表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/44

16.欲望には従順なんです

ちょっと更新遅くなりました

暑さと仕事の忙しさでばったばた&体調不良でね…

皆様も、体調管理にはお気をつけを…_:(´ཀ`」 ∠):

 


 ぐぅぅーーーーー



 響き渡る腹の音。屋台の彼女はとても驚いた顔をした後、豪快に笑い出した。


「あははっ!!すっごい音だねぇ! お嬢さん、そんなに腹減ってんのかい?」


「あー……えっと……はい」


 やばい、めっちゃ恥ずかしい。

 お腹空いてるのは確かなんだけど、ここまで大きく鳴って主張する必要はないと思うぞ、私の腹よ。

 他人に盛大に鳴った腹の音を聞かれるのは、恥ずかしい。まぁ、彼女が更に盛大に笑ってくれたので、いたたまれない気持ちにはならなかったけど。


「ログインしてから、いろいろあってご飯食べ損ねてて」


「そりゃ、大変だ。ほら、コレやるよ。さっき笑っちまった詫びさ」


 そう言って彼女は、屋台の串焼きを一本、私に差し出してくる。めっちゃ良い匂いがするぅ…美味しそうぅ…。


「えっと、ありがとうございます」


 遠慮したほうがいいなぁとは思いつつ、空腹には逆らえませんでした、はい。

 めっちゃ美味しそうなんだもん、空腹時にこれは拷問すぎる。

 お礼を言ってから受け取る。離れて食べるのもなんだから、その場で一口。


「……!!!! 美味っ!!!めっちゃ美味しい!!!」


「ははっ!ありがとよ!」


 思わず叫んだ。

 なにこれー!!!めっちゃ美味しいんですけど…!!!

 タレに付けてシンプルに焼いてあるだけなんだけど、口に含んだ瞬間にジュワッと肉汁が口の中に広がって、醤油ベースのタレとよく合う。

 肉も程よい硬さで食べやすくて、一口、また一口と止まらない。美味しい。白いご飯が欲しい、切実に…!!!!


 そして、あっという間に完食してしまった。

 食べ足りない、マジで食べ足りないぃ……


「そこまで美味しそうに食べてくれると、嬉しいねぇ」


「いえ、こちらこそ、頂いちゃってありがとうございます。めっちゃくちゃ美味しかったです、食べ足りないぃ…」


 ちなみに、串焼きの代金を聞いたら一本500Gとのこと。今の私の全財産じゃないですかぁ……って事で泣く泣く諦めようとしたら、今回は特別価格で200Gでいいよ!って。

 さすが、商売上手ですね、姉御…!! でも、買っちゃう!!!もう一本!!!




 って事で追加で、2本買いました。

 只今の全財産、100Gです。本格的に金策しないと…ははっ。



「いやぁ、ほんとお嬢さん、いい食べっぷりだねぇ!あ、うちはアンリエッタって言うんだ。だいたいログインしたら、この辺で店、広げてるから、よかったらまたおいで」


「ありがとうございます。えっとユズリハ、です。美味しかったので、金策したらまた買いに来ます…!!」


 お礼を言ってからアンリエッタさんの屋台から離れた。

 あぁ、本当に美味しかった。お腹は満たされたけど、財布はやばくなった……あははっ。

 だってゲーム内だと、どれだけ食べても太らないし、食べようと思えば、いくらでも食べれるんだもん…止まらないよね。

 現実だと私、食べることは好きだけどあんまり量が食べられないから、ここぞとばかりに食べちゃうんですよ……前のゲームのときも、めっちゃ食べてたな、そういえば。



「さて、本格的に金策しなきゃ…これだと、回復アイテムも満足に買えぬ……ギルド行かなきゃ…」


 とりあえず、今の所持金じゃ回復アイテムすら満足に買えないので、仕事を探しに冒険者ギルドへ。

 さっき行った時、掲示板見て帰るの忘れたんだよね……特殊クエスト発生したから。


 冒険者ギルドへ行ったら、酒場のカウンター内にいたマスターに、また来たのかって言われたので、素直に金が無くなったって言ったら爆笑された。ちょいと、酷くないです…??

