と口パクで言われてしまった……えっ、助けてよ、カシスさぁーん!!!
(まさかのご飯食べてない)
(次は食べれるはず、たぶん)
(年内にもう一回更新できたら、いいな…/希望)




