18.美味しいご飯と夜の街
ちょっと更新遅くなりました…すみません……。
皆様も夏バテにはご注意をぉ……。
酒場の繁盛ぶりは、とてもすごかった……。
予想していた以上に、やばかった…本当に忙しかった。
次から次へと注文が入る。みんなよく食べるなってぐらいすごい。
私は洗い物をしつつ、手伝える範囲で調理の補佐もしていた。
酒場なんだからご飯食べないで、お酒だけ飲んでてくれよ……なんて思ったのは秘密だ。
あとから聞けば、アンリエッタのご飯はプレイヤーにもNPCにも人気があり彼女が厨房に入る日は、いつも以上に繁盛するそうで……。
そりゃな、あれだけ美味しいご飯がお手頃価格で食べられるとなれば、私だって酒場に通うわ、うん。
いやぁ……よく働いたよ…頑張った私。
【スキル《料理》を覚えました】
【スキル《洗浄》を覚えました】
またしても、ぐでーんと厨房の作業台で伸びつつ、お仕事中に出たログを確認する。お、新しいスキル覚えたみたい。
《料理》はわかる、あの慌ただしさだったし、これで取れなかったら私は、マスターを恨んでた。うん。
問題はもう1つの方、スキル《洗浄》だ。なんだろこれ、初めて見る。
《洗浄:Lv1》
説明:身体や装備品などの汚れを綺麗に落とすことができるスキル。レベルが上がるほど、洗浄にかかる時間半減、しつこい汚れもすぐに落とせるようになる。
魔法Lv.1:クリーニング(身体や装備品・アイテムの汚れを落とす)
魔法『クリーニング 』
説明:身体や装備品・アイテムの汚れを落とすことができる。汚れの度合いにつき消費MPと綺麗になるまでの時間が変動する。10sにつき消費MPが5かかる。
基本、洗い物ばっかりやってたからかな? でもこのスキルはすごく使えるぞ。
ある程度はゲーム仕様になってるけど、雨に濡れたり、泥で汚れればちゃんとそれ相応に汚くなるのだ。
だから、ギルドや宿にはお風呂が設置されてるし、街には銭湯や洗濯場があったりする。
リアルと一緒で、汚いままでいれば、街の人たちからの好感度は下がっていくし、病気の状態異常が起きる。汚いままはデメリットしかない。
ちなみに、自力で装備品などを洗濯するのが面倒くさいという人向けに、ギルドなどで洗浄サービス(1回10アイテムまで・800G)があったりする。それを利用する人は多いそうだ。
ただ、このスキルは早めに気がついておきたかった……あの慌ただしさの中で使いたかった……くっ。
「ん、何かあったのかい?」
私がステータス画面を見ながらしかめっ面をしていたので、アンリエッタから不思議そうに、聞かれる。そして、私の向かいに座ると目の前に、とっても美味しそうな物を置いたのだった。
「待ってました!!!!」
反射的に叫んじゃったのはしょうがない。だって私はこれを待ってたの!!これなの!!これが!!食べたかったの!!!
私の目の前には、美味しそうな匂いのフワッフワなオムレツが一皿。アンリエッタにお願いして作ってもらった料理だ。
ものすごぉく卵料理が食べたかったんですよ。自分ではふわふわなオムレツはなかなか作れなくてねぇ。
アンリエッタに聞いたら、ふわふわオムレツ作れるっていうんだもん。即お願いしたよね、うん。
背筋を伸ばして座り直す。ふふふ、美味しそう。顔がにやける。
「美味しそう……すごく美味しそうぅ…」
「ありがとうよ、熱いから気をつけてお食べ」
「うん、いただきます!」
早速ナイフでオムレツを切る。するとトロッとしたチーズともにハムとタマネギが入っていた。これは絶対美味しいやつだ。食べやすいように一口サイズに切ってから、いただきます!!!
う〜〜〜〜ん!!!やっぱり美味しい!!!
卵はふわっふわだし、中に入ってるハムとちょっとシャキッとしてるタマネギが、とろぉりと溶けたチーズ&ふわふわ卵とよく合って最高。めちゃくちゃ美味い。えへへ、幸せ……最高、ふふふ。
美味しさにずっと顔が緩んでるけど、本当に美味しいんだから仕方ない。不可抗力だ。そんな私の様子を見て、嬉しそうにアンリエッタは言う。
「ほんと、ユズリハは美味しそうに食べるねぇ。料理人冥利につきるよ」
「美味しいもん、幸せ」
そして、私はあっという間にふわふわオムレツを完食したのでした。
あ、《鑑定》するの忘れてたぁ……まぁ、いいや。
「で、何があったのかっていう話なんだけど。ログ確認したら、新しいスキル覚えてて」
私がオムレツを完食したあとは、アンリエッタと一緒にお茶を飲んでいた。
酒場の食事提供は19:00から21:00までとなってて、それ以降は軽食とお酒のみとなっている。
今は21:30。片付けもあらかた終わり、私たちのお仕事は終了ってことで一息。
「《料理》は覚えただろ? あれだけ手伝ってくれてたんだし」
「うん、覚えてた。あとは《洗浄》ってスキル覚えたんだけど…」
「ああ、そのスキルは使えるよ」
話を聞くと、アンリエッタも持ってはいるがMPが低いので食材を洗うときや自分の服が料理で汚れたときぐらいしか使わないらしい。だが、このスキルはとても使えると教えてくれた。
スキルレベルが上がれば、洗浄できるものも範囲も広くなるから屋敷を丸々綺麗にできるんだって、それはすごい。
アンリエッタとはフレンドコードを交換した。今後も出来る範囲でいいから、また手伝って欲しいって。
手伝ってくれたら、また好きな物作ってあげるよって言われたら、即オッケーしちゃうよね。うん。
【クエスト『酒場でアルバイト その1』が終了しました】
【制限を解除します。ギルドの外へ出られるようになりました】
【クエスト報酬として、5000G、アンリエッタお手製クッキー×3を受け取りました】
本来はクエストを達成したら、窓口で報告なんだけど、今回は特殊事例だそうで、アンリエッタに報告で構わないそうだ。
報酬はアンリエッタから受け取った。お手製クッキーは助かったから感謝の気持ちだって。あとで、商業ギルドで買った紅茶と一緒に食べよう。
あと、報酬金額高いんじゃ…って言ったら、それぐらいの働きはしてくれたからいいんだよって押し切られました。なんか、ジンもだけど職人系の人ってこう頑固だよね。でも助かったから、ありがとう。
アンリエッタはこのあとまだ酒場で作業していくそうだ。私は外に探索に行きたいから、お礼を言って厨房から出る。
所持金が増えたし、回復アイテムを買っていこう。MPをすぐに回復する手段が今のところないんだよね……。HP回復に関しては、スキル《月光回復・小:Lv1》があるから特に買わなくてもいいかもしれない。そういえば、このスキルの説明を見ていなかったので確認する。
《月光回復・小:Lv1》
説明:月の光を浴びると徐々に体力が回復する。浴びている間は1分毎にHP5%回復。レベルが上がる毎に回復量と速度が上がる。最大25%まで上昇。
なるほど、これは早めにスキルレベルを上げたい。ある一定のレベルになるまでは夜に行動したほうがいいかもしれないなぁ。
それじゃあ、討伐クエストはできるだけ夜にポップする魔物のものを受けよう。その前に買い物っと。
カウンターでコップを磨いていたマスターに声をかける。
「マスター、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「おぉ、仕事は終わったんだな、お疲れさん。それで、なんだ?」
「えっと、回復アイテムが欲しいけど、味がまともなものってあるのかなって」
そう聞けばマスターはとても可笑しそうに笑った。みんな同じこと聞いてくるって。
よく使うアイテムで、しかも服用しなきゃいけないものが美味しくないって嫌じゃないですか。嫌そうな顔でそう言ったら、更に笑われた。
「そうだなぁ、既存の回復アイテムはお察しって感じだな。確か、商業ギルドの委託で回復量は少ないが味が良い回復アイテムが出てたような…ただ、プレイヤーにもNPCにも人気があってすぐに品切れになってるがな」
やっぱり、ちゃんとプレイヤーメイドの回復アイテムあるんだ!それは良いことを聞いた。
『お狐様のポーション(ラムネ味)』と『お狐様のMPポーション(クリームソーダ味)』という名前らしい。製作者が狐の獣人プレイヤーらしくて、そこから『お狐様の〜』なんだって。
回復量はそれぞれ30で、金額は既存品の約5倍になるとのことだけど、私的には味が良いことが優先だからそのぐらいは許容範囲だ。
もしかしたら、まだ商業ギルドにあるかもしれないから、後で寄ってみよう。そして売ってたら買う…!!
一応、そのアイテムが買えなかったことを考えて冒険者ギルドで既存品の『初心者MPポーション』を3個ほど購入した。
『初心者MPポーション』
説明:飲むとMPが50回復。体に振りかけても回復するがその場合は徐々にMPが回復していく。味は苦め、美味しくない。販売価格:200G
MPポーションは苦いのか……説明文に美味しくないとかやめて欲しい、切実に。
HPポーションよりMPポーションのお世話になることが多そうなので、この辺りの味の改善は私も手をつけてみようかなぁ……まぁ当分先になりそうだけども。
さて、とりあえずMPポーションは一応買えたので、これで外に行ける。
ついでに酒場のクエスト掲示板を確認。わぁ…いろいろとあるなぁ…どれにしょう。
今の私でもできそうなクエストはこの辺りかな?
『吸血コウモリの討伐』
説明:始まりの森に生息している吸血コウモリを5匹倒す
報酬:1000G
ランク:F
『マメダの討伐』
説明:始まりの草原に生息しているマメダを5匹倒す
報酬:1500G
ランク:F
『薬草の納品』
説明:薬草を10個集め納品する
報酬:500G(品質により増減あり)
ランク:F
初めてクエストを受けるから、これぐらいでいいだろう。他にも気になるクエストがいくつかあったけど、それはまた今度。
確かドックタグを、掲示板に貼られている受けたいクエストボードに近づければ自動受注になるだっけ。そっと近づけてみると、ふわりとドックタグが光り、ピコン♪と音がなった。ログが出る。
【『吸血コウモリの討伐』を受けました】
なるほど、こんな感じに自動的に受けられるのか。確か受付に行かないから楽だ。残りの2つも同じようにして、クエストを受注する。
【『マメダの討伐』を受けました】
【『薬草の納品』を受けました】
あと、気になったのでマスターに吸血コウモリとマメダについて聞いてみたら教えてくれた。
吸血コウモリはその名の通り、吸血攻撃をしてくる巨大コウモリで、大きさは猫ぐらいで、かなりでかい。夜の時間帯の始まりの森にポップする魔物で、空中から攻撃してくるので武器によっては討伐しにくい。
だが、攻撃パターンはわかりやすく、空から滑空して爪で攻撃か、しがみついて噛みつきからの吸血攻撃のみ。素早いが身体が真っ白かつ、さらに仄かに光っているので、暗い森の中でも見失いにくいとのこと。なので初心者でも倒しやすいそうだ。
マメダは、見た目が紺色の毛並みのタヌキのことで、大きさは中型犬ぐらい。こちらから攻撃しなければ襲われることはない。基本一匹で行動しており、こちらも攻撃パターンは単純。動きはさほど早くないので見つけたら、すぐに魔法や遠距離武器で攻撃すると比較的簡単に倒せるそうだ。
ただ、体力は他の初心者向けの魔物に比べると、少し多め。昼夜とも始まりの草原にポップし、夜の方がポップ率が高いそうだ。
なるほど、チュートリアルで戦った森狼よりは楽そう。これなら大丈夫だろう。
マスターにお礼を言ってから冒険者ギルドを後にする。
外は真っ暗だった。空には大きな白い月が輝き、星がキラキラと光っている。
街の街頭もキラキラと暖かく優しい光で、石造りの道、周りの建物を照らしている。そして、なにより………
「すごい……よく見える……」
スキル《暗視》の効果かな? なんだろ、テレビ画面の明るさや彩度を上げてる感じっていえばいいのか…かなり先まではっきりと目視できる。まぁ、この辺りは《鷹の目》のスキルも関係してそうだけども。
とにかく、夜なのに周囲がよく見えるから、問題なく行動できそうだ。
そして、お目当てのアイテムを買うために、商業ギルドへ寄ってみたが、どうやら完売中とのことで買えなかった…残念。ただ、次の補充がゲーム内時間で二日後ぐらいと教えてもらえたので、その頃にまた寄ってみよう。
ただいまのゲーム内時刻が22:00。さぁて、探索に行きますか!
自分で書いててお腹空いてきた回でした……
次は外に行く予定。
8/11修正:説明不足だった部分を少し追記。