 そんなマスターは無視して、クエスト掲示板を確認する。いろいろあるけど、今すぐ、出来そうなものは少ないなぁ……。回復アイテム買いたいんだけど、今の所持金だと初心者HPポーション1個しか買えない。個人的には初心者MPポーションが欲しい。ちなみに金額は200Gだ、足りない。

 貼られてるクエストは魔物討伐やら採取依頼が主だ。それも気になるけど、すぐにお金が貰えるお手伝い系のクエストは……ないみたい。困ったなぁ……。

 掲示板の前で唸っていたら、いつの間にやらそばに立っていたマスターに話しかけられる。


「嬢ちゃん、すぐに金が入り用か?」


「うん、今の所持金100Gなんで、せめて初心者MPポーションを2〜3個買えるぐらいにはお金が欲しい。今だと食べ物すら満足に買えないから」


「ははっ!確かにな! 嬢ちゃん次第だが、仕事紹介してやってもいいぞ?」


 真顔で私が答えると、それを聞いたマスターはニヤリと笑った。

 強面でその表情、そのセリフは危ないお仕事の人に声を掛けられたみたいで、アウトじゃ……なんて思ってしまったのは秘密だ。

 思わず身構えちゃったのは不可抗力だよね、うん。


「……内容に、よる」


「そう警戒すんなっての。ただちょいと酒場の仕事を手伝って貰おうかって思っただけだ」


「酒場の仕事?」




 ピロンッ♪



【クエストが発生しました。『酒場でアルバイト その1』を受けますか? はい/いいえ】


クエスト『酒場でアルバイト その1』

説明:冒険者ギルド内の酒場でアルバイト!仕事内容はマスターにご確認下さい!基本裏方なので、接客が苦手な人も大丈夫☆ 初心者でもウェルカム☆親切丁寧に教えます!とってもアットホームな明るい職場です♪

報酬:1000G(働きにより増減あり)

受注期限:本日19:00まで




 ま・た・かーーーー!!!!!

 ってか、おい、説明文。どこぞのアルバイト情報誌によくある感じに真似しないでください。なんか文面的に不安要素しか感じないんですけどっ!!!!

