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23.おかわりはいりません!

誤字脱字とかちょっとした修正は少々お待ちを。

 

「…せいっ!!!!」


 レッサーウルフCに向かって駆け出した勢いのまま抜刀、そして振り抜いた。しかしその攻撃は、ひらりと身を翻した相手に躱される。

 私の攻撃を躱したことで、得意げにレッサーウルフCがグルルゥと唸った。

 まぁ、その反応は予想通りなんですけどね! そして、私は即座に呪文を唱える。


「《アイスバレット》!」


「ギャウッ…!!!」


 至近距離で放たれた魔法は、レッサーウルフCの腹部に強烈な一撃をお見舞いする。攻撃を受けたレッサーウルフCは転がるように横に吹き飛んでいった。


 うーん、残念、ちょいと威力が足りなかったかな…あと少しだろうけど、倒すまではいかなかったか…。


 一応、最初の攻撃は避けてもらうための、囮の攻撃だった。まぁ、当たればラッキーって思いつつ、思いっきり当てる気満々で攻撃はしてたけどね!普通に避けられましたけどね!!!くっ!!!

 これが、チュートリアルで戦った森狼(フォレストウルフ)だったら、私の意図に気がつかれてたかもなぁ…なんて。

 あの子、本当に頭良かったし、森狼(フォレストウルフ)よりレッサーウルフが下位の魔物で良かったぁ。


 そして自動判定で《居合・攻》が失敗したから、しばらくこのスキル使えなくなりました。

 こういう時、自動発動のスキルって少し扱い面倒いよなぁ……と思いつつ、それあたりは後でちょいとオンオフみたいに切り替えできるのかとか確認しよう、うん。


 とにかく《居合・攻》も強力ではあるけど発動条件的には少し厳しいところがあるから、今のところ私の攻撃手段で簡単かつ安定して、一番威力がある攻撃って氷魔法の《アイスバレット》だ。

 それに、この辺りの敵に氷属性の耐性持ってる敵なんていないから、ダメージ量も分かりやすいし。

 何回当てて倒せたかで、相手のHPがどれぐらいあるのか予測しやすくてよく使っちゃうんだよね。


 さてさて、あと一回でも何かしらの攻撃を当てれば倒せそうだけれど、最初の囮と言う名の当てる気満々な攻撃を軽く躱されたからなぁ……。

 不意をつくか、何かしらで相手の行動を制限した状態じゃないと、簡単には攻撃が当たりそうにないと感じる。


 正直に言って面倒くさい相手だなぁ…。

 ソロの時には絶対、相手にしたくない……ほんとに。


 横に吹き飛んだレッサーウルフCは、かろうじて受け身を取った。そして、よろよろと起き上がると、低く唸り私を思いっきり睨みつけてくる。

 わぁーお、私に完全ターゲットロックオン!絶対許さん!!激おこぉ!って感じですね、はい。


 ちらりと視界の片隅のログを確認する。

 ふむふむ、なるほどね。そろそろ《フリーズフロスト》の効果も切れる頃だ。

 そっと納刀しつつ、考える。さぁてと…どーしようかな……




「《二段突き》!!」


 その時、レッサーウルフCに向かって鋭い二段突きが襲いかかった。怒りで意識が私に全て向かっていた為か、その攻撃をレッサーウルフCはもろに食らう。効果は絶大だ。


「キャゥンッ…!!!グゥ……」


 そして、レッサーウルフCは光の粒子となって消えてゆく。これで2匹目、残るは1匹!

 それを確認してから、私は声を掛ける。


「ありがとう、タイミングばっちり」


「な、なんとか…当てられて良かったです…」


 槍を抱きかかえるようにしながら、レッサーウルフCを倒す一撃を与えた少年ことアルスくんは、ほっと胸撫で下ろしていた。


 実は、駆け出す前辺りで、アルスくんの『疲労』が回復してたのが見えたんだよね。

 なので、フレンドチャットで、ちょっとしたお願いをしていたのだ。

 私が、アレの注意を集めとくから、死角からそっと近づいて攻撃してねって。

 ぶっつけ本番だったけど、上手くいったようでよかったよ。うん。


 えっと、ライラちゃんの方は…もう少し回復するまでに時間が掛かりそう。アルスくんの方が回復するのが早かったのは、何かしら影響のあるスキルでも持ってたか、あとはステータスの差かな。


 そう考えながら、くるりと振り返りつつ抜刀!

 後ろから迫っていた攻撃を弾き返す。



 ガキッン…!!!!!



「…っと!! 残るはキミだけね!!」


「ギゥッ…グルルゥ…!!」



 《居合・護》が発動、鋭い爪を簡単に弾き返す。不意打ちを狙っていた攻撃を簡単に防がれた為か、とても悔しそうにレッサーウルフが低く唸った。

 ふふふ、甘い、甘いよ、ちゃんと私の《警戒》はキミの行動把握してたんだからね。さすが《警戒》先生頼りになるわぁ。


 不意打ちが失敗したので、レッサーウルフはそれ以上追撃はせず、くるりと身を翻すと、後ろに下がり距離を取る。

 身を低くかがめてから、天高く顔を上げ、そして、その口を大きく開け……


 あっ…!!やばっ!!あれは…!!!!




「ワゥォ……」


「お願い、力を貸して!あの子を鳴かせないで!音をかき消して《風の精霊(シルフィード)》!!」


 突如、強い風が吹き抜ける。その紡ぎ風は、今まさに遠吠えで仲間を呼ぼうとしていたレッサーウルフを包み込むと、その遠吠え(おと)をかき消した。


 ……えっ、すごい、あれは《精霊魔法》だ。

 確か、フィールドによって使える魔法が限られるのと、威力や効果は術者の呼び掛けに答えてくれる精霊のさじ加減(気まぐれ)によって変動がすごいから、かなり扱いが難しい魔法だったはず。

 ちょっと面白そうだから、興味はあったけど敢えて取らなかった魔法だ。あと、使用SPがめっちゃ高かった。



「グゥッ?!?! ……ッ!!!」


 レッサーウルフは、いくら吠えても遠吠え(おと)が出ないことに驚いて慌てている。

 あの紡ぎ風は、ただ単純にレッサーウルフが発する音だけをかき消してるだけで、攻撃力はないみたいだ。


 とりあえず、今がチャンス!



「行ける?」


「あ、はい!大丈夫です!!!」


 一言、声を掛けてから、2人同時に駆け出した。

 一瞬どっちで攻撃しようか悩んだけど、ちょうどクールタイムが終了していたので、頭を狙って《アイスバレット》放つ!

  私の魔法はレッサーウルフに狙い通りヒット! 小さい呻き声を上げて、ふらりとレッサーウルフの体がよろける。


「《エイミング》!!」


「ギャウッン!!!!!」


 その隙を見逃さず、アルスくんが狙いを定めて鋭い突きを繰り出した。

 狙い澄ました強烈な一撃は、クリティカルとなり、トドメの一撃を与える。

 そしてレッサーウルフ(最後の1匹)は光の粒子となって消えていった。







「おっ……終わった……めっちゃ怖かった…」


「助かったぁ……よかったぁ…」


 緊張が解けたのか、その場に座り込む2人。

 そんな2人を横目に見つつ、ちらりとログを確認すれば、おぉ、結構溜まってる溜まってる。

 まぁ、今は《警戒》のスキルになんの反応もないけど、落ち着いて話したり確認したりする為には、とりあえず、セーフティエリアまで行くのが最優先かな。


「2人とも、お疲れ様。大丈夫?」


「あ、うん、大丈夫です!!あの、ありがとうございました…!!」


「お姉さん、ありがとうございます。助かりました。どう、お礼をしたらいいのか…」


「えっと、とりあえずセーフティエリアまで行こう。ここにいたらまた別の魔物が来るかもしれないし、出来れば落ち着いた状況で、話したいからね」


 私がそう言えば、2人は頷き立ち上がる。

 マップを確認すれば、うん、あと10分ぐらい歩けば着きそうかな。

 《警戒》で辺りを確認しつつ、セーフティエリアに向かう。その間に、軽くお互いの自己紹介をした。



 話を聞いたところによると、2人は最初にそうかなぁと思った通り、兄妹だった。

 藍色の髪に翡翠の瞳なアルスくんがお兄ちゃんで高校生、同じく藍色の髪に月色の瞳なライラちゃんが妹で中学生だそうだ。

 2人ともゲームは結構する方だが、VRMMOはこれが初めてとのこと。とりあえず、あんまりそういう年齢的なのとかリアルな事は言っちゃダメだよ?って教えておきました。はい。


 で、話題になってたこのゲームがとても気になってダメ元で応募したら見事に2人とも当選。それ用の機械もおねだりして買ってもらって、兄妹で一緒遊ぶのを楽しみにしてたんだって。

 ただ、いろいろと初めて過ぎて物珍しさから、うろうろし過ぎたら森の中に迷い込んで……さっきの私と出会った時の状況になって、今に至る、と。


「他のお友達で、一緒にやってくれそうな、この手のゲームに詳しい子はいなかったの?」


「いやぁ…親しい奴で抽選当たった奴がいなくて…ってか、当たった事言ったら凄いことになりそうで誰にも言えなかったんですよね……」


「私はお兄ちゃんがいるから、なんとかなるかなぁーって思ってた!」


 あぁ……わかるわぁ。

 たしかに宝くじの当選率より当たらないって言われてるゲームの抽選を、兄妹で当たって言われたら、ねぇ? めんどくさいことになりそうだ。

 それにしても、ライラちゃんはお兄ちゃんっ子なのか、お兄ちゃんのアルスくんに絶対の信頼を寄せてて、アルスくんもうざったそうにしてるけど、満更じゃない様子。

 なんだかんだ、じゃれ合ってて楽しそうで2人とも可愛らしい、兄妹仲が良くていいなぁ。



 私も、この2人みたいに…――――




「ユズお姉ちゃん?」


「ユズリハさん?」


「あっ…ごめん、ちょっとぼーっとしてた。2人とも仲が良いんだね、兄妹仲が良いのは、良いことだよ。…おっと、そろそろセーフティエリアに着くみたい」


「あっ!!本当だー!!」


「おい!バカ!ライラ待てってば!!」


 マップを確認したら、少し先の木々の間を抜ければ、セーフティエリアみたいだ。たしかに木々の隙間から明るい炎の光っぽいものが見える。

 同じくマップを確認したらしいライラちゃんが嬉しそうに声を上げ駆け出した。慌てたように、アルスくんがその背中を追いかける。本当に仲が良いなぁ、見てて微笑ましい。


 そんな2人の姿を、眩しいものを見るかのように見つめながら、私もその後をゆっくりと追いかけたのだった。

とりあえず、あと1〜2話ぐらいで、一区切り着いたらキャラ紹介挟む予定(私がそろそろ覚えきれなくなってきた…)

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