表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/44

15.ぶらぶらしましょう

 

 出された紅茶を飲みながら説明を受ける。


 商業ギルドに登録する為の資格は、何かしらの生産系スキルを持っていることが条件だそうだ。

 私は《調合》を持っていたから、合格だったとのこと。

 こちらも冒険者ギルドと同じでランクがあり、FからSSまでとなっている。最初はみんなFからで、ランクが上がるごとに使用できるギルドの施設やらサービスやらが変わるらしい。

 詳しくは、ランクが上がってからのお楽しみです♪と、可愛らしく言われてしまった。

 ちなみにこちらも、ギルドカード紛失の際、再発行は冒険者ギルドと同じだった。


 ランクの上げ方は商業ギルドのクエストを一定数こなすか、新しいアイテムや製法などの開発でギルドに貢献すればランクが上がる。

 また、自作アイテムの代理販売も受け持ってくれるそうだ。その場合は手数料として売り上げの10%をギルドに支払う形になる。

 作ったものを売りたいと思っていたけど、自身で露店販売するのは無理だなって、諦めていたので、これはありがたい。


 ちなみ、商業ギルドから販売されるプレイヤーメイドのアイテムは転売は出来ない仕様になるらしい。詳しくは、代理販売を受注した際に説明してくれるとのこと。


「あとは商業ギルド会員様限定の素材アイテムの販売もございますので、お気軽にご利用下さい。ご購入できるアイテムはランクによって種類が増えるのと、ラインナップは日替わりになりますのでご注意下さいませ」


 アイテムの買取は入口からすぐの左手側のカウンター。素材アイテムの販売はその逆の右手側のカウンターで行ってると教えてもらった。


「そして、ユズリハ様のご希望であるレンタルスペースについて、ご説明をさせて頂きますね」


「お願いします」


 レンタルスペースは種類があり、《〇〇》専用個室(〇〇には生産スキル名が入る)と、オールマイティになんでもできる総合個室の2種類があるそうだ。

 専用個室の場合は、その使用するスキルで必要な器具や初級レシピが部屋に揃っており、1つの作業をする場合又はスキルのレベルアップをするにはオススメとのこと。

 総合個室は、その名の通り複数の生産系スキルを持っている人にオススメで、時間内でいろいろやりたい人はこちらへ。この部屋にも必要最低限の器具と初級レシピは揃っているそうだ。

