34.復活させましょ!
出てくる神様は実在の神様からちょろっと、お借りして名前もじって付けてたりします。
実在のとは司ってるの違ってたりするので、あしからず( ˘ω˘ )
教会の重厚な扉を開けて中に入れば、厳かな雰囲気の礼拝堂だった。
祈りを捧げる人たちの姿や、礼拝堂の右奥の扉から疲れた顔をして出てくるプレイヤーの姿が見える。あの扉の向こうが復活ポイントっぽいね。
正面を向けば、礼拝堂の奥には3柱の神像が鎮座していた。
左側の良い筋にk…んんっ、えっと身体つきに鎧をまとった精悍な顔立ちダンディな神像が『精進の軍神アーレース』。
右側のローブ纏い、手に杖を持ち肩にフクロウを乗せている知的な顔立ちのちょっと影があるインテリ青年な神像が『創造の神デミウルゴ』。
そして、中央の手に花束を持ち、花の冠をつけた慈愛に満ち溢れた微笑みを浮かべているとびきり美少女な神像が『慈愛の女神マイア』。
…………これ、めっちゃくちゃ製作者の趣味でてんじゃない???
教会ごとに祀られている神は違うらしく、第二の街はまた違う3柱だそうだ。ちなみにどんなのか聞いたら、それは行ってみてからのお楽しみに☆とウィンクされちゃいました。
さて、本来の目的を果たしましょうかね。
確かチェシャが教会に行って復活させるって言ってたよね。
カシスさんも白妙さんも、自動復活以外の復活の仕方は知らないそうなので、とりあえず神像の前にいらっしゃる司祭様に話を聞こう。
「あの、すみません」
「はい、どうなさいました?」
話しかければ、にっこりと優しげな微笑みを携え司祭様が振り返る。
おぉ、この人なかなかのイケメンさんだ。
ってかこのゲーム、基本的に役職があるNPCはみんな見た目が良い気がする…あれか、やっぱり製作者の趣味かな……趣味だろうな、うん。
思わずじっと見つめてしまっていたので、トントンと白妙さんに肩を叩かれた。はっ、いけないいけない、めっちゃ司祭様困ってる。
「あっ、えっと、すみません。ちょっとお聞きしたいことがあって…心魂系アイテムを貰ったんですが、その貰った子を倒してて…その子の復活はこちらでお願い出来ますか?」
手に『森狼の心魂』を取り出して、司祭様に見せながらそう声をかける。それを見せたら一瞬驚いた顔をしてから、面白いものを見たというような顔をする司祭様。
「おやおや、これは珍しいものをお持ちですね。えぇ、大丈夫ですよ、こちらで復活の儀は行うことは可能です。一緒にドロップしたアイテムがあると思いますが、そちらはお持ちでしょうか?」
そう言われたので一緒にドロップしていた『森狼の牙』も取り出して、心魂と一緒に渡した。
司祭様はそれを受け取ると、こちらへどうぞ、左奥にある白く細かい装飾が施された扉まで案内される。
3人で司祭様の後についてその扉をくぐれば、その部屋は床が一面水に満たされた幻想的な部屋だった。
その中心には儀式をするための祭壇があり、そこに行くまでは白いタイルで一筋の道があったので、祭壇まではそこを歩くみたいだ。
床に一定の間隔で明かりが埋め込まれているのかほのかな青い光が優しく輝いており神秘化的な印象がある。
スクショを撮りたいと思ったけど、流石に自重しておきました、はい。
ちらりとカシスさんと白妙さんを見れば、2人とも興味深そうにきょろきょろと室内を眺めていた。私の視線に気がついた白妙さんがこそっと教えてくれる。
「βテストの時から、こっちの部屋は何だろうって話題になってて、でも誰も入れなかった場所なの。なるほどね……何かしらの儀式をするための専用の部屋だったのね」
そして、白妙さんから貴重な経験をありがとう、ユズリハちゃん♪と微笑まれる。
ひゃっ、美人さんのドアップな微笑みの破壊力ぅ…!!と思いながら、どぎまぎしつつ私も微笑んでおいた。
扉から祭壇までは2、3分ぐらい。
思ったより扉から距離があったみたいだ。
近くで見る祭壇は、白を基調とし随所に草花をモチーフにした匠の技が感じられる装飾で飾られていた。
厳かで神聖な気配気圧されそうになる。さすが儀式の部屋だ。
祭壇の前に立った司祭様が、祭壇にある、こちらも繊細な細工が施された銀の皿の上に『森狼の心魂』と『森狼の牙』を並べて捧げる。
「これより神の御業により、かの者をこちらに呼び戻す復活の儀を執り行います。この心魂を受け取った主…えっと…お名前をお伺いしても?」
「はい、ユズリハです」
「ありがとうございます。お見受けしたところ、皆様は《魂の旅人》のようですが…もし必要であれば、復活の儀の説明と合わせて、心魂とはどういったものなのか、ご説明いたしますがいかがでしょう?」
詳しい説明もなしに、この場に案内されたからちょっと困ってたんだよね。当たり前だけど、ちゃんと説明してくれるのか有難い。
ちらりとカシスさんと白妙さんを見れば、2人とも頷いてるし、ここは司祭様に説明をお願いする。
「ありがとうございます、ぜひお願いします」
「かしこまりました。では、まず『心魂』についてからご説明致します」
『心魂』とはこの世界に生きる全ての者が、必ず持っているもの、その者の魂であり、心であり、精神と同一視されるもので、ある一定の条件を満たすと実体化し結晶することができるものだそうだ。
魂や心なんて普段は目に見えないが、強い感情の高ぶりや気持ちに反応し、一定の条件(ここ重要)が揃えば、その強い想いや魂が結晶化し『〜の心魂』というアイテムとなる。
ちなみに、心魂は言葉を使わない又は同一言語を持たず、コミュニケーションが取りにくい者が相手に自分の気持ちをどうしても伝えるために編み出した奇跡のような業なので、言葉でコミュニケーションを取る生物は、はるか昔にその業は失われ、使えなくなっているらしい。
「代表的な例といたしましては精霊がよく使いますね。彼らの手助けをするとお礼に貰うことがよくあります」
え、言葉通じない代表的な例が精霊だと。
司祭様の言葉を聞いてちらりと頭をよぎったのは、この間森で出会ったライラが使っていた《精霊魔法》だ。
彼女は魔法を使用する際、言葉で精霊たちにお願いをしていたはず……思わず疑問に思って聞いてみた。
「え、精霊って言葉が通じないんですか? 精霊魔法ってあったと思うんでけど、あれって言葉でお願いしてますよね?」
「あぁ、上位精霊ならばこちらの言葉も分かるものや使うものもおりますが、基本精霊とは使用している言語が違います。《精霊魔法》は使用する際、たしかに言葉で彼らにお願いをしますが、彼らはその言葉に込められた気持ちを汲み取って力を貸してくれるのですよ」
なるほどなー!!
だからか、ランダム要素が多すぎて思った通りに使えないって言われてた理由、これか。ちゃんと相手に言葉が通じないんじゃ、そりゃ効果が精霊のさじ加減になるわ。
ってことは、それと一緒に《語学:精霊》とか取ってたらちゃんと使用できるとか??
