35.かっこ可愛い相棒GETだぜ!
もっふもふ!!
祭壇にお行儀よくちょこんと鎮座しているのは、私がチュートリアルで出会った森狼……だと思う。
いやぁ、実はあの時、突然戦闘になったから色々といっぱいいっぱいで……ぶっちゃけ相手が狼だったとしか記憶にないんですよ。
でも、こちらを見定めるように見つめてくる瞳は、あの時に見たものと同じだと感じるから、きっと同じ子なんだろうと思う。
さて、じっくり見てみると復活した森狼は、大きさはゴールデンレトリバーぐらいの大型犬サイズで、灰みがかった青緑色の毛並み、青空を閉じ込めたかのような青い理性に溢れた瞳、そしてなによりも、もっふもふしてる。
めっちゃ、もっふもふしてる!!!もふもふっ!!!(大切な事なので二回言いました)
あぁ、めっちゃ触りたい、撫で繰り回したい、もふもふに埋もれたい、もっふもふしたい……と欲望がダダ漏れそうになって、ふと気がつく。
あ、あの子、祭壇に乗ったままだ。
流石に神聖な儀式を行う場所に居座ってるのは、流石にまずいんじゃないのか??そう思ったので、こちらに呼んでみることにする。
「えっと、こっちに来てもらってもいい?」
「ワフッ」
了解、と言うように短く吠えるとスタッと祭壇から降りて私の目の前でお座り。
うっ…!!可愛い!!もっふもふ!!!可・愛・い!!
ちらりと白妙さんの方を見れば、彼女も私と同じように「もふもふ…もふりたい…もふもふ…」と呟いていた。
ちなみにカシスさんは呆れたように、白妙さんを見ていて私も目があったら肩をすくめていた。どうやら、この反応はいつものことらしい。
とりあえず目の前の子に集中しましょう。
私の前に座った森狼は、何か用です?と言った風にじっと私を見つめ、可愛らしくて小首を傾げている。
なに!!その!!ポーズ!!可愛すぎるんですけど!!!さっきから私のハートはきゅんきゅんしちゃってて、もう、ほんと、この子可愛い、かわいい。
……はっ、いけない!集中しなきゃって思った直後だったのに。
気を取り直して、とりあえずこの子のステータスを確認してみようかな。一応、見てもいいか聞いてみたら先程と同じように小さく吠えると、さぁ!どうぞ!と背筋を正してお座りし直した。
……可愛過ぎますよね、この子。気が緩むとにやけそうになるから、思わず真顔になってしまうわ、ほんと可愛い。
さて、許可も貰ったことなので、遠慮なく確認させてもらおっと。
名前:[ No name ] Lv.1
種族:森狼 種族Lv.1★
性別:♂
契約者:ユズリハ
HP:100/100
MP:150/150
腕力:15
体力:5
敏捷:20
器用:10
知力:10
精神:5
幸運:5
BP:10
[装備項目]
装飾品①:なし
装飾品②:なし
防御力:13(+0)
*スキル*
《爪:Lv1》《牙:Lv1》《咆哮:Lv1》
《暗視:Lv1》《警戒:Lv1》《忍び足:Lv1》
《深緑の加護:Lv3》
SP:10
思った通り敏捷が1番高くて、次は腕力か。
体力は低めだからそれを補う装備があれば優先して付けてあげよう。とりあえず、製作に関してはジンに頼めばなんとかなる…かな?