 ただ、《鍛治》や《鋳造》などの大きな炉を必要とするものは総合個室では、作業が出来ないので、その場合は専用個室へお願いしますと言われた。


 その辺りは、今のところスキルを取る予定はないので大丈夫だろう。

 また、どの部屋も作業中に素材が足りなくなった場合、基本的なものなら部屋に置いてある素材Boxから購入可能で、それはとても助かるなぁと思った。


「…と、このような感じになっております。レンタルスペースをご利用の際は私にお申し付けいただければご案内致します。本日はこのあとに、ご利用なさいますか?」


「えっと、今日はまだ何も用意してないので、また明日以降にします」


「かしこまりました。ご利用お待ちしておりますね」


 こちらでもお礼を言ってから、商業ギルドを立ち去る。

 ちなみに、頂いた紅茶が美味しくて思わず購入(ティーセット込みで1000Gだった、安い)したので、ただ今の所持金500Gなり。

 ……あれ、おかしい、金策のためにとりあえずギルドに行ったのに逆にお金が消えていく罠。全ては商業ギルドで頂いた紅茶が美味しすぎたのが悪い、うん。





 そんなことを思いながら大通りを歩いていたら、リィンリィン♪とcallが届く。


【フレンド:ジンジールよりcallが届きました。callに出ますか? はい/いいえ】


 片手を耳に当て《call》と念じてジンからのcallにでる。


「もしもし? ジン、どーしたの?」


『あぁ、ソーンが復活したから、その連絡をな。ただ、本人は別のフレンドから、緊急案件で呼び出しくらって慌てて出て行ったが』


「あーそうなんだ、トッププレイヤーさんは大変だー」


 ジンも他人事のように大変だなぁとか言ってるけど、貴方もトッププレイヤーの1人だと思うんだけどな、私。

 とにかく、ソーンは急用で第2の街・ジトリまで向かったそうだ。詳しくは本人がメールを送ると言ってたとのこと。

 ジンとcallしながら、ログを確認する。あ、メール届いてるね。「申し訳ないっ!!!!」ってタイトルのがソーンからだな。


『この埋め合わせとお詫びは今度必ずするからって言ってたぞ。あと、メールはちゃんと返してやれよ?』


「うーん、別にお詫びとか気にしなくていいんだけどなぁ……あーうん、返信ね、早めにしとく」


 この後戻ってくるか聞かれたけど、流石にジンのところにずっとお邪魔してるのは悪いから断った。ジンも作業とかしたいだろうし、私も街をぶらつくのもいいかなって。

 そんな感じの返答をしつつ、お礼を言ってからcallを切る。

 ちなみに切る際に、再度ジンからちゃんと返信しろよ?と念を押されたけど、そんなに信用ないのか私。


 とりあえず、先にソーンのメールに返事をすることにした。

 内容は先程ジンから聞いた通りで、急用で第2の街・ジトリまで行かなきゃいけなくなったこと、案内するって言ったのに途中になったことのお詫び、あとは私が興味を持ちそうなお店や場所の情報が書いてあった。

 おお、最後のはありがたい。美味しいケーキのお店とか、お金増えたら行こう(今は金欠、無理、我慢)


 返信には私は気にしてないので大丈夫、お詫びは貰った情報で十分、それでも何かしらお詫びがしたいのなら、今度素材集めでも手伝ってくれって感じの内容を送っておいた。



「さぁて……これから何しようかなぁ」


 そう呟きつつ、時計を確認。今の時刻は17:00。なるほど、結構時間が経ってた……どおりで眩しくなくなってきたなって思ったよ。

 確かこの世界は18:00ぐらいに日没となる。夜の方が敵が強くなるけど、種族特性を試すチャンスかな。ただ、回復アイテムが今の手持ちじゃ心もとないから、買いに行かないと。ついでにクエスト受けてこようかな。

 さて、日没までにまだ時間がある。その間は、街を少しぶらぶらしよう。


 候補としては①教会に行く、②図書館に行く、③街の市場に行く、の3つかな。


 ①の教会に行くのなら、チェシャが言ってた『ゲーム内の時間帯と逆の時間帯で活動したい場合』の方法と、チュートリアルでもらった『森狼の心魂』についてを聞きに行こうかな。

 あとはソーンが教えてくれた教会の神様の像に祈ると加護が貰えるっていうのを試すのもいい。


 ②の図書館に行くなら、この世界のことについて調べたり、薬草とか図鑑を見て採取に必要な知識を増やすのもありだな。

 これだと新しいスキルをゲット出来そうだし。まぁSPは余ってるけどね、使わずに手に入れられるなら時間かかってもそっちの方がいい、って思うタイプなので。あと本読むの好きなんだよね。


 ③はまだ寄ったお店が服屋さんとジンの店のみだから、他に何があるのかを把握しておきたいなと。

 冒険に必要なアイテムはギルドで買えるけど、普段そこに暮らす人たちが利用してるお店って気になるじゃない。穴場なところもあったりするし、あと街の市場ってなんだか心惹かれるし。


 とりあえずこの3つともだいたい同じ方角にあるので、街の中心にある噴水広場まで向かって歩き出す。


 この街は最初にログインした噴水広場を中心に大通りが東西南北に広がってる。イメージとしてはパリの街みたいな感じかな? パリは行ったことないから詳しくないけど。

 街の周囲は大きな壁に囲まれていて、北側に教会と図書館と貴族街、東側に港や市場、西側が住宅街と職人通り、南側は外に出る大門があり、ギルド関係はこの辺り、宿屋関係もこの辺りだ。門の近くには騎士団の駐屯所もある。

 ちなみに、最初に行ったお店は西側、ジンの店は南側だ。どちらも噴水広場からすぐの場所にある。



 どうしようか悩んでいたら、すぐに噴水広場ついてしまった。さて、本当にどうしようかな……



 ぐぅぅーーーーー



 そんなことを考えてたらお腹が鳴った。ハッとして周りを見たけど誰もこちらを見ていなかったのでセーフセーフ。

 そういえば、状態で『空腹』っていうのもあるって言ってたような。簡易ステータスを確認。



 名前:ユズリハ Lv.4

 種族:人間×幻影種・吸血鬼 種族Lv.1

 職業:ノービス 職業Lv.1


 HP:125/125

 MP:375/375


 状態:通常、空腹



 あーあー、なってますねぇ、空腹状態。

 空腹はステータスが10%減少して、時間経過で減少値が増えてくだっけかな? 最終的に『飢餓(きが)』になって動けなくなるらしい。

 そういえば、ゲームにログインしてから何も食べてないや。私、ハーフだから吸血してもお腹は満たされないからなぁ。


「とりあえず、何か食べよう」


 そう呟いてから、あたりをキョロキョロ見渡す。実はさっきから、美味しそうな匂いがしