33.やっと行動開始です。
お待たせしました……お仕事バタバタしておりまして…なかなか書く時間ががが。
またぼちぼち頑張って更新予定なので、ゆるゆると読んでいただけたら幸いです〜。
そして、評価と誤字報告ありがとうございます!
余裕が出てきたら感想の受付も再開したい所存…( ˘ω˘ )
私に泣きついている白妙さんの頭をヨシヨシと撫でた。
おぉ〜髪の毛さらっさらだぁ〜美髪ってこういう髪のことをいうんだろうなぁ……あ、白妙さんのケモ耳、もふもふで気持ちいい。これはものすごく役得なのでは?
そんなことを心の中で思いつつ、白妙さんに声を掛ける。
「えっと…とりあえず白妙さん、落ち着こ?」
「そうよぉ〜白妙、ユズちゃんが困ってるじゃない」
「うぅ……ごめん……」
とりあえず、白妙さんをもう一度椅子に座らせてお茶を入れる。それを手渡し、白妙さんが落ち着いた頃を見計らってふと、気になってた事を聞いてみた。
「そういえば、サモナーとテイマーの違いって、どんな感じなの?」
「そうね、どちらも魔物をテイムするまでは方法は同じだけど、その子たちを呼ぶ際のコストがそれぞれ違うって感じかしら」
仲間にするまでの手順はどちらも同じ。
ただ呼び出した際に、テイマーなら最大で5体まで連れて行けるが、一体につきチーム枠を1つ埋めてしまうのでMax連れて行こうとするとソロプレイを余儀なくされる。
また、経験値も、経験値÷人数分になるため、自分に入る分が少なく、なかなかレベルも上げにくいそうだ。
サモナーは召喚の際、MPを犠牲に従魔を召喚し、召喚してる最中は自分のMPの上限がそのコスト分下がる。
簡単に説明すれば、召喚コストが100の子を呼び出す場合、自分のMPが200なら召喚中の自分のMP最大値は100になる、といった具合だ。
召喚を解除すれば、コスト分MPは減ってはいるが、最大値は元に戻る。
なお、二体以上の召喚だとチーム枠を1つ埋める事になるが、テイマーよりはまだ他の人と組みやすくはなっている。
召喚獣のレベルは《召喚術》のスキルレベル上限となるので、高レベルの召喚獣を呼びたい場合は自分のスキルを上げる必要があるそうだ。
ただ召喚する際は、召喚獣のレベルは指定ができるので自分のMPとコストを見て状況により臨機応変に変えられる強みがある。
「まぁ、どちらにせよ、好感度が低いとコストが高くなるし言うこと聞かないし、何においても時間がかかるし、自分含めてある程度育たないと進むのも大変って感じだから、かなりの玄人向けってわけ」
「白妙さんの召喚獣は、懐いてる?」
「懐いてるとは思う……思いたい、けど、ユズリハちゃんが貰ったようなアイテムは貰ってないから、好感度的にはまだまだ足りないのかなぁ、とは思ってるよ」
私がそう聞けば、白妙さんは他にもカップの水面を見つめながら、少し困ったように、そして寂しげに笑った。
あぁ、そんな顔させたかったわけじゃなかったんだ。
申し訳ない気持ちになって、思わずヨシヨシと白妙さんの頭を撫でる。
そして、白妙さんとカシスさんを見て、軽く微笑んだ。
「わかった、私、協力する」
「っ!!! いいの!? ありがとう!!ユズリハちゃんありがとう!!!」
カップを机に素早く置いた白妙さんにガシッと抱きしめられた。
ひゃっ!!めっちゃいい匂いがする…!!と思いつつ、バサバサと音が聞こえてその音の方、白妙さんの背中側を見ればもふもふの尻尾がものすごい勢いで揺れていた。
……へぇ、やっぱり獣人を選ぶと尻尾とかも感情と連動するんだな、なんて事を思ったのは秘密だ。
***********
「ごめんなさい、ユズリハちゃん。色々と取り乱しちゃったわ……」
「大丈夫、もう見慣れたから」
色々と落ち着きを取り戻した白妙さんが恥ずかしそうに謝罪をする。
迷惑じゃなくてむしろ私としては役得だったので問題ないです、はい。
「ほんと、話進まねぇーな、おい」
ボソッとため息とともにソーンが呟いて、それに同意するようにジンが頷いていた。
それを横目に見つつ、それはその、うん、私もそう思い始めてたので、あははーと笑ってごまかす。
「ふふっ、とりあえずこのあとは、商業ギルドでクエストを受注、教会に行ってその子を復活させる、そして外で上質肉のドロップ条件確認、って感じでいいかしらん?」
「うん、大丈夫」
カシスさんから、この後の流れを確認するようにそう聞かれて、頷く。
ソーンとジンに、2人はどうするの?とたずねれば、ジンはまだ作業が残ってるから店に残るらしく、ソーンはリアルの方で用事があるからこのあとはログアウトするそうだ。
「ソーン、連絡してくれてありがとうね」
「どーいたしまして、これぐらいどってことないさ。あ、そうそうチェーンクエストの件、進展あったらすぐに教えてくれ、俺もやりたい」
お礼を言えばソーンはそういって爽やかに笑う。
くっ、眩しい!!イケメンの笑顔っ!! でも、ソーンだからなんか腹立つ……!!