まぁ、その前に《語学:精霊》って感じのスキルがあるかわからないから、なんとも言えないけど、今度ライラに会ったら教えてあげようっと。
そんなことを思っていたら、後ろからボソッと「ほんとユズちゃんといると、面白いぐらい新しいこと次から次へと出てくるわねぇ…」なんてため息とともにカシスさんが呟いてたけど、私聞こえなーい、キコエテナイヨー。
おっといけない、話が脱線してた。
ってかさせてた、いけないいけない。
「さて、お次は『復活の儀』についてです。これは別名『契約の儀』とも呼ばれております」
そう話し始めて説明してくれた内容はこんな感じだった。
『〜の心魂』を相手から渡されるといことは、言葉の通じない相手から、気に入られて認められた証拠だという。
あ、これは、貰った時にチェシャも同じこと言ってたやつだ。
これを貰えるということは、力を貸してくれる、自分の側にいてくれるというある種の契約に近いものらしい。
ただ、魔物であれば強さを求め己を倒した者を認める場合が多くあるが、すでに肉体は倒されているため、この世界に存在していない。だから復活させないといけない。
基本的に、死んだ者を生き返らせるのはほぼ不可能に近いことだが、それを可能にするのがこの『〜の心魂』系のアイテムだ。
このアイテムには倒された者の魂が込められている。あとは肉体再生の媒体となる素材を用意すれば、この心魂をくれた者をこの場に呼び寄せることができるそうだ。
あぁ、だからあの時チェシャも牙は残しておいた方が良いよって言ってたのか、なるほど、なるほど。
「……といった感じになります。あと、復活を司る神が供物として求めるものが、その……貨幣でして、その復活の供物として、ユズリハ様から代金を頂きたいのですが……お手持ちは大丈夫でしょうか?」
ものすっごく、言いにくそうに司祭様がそう言う。
えぇ…供物として金を請求する神様ってなんだよ……あっ!!!だからか、デスペナ!!現金が減るの!!!復活の神がこれだからか!!!!
まぁ、全額請求されてない分まだマシなのかな……なんて思いつつ……下手なこと言うと神様からの請求額がなんか増えそうだからお口チャックしとこ、ん。
「えっと、大丈夫だと思います。ちなみに金額は……」
「少々お待ちください。あ、神より神託が来ておりますね、求める供物は『20万G』となります」
そうたずねれば、司祭様は捧げたアイテムの方を見るとそう教えてくれた。こちらからは金額見えないけど、司祭様には神様からの指示が見えるってことかな。
さてさて、20万Gか、うん、私自身の手持ちはもちろん足りない。
結構な額だけど大丈夫かな…そう思って2人を見れば、任せろと言うように笑っていた。
ポンっと音ともにカシスさんからトレード申請が届く。
……うぉぅ……一気に、所持金、増えました、はい。
ってか、カシスさんから届いた額が、20万Gだけじゃないんですけど??って、彼に多いことを言えば、色々と面白い話を聞けたからそれの情報料よん♪って言われてしまった。遠慮なく受け取りなさいな、とにっこり微笑まれて、これは断れない雰囲気ぃ……。
ちなみに全部合わせて30万Gでした。
……多くない?? これ、ちょっと多くない??
もうこの後のウサギ狩りの検証とことん付き合おう、それ以後も要請があったら手伝おう、うん、めっちゃ頑張ろう。
とひっそり心で誓ったのでした。
カシスさんから代金を受け取ったので、そこから司祭様に20万Gを支払う。
祭壇に捧げられる、『森狼の心魂』『森狼の牙』そして、20万G。
ずっしりと重そうなお金が入った麻袋……祭壇の中で、ものすごく浮いてるし異彩を放っている。
絵図……絵図がな……いや、ここは何も言うまい、うん。
「はい、確かに必要なものは全てお預かり致しました。これより復活の儀を行いますので、しばしお静かにお願い致します」
司祭様がそういう恭しく頭を下げてから、祝詞を唱える。
祝詞の言葉は、使われている言語が違うのかな、何を言ってるのか私には理解出来なかった。
ただ綺麗な響きの音色で、思わず聞き惚れてしまう。
祝詞を唱えて数十秒後、祭壇に捧げた3つの物がふわりと白い光に包まれる。
いつの間にやら、手に透明なベル(ガラス製っぽいけど違うかも)を持っておりそれを2、3回鳴らす。
その音と同調するように白い光が強くなってーーーー
パンッ!!!
司祭様が柏手を1つ。
「これにて復活の儀は無事成功です。ユズリハ様、どうぞ、ご確認ください」
そう司祭様に声を掛けられ、ハッとする。
先程の光は、その、私の種族特性的にきつかったんですぅ……眩しすぎて一瞬意識飛びそうだった……。
気を取り直して、光が治った祭壇に眼を向けるととそこには、1匹の狼の姿が。
それは、チュートリアルで出会ったあの森狼がいた。
長くなったので、とりあえず一区切り。
次は従魔紹介回かなぁ…(予定は未定)
0924:ルビ入れ忘れてたので追加しました