 身構えつつ、ジト目でマスターを見れば楽しそうにニヤニヤ笑っている。


「まぁ、やることは至極簡単なことだ。今日調理担当が1人風邪で休みでな、ぶっちゃけ人手が足らないんだわ。だから調理補佐に入って欲しい」


「《料理》のスキル持ってないけど」


「嬢ちゃん、リアルの方では料理するか?」


 まぁ、人並み程度には出来るかなぁ…一応。

 そう答えれば、なら合格だって言われた。子供でも出来る基本的なことが出来ればいいんだって。

 あと上手くいけば《料理》のスキル取れるぞって言われちゃ、受けるしかないよね。って事でクエストを受理する。



【クエスト『酒場でアルバイト その1』を受けました】

【クエスト終了までギルドから出られませんのでご注意下さい】



 あ、これ、一回受けたら終わるまで逃げられないパターンなやつぅ……ってか最初に説明してよマスター……しょうがない、腹を括ろう。

 ちなみに、クエスト報酬は私の働きによるって言われた。バテない程度に、うん、頑張ろ。


「で、今から私は何をすればいいの?」


 クエストを受けたので、マスターに内容を確認する。ちょっとついてこいって言われたので後について行く。

 酒場のカウンター裏へ、その奥にはウエスタンドアがついた入り口があった。マスター曰く、そこの奥が厨房になってるとのこと。


「時間帯的に酒場に居る客がアレなんで、接客はやらんでいい。嬢ちゃんは厨房で野菜の皮むきや、料理の下準備をやってもらいたい」


 そう言って、マスターに厨房の中へと案内される。中を覗けば、見覚えのある人の姿が。思わず名前を呟く。


「アンリエッタ、さん……?」


「ん? あれ、さっきのお嬢さんじゃないか!どうしたんだい?」



 そこにいたのは、あの絶品の串焼きを売っていたアンリエッタさんでした。びっくりってか、覚えられてた。


「お、お前ら知り合いか?」


「さっき、アンリエッタさんの屋台でご飯買ったから」


「それで嬢ちゃん金欠か!!ははっ!!」


 また爆笑し始めたマスターは、私に対して失礼だと思うので、その無防備な横腹を小突いといた。

 全然マスターには、効いてなかったけどね…!!むしろ、ムッキムキの筋肉のせいで私の手の方が痛かった…ぐぎきっ


 とりあえず、私がここにきた理由をマスターが軽くアンリエッタさんに説明する。そして、マスターは後のことを全部アンリエッタさんに丸投げし、定位置な酒場のカウンターへ戻って行ったのだった。






「なるほどねぇ、お嬢さん……ってか、ユズリハでいいかい? うちに対しては敬語もいらないし、呼び捨てで構わないよ。それでアルバイトか、うちも似たようなこと最初にやったわ、あははっ!!」


 自分からさらに詳しく、なんでアルバイトをすることになったのか説明したら、アンリエッタは豪快に笑ってそう言った。

 うわっ、あの、背中、バシバシっと、叩かないで、下さ…力強いっ!!!


 聞けば、アンリエッタもβテスターで、もともとゲームはあまりしない人らしい。誘われてこのゲームのβテストをやったら、どハマりしてしまって、今に至ると。

 VRMMOはこのゲームが初めてで、当初はいろいろ物珍しく、特に食べ物関連が楽しく感じたので、手当たり次第買っていたら初日で所持金ゼロになったそうだ。

 そして、困っていたところをマスターに助けて貰い、その流れで酒場でアルバイト。

 そして、《料理》スキルを持っていたので、試しにご飯を作ったら、酒場の利用者から評判が良くて、そのままズルズルと手が空いてる時は手伝いを続けているとのことだ。

 ちゃんとマスターから賃金は頂いてるそうで、結構な収入になるとのこと。

 いつもはNPCのお手伝いさんがいたのだが、風邪をひいてしまったらしく、困っていたので助かったと言われた。


「えっと、アンリエッタ。私、《料理》スキル持ってないよ?」


「でも、リアルで料理できるんだろ? だったら問題ないよ。知識はあるんだ、なんとかなるさ!」


 と、アンリエッタはまた豪快に笑った。

 そして、彼女は自分のインベントリからシンプルな黒のエプロンと水色のエプロンを取り出すと、水色の方を私に手渡す。

 聞けば、装備すると『器用+10』になるアイテムで、ちゃんとエプロンとしての機能もあるので、服が汚れないようにと、貸してくれた。



「さぁ、準備を始めようかね!酒場はゲーム時間で19:00開店だ。あと1時間ぐらいしかないから、ちゃっちゃとやっちまおう」


「うん、わかった。よろしく、アンリエッタ」


「あぁ、頼りにしてるよ、ユズリハ。じゃあまずは、これだね」


 そう彼女が言うと、でっかい樽…だいたい高さは私の胸元ぐらいで、私なら余裕で入れそうな大きさなものが、ドン!!と大きな音と共に置かれる。

 そっと樽の中を覗けばぎっしりとジャガイモとニンジンが詰め込んであった。




「まずは、ジャガイモとニンジンの皮剥きをよろしく!これ、全部な!」



 マジですか。



8/5修正:アンリエッタの一人称修正。主人公がバイトする理由を修正。

8/11修正:「初心者ポーション」→「初心者HPポーション」に変更。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