……いやぁ、ある程度見慣れてるといえ、相変わらずイケメンの笑顔はなんというか、こう、威力が半端ないわぁ、同時にソーンだからなんかイラッとするけど。
その場でログアウト(もちろん店の所持者のジンに許可を取って)していったソーンを見送ってから、私とカシスさん白妙さんでジンの店を後にする。
お店を出る際にジンから言われたのは、明日のことで、
「明日には装備品が出来てるから都合のいい時間に連絡よこせよ、いいか、ちゃんと連絡よこせよ?」
「りょーかい、りょーかい。大丈夫だよ、私、ジン相手には連絡すっぽかしたり、ど忘れする事ないから」
「ユズリハ、お前なぁ……その気遣いを少しでも……いや、3分の1でもいいからソーンにも回してやれ」
そういって、まるで残念なものを見るような目で私を諭すジンに、はーいと軽く返事をしておいた。
***********
カシスさん&白妙さんと一緒に商業ギルドに向かう。
道すがら、すれ違う人たちに二度見されたけど、まぉ、こんな目麗しい美男美女が歩いてたら二度見しちやうよね、私はガン見するわ。
目立っちゃってるなぁ……目立ちたくないけれど、こればかりは仕方がないかと諦めた。
なるべく2人の陰になるように、歩いてたのは秘密だ(すぐに白妙さんにバレて腕を組まれて隣を歩かされたけども)
商業ギルドでは、なんの問題もなくすんなり2人ともクエストを受注することができた。
まぁ、カシスさんは《裁縫》、白妙さんは《呪符作成》の生産スキルを持っており、すでに2人とも商業ギルドに登録済みだったから、すんなり終わったっていうのもあったけど。
クエストを受注する際、2人はジーヴスさんに色々質問しており、聞ける事は全て聞き出したって感じだった。
そして只今のお時間は、15:00ちょっと前。
まだ日差しが強く感じるけど、さっきよりはマシかなって感じ。これぐらいなら我慢できるからハーブラビット狩りできそうだ。
「さぁて無事クエストは受理でしたし、次は教会に行きましょうか♪」
カシスさんがそう言ってにっこりと微笑み、待ってましたぁぁ!!!とばかりに目をギラギラと輝かせて白妙さんが頷く。
そんな白妙さんの様子に私とカシスさんは苦笑。
カシスさんが白妙さんを落ち着かせるように、お話ししてる姿を眺めながら私は、気持ちはわかるけど美人さんの獲物を狙うかのようなギラギラとした目は、肉食系女子を彷彿とさせてちょっと怖かったのは秘密だ。
「そういえば、私、教会に行くの初めてだ」
「あらん、そうだったねぇ〜。初回ログイン特典の福引は教会でやってるから、結構ゲーム始めた人はすぐ教会に行ってるイメージがあったわぁ」
そういうカシスさんに、私は初日に面倒くさいプレイヤーに絡まれた事や、そのあとソーンの案内でジンと再会して話し込んで街中を歩き回れてなかった事などを、説明したら真顔で心配された。
「ユズちゃん、貴女ねぇ……なるほど、彼が心配する理由よくわかったわぁ。これは早く従魔召喚して、ボディガードになってもらいましょ、うん」
ちなみに、白妙さんの方を見れば彼女もカシスさんに全面同意なようで
「ユズリハちゃん、しっかりしてるけど、どことなく危うい所もあるから、うん、誰かしら側にいた方がいいわ、絶対」
と、これまた真顔で言われてしまった。
えぇ……本日出会ったばかりの2人にそう言われてしまうほど私って危なっかしいのかなぁ。