スキルも基本的にウルフ系が持ってるものだね。
唯一気になるのが《深緑の加護》かな。これだけレベルが高いので、種族特有のスキルとか? 気になるからか確認っと。
《深緑の加護:Lv.3》
説明:森と共に生きる者が樹霊より授かりし恩恵。森の中ではステータスが1.2倍アップし、木々が道を教えてくれるため、森では迷うことがなくなる。レベルが上がると樹霊達からの恩恵が増える。
なるほど、種族特有のスキルみたい。
というか、名前にフォレストってつく魔物は持ってそうなスキルだなぁと。それにしても森の中での迷わなくなるのはありがたいかも。
ウサギ狩り終わったら森で狩りをするつもりだったし丁度いいね。
ん? 種族レベルのところの★はなんだろう……あとで白妙さんに聞いてみよう。
確認が終わって、ありがとうとお礼を言って頭を撫でれば、嬉しそうに目を細めて短く吠えた。
うん可愛い、そして思った通りもっふもふ…癒されるぅぅ。
「えっと、ユズリハ様。少しご説明をしてもよろしいでしょうか?」
「はっ!! すみません、お願いします…!!」
ニッコニコしながら撫で撫でしてたら、邪魔して申し訳ないというように、司祭様からそう声を掛けられる。
はっ、いけない、魅惑のもっふもふに心を奪われてた…。
「いえいえ、お気持ちはとても分かりますから大丈夫ですよ。まずはその子に名前を付けてあげてください。それで正式に契約完了となります」
司祭様がそういえば、撫でていた森狼の耳がピクリと動き期待した眼差しで、私をじっと見る。
うっ…!!そんな目で見ないで…どーしよ、名前つけるの苦手なんだよ……。
ふと頭に浮かんだ名前、いや、これを言ったら怒られそうだなぁと思いつつも、思わず口から漏れる。
「ポチ とか…」
「ヴゥゥ…!」
【森狼がその名前を拒否しました。他の名前を付けてください】
心底嫌そうに低く唸られ、なおかつ拒否したというログがポンっと出てきた。ってか拒否される事があるってことに驚いた。
ごめん、ごめん冗談だよっと謝りつつ頭を撫でれば、ものすごく疑い深い目で見られる。次に変な名前言ったら許さんって感じだ。いや、ほんと、まじでごめんって。
「うーん……そうだなぁ…あ、『ブラール』ってどうかな?」
「ガウッ!!」
肯定するように力強く吠える。
尻尾がパタパタ揺れてるから、気に入ってくれたようだ、よかった。
ちなみ『ブラール』は古ノルド語で青のことだったりする。
いや、古ノルド語は別に詳しくはないんだけど、なにかで見たその単語を覚えてて、瞳の色が青かったから、それが良いかなって。
なお、他に思い浮かんだ名前の案としては『ハティ』とかもあったけど「憎しみ、敵」を意味する神話上の狼の名前を付けても、アレかなって思ってやめました、はい。
【森狼『ブラール』と契約をしました。
※注意:彼らには感情があります。貴方に対する好感度がゼロなりますと自動的に契約解除となりますので、ご注意ください】
名前付けをしたら、ブラールの身体がふんわりと光る。そして、その光はすぐに収まるとログが出た。
おおぅ…ログに注意が出るって……あれか、白妙さんが言ってたことかな……よっぽどのことがあったんだろうな、うん。
「これにて契約の儀は終了です。ご自身のステータスに『従魔:ブラール』か追加されてることをご確認ください」
ステータスを確認。うん、種族の項目の次に『従魔:ブラール』って増えてる。
そのことを司祭様に伝えれば、にっこり微笑まれてから、《従魔》について説明してくれた。
《魂の旅人》と契約した《従魔》は同じく復活の加護を受けられるようになるそうで、簡単に言えば、プレイヤーと同じように死んでも教会で復活するようになるらしい。
なお、従魔が生存してる状態でプレイヤーが死ぬと一緒に教会へ転送される仕様なので離れ離れになることはない。従魔のデスペナは半日ほどステータス半減と経験値半減になるそうだ。
ただ復活するとは言え、従魔を死なせすぎても主人に対して不信感が溜まり好感度が下がる要因になるそうなので、注意しないと。
また、従魔も空腹度があるのでちゃんと食事はあげないとダメで、それそれ好みの食べ物があるらしい。
ちなみに、プレイヤーが食べられるものは基本、従魔も食べられるそうなので、特別に用意しなくてもなんとかなるそうだ。