そういえば、美人な2人に真顔で力強く頷かれたので何も言えなくなった(美人の真顔は迫力ががが)
道すがら、カシスさんがこの街の教会について簡単に説明してくれた。
教会は街の北側に位置しており、この街の規模にしては大きめの施設となっている。現地の人たちがよく祈りに礼拝堂を利用してる姿を見ることができ、祀られている神は『慈愛の女神マイア』『精進の軍神アーレース』『創造の神デミウルゴ』の三柱。
ポピュラーなのは慈愛の女神、冒険者や騎士が主に信仰してるのは軍神、生産や物作りを生業としてるものは創造の神の信仰が多いそうだ。
「そういえば、ソーンから神像の前で祈ると加護が貰えるって聞いたんだけど、どんなのが貰えるの?」
そう聞けば今度は白妙さんが教えてくれた。
加護の効力はゲーム内時間で1日だけ。日付が変わると加護は失われてしまうそうだ。
初回の祈りでほぼ100%の確率で加護は貰えるが、2回目以降は教会に熱心に祈りにこないともらえないらしい。
ちなみに、この初回で貰えなかったという人はゲーム内でPKや窃盗など犯罪を犯したプレイヤーだったそうだ。神様的に、悪いこと絶対ダメってことなのかもしれない。
もしかしたら、悪神と呼ばれる神ならその人たちも加護を貰えるかもしれないが、なんだかこう加護をもらったら後のリスクが高そうで怖いなと思いました、はい。
貰える加護だが、軍神はそのまま攻撃関係のステータスかスキル経験値up、創造の神は生産スキル経験値upか品質向上、慈愛の女神はランダムで何かしらの効果が上がる加護を貰えるそうだ。
今日はこの後、検証に付き合うから無理だけど、今度生産スキルを試す前に一度創造の神に祈ってからやるようにしよう、うん。
「まぁ、私たちプレイヤーが1番お世話になるのは、死亡した際の復活ね。基本死んだら教会に自動転移されるし、ちなみに復活すると自動的に所持金は半額、溜まってた経験値も半分に減るから注意って感じかしら」
「うわ半減は…きついなぁ…アイテムはなくならない仕様なんだ」
「装備品とインベントリに入ってるものはロストしないわ。ただ死亡した際に手に持ってたものとか拾ってなかったものはその場に一定時間残るようになって、他のプレイヤーでも拾えるようになるから、大切なものはさっさとインベントリに放り込む癖をつけるといいかも」
そんな感じで話をしていたら、教会に到着。
見た目はイタリアのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会みたいな感じだ(わからない人は検索してね!)
教会の前には食べ物や花の屋台が並んでおり、そのうちの1つは、商店街の福引きとかであるあのガラガラするやつ(名前が分からない)の大きいバージョンが置いてあった。
あの屋台がきっと福引き屋かな? 繁盛しているようでプレイヤーらしき人たちがわらわらと集まっている。あの中に突っ込む勇気はないのでやっぱり福引きは落ち着いてから行こう。
他にも気になる屋台がちらほらあって……
「うふふ♪ ユズちゃん、物珍しいのはわかるけど、今は先に用事を済ませちゃいましょ?」
「あ、そうだね、りょーかい」
きょろきょろと物珍しそうに眺めていたら、カシスさんにそう言われてハッとした。いけない、本来の目的を忘れてた。
あとで少し回ろうねと白妙さんが言ってくれたので、それに是非!と返事をしてから、私たちは教会の重厚な扉を開けて教会の中に入ったのだった。