なるほど、それじゃ後で屋台とか回ってブラールの好みを探してみようっと。
あとは、プレイヤーがログアウトしてる最中は従魔も一緒にログアウトした状態になるそうなので長期間ログイン出来なくても大丈夫な仕様となっている。
ログインすると、フロントに従魔が待機してる状態になるのよと、白妙さんが教えてくれた。
ちなみにログイン時のチェシャがいるフロントのことをゲーム内では『旅立ちの扉』と呼ばれる神域で、この世界でチェシャは神の使いであり、最高位の神獣なんだってさ。
実はあの子はこの世界だと結構偉いポジションだったのね……。
「……と言った感じですね。何かご質問はございますか?」
「えっと、今のところ大丈夫だと思います」
「もし疑問に思うことがあれば、遠慮なく質問に来てくださって構いませんよ。そうそう、冒険者ギルド職員にテイマーが居ますので、従魔関係で困ったらその方から聞くのもいいと思いますよ」
なんと、冒険者ギルドの職員さんでテイマーの人がいたのか。白妙さんの方を見ると、彼女も初めて知った顔をしていた。
これって今の段階で選べる職業なら、その職業に就いてるギルド職員さんいそうだよね。ってことは、その職業について困ったら、その人に聞けば詳しく知れるかもしれないってかとか。これは後で2人に相談して確認したいな、うん。
***********
儀式と説明をしてくれた司祭様にお礼を言って、教会を後にする。
私に寄り添うようについてくるブラールがとても可愛い、ほんと可愛い。チュートリアル頑張って良かったなんて思った。
ウルフ系の従魔は珍しいのか、歩いているとすれ違うプレイヤーからじっと見られる。数名にブラールのことを直接聞かれたけど、カシスさんと白妙さんが上手いことその人達の相手をしてくれたので私は見てるだけでした、はい。
うーん……そうなりそうとは思ってたけど、好奇の目で見られるのはやっぱり落ち着かないなぁ。
そんなことを思ってたら、少し顔に出てたらしくて2人から巻き込んでごめんねと謝られたけど、今後の対応は全て2人が引き受けてくれるそうなので、大丈夫だよーと言っておいた。
「さて、次はハーブラビット狩りかしらねぇ?」
「そうね、問題なければ『始まりの草原』に行きましょう。ユズリハちゃんはそれでいい?」
「うん、それでい……」
ぐぅぅーーーーー
返事をしようとしたタイミングで、鳴る私の腹。
やめてぇぇっ!!!なんでこのタイミングなの!!!人前で鳴るの二回目!!空気読んで、私の腹!!!!
「ふふふっ♪ その前にユズちゃんの腹ごしらえが先ね。たしかに時間的にアタシ達も何か食べといた方が良さそうねぇ」
「うぅ……すみません…」
もう、ほんと、は、恥ずかしすぎる…!!!
白妙さんに「ユズリハちゃん可愛いー!」と頭を撫でられ、ブラールからはドンマイって感じにするりと身体を擦り寄られる。
「ねぇ、カシス。この時間ならあの屋台やってるんじゃないかしら? せっかくだしそこにしましょうよ」
「あぁ!あそこね!いいわよぉ〜そこにしましょう♪」
カシスさんと白妙さんがキャッキャしながらそう話している。「ユズちゃん嫌いなものってあるかしらん?」と聞かれたので、特になしと答えた。
それを聞いた2人は、なら大丈夫ね!とにっこり。どうやらオススメの屋台があるらしくて、そこに案内してくれるそうだ。
ちなみに何の屋台なのかは行ってからのお楽しみ!と言われて教えてくれなかったけど、2人のオススメならきっと美味しいんだろうなぁ、うん、楽しみ!
くいっと服の袖が軽く引かれる感覚がして、そちらを見ればブラールが「どこ行くの?」といった顔をしていた。
「 あぁ、これからみんなでご飯食べに行くんだよ。ブラールが気にいるものがあるといいね」
「ワフッ!!」
短く吠えて、嬉しそうに目を輝かせて尻尾ぶんぶん振るブラールは可愛かったです、はい。白妙さんも「ブラールちゃん可愛い…!!」と身悶えてた。
ちなみに白妙さんがブラールを撫でようとしたら、するりと避けて触らせなかったので、どうやら触らせてくれるのは、主に対してのみらしい。
それを知った白妙さんの落ち込み具合がすごかった……(そのうち触らせてあげてねとブラールにそっと伝えたのは秘密だ)
中の人のもっふもふに癒されたい&もふり倒したい願望がダダ漏れな感じになりました……( ˘ω˘ )
もっふもふ…もふもふ…うぅ。




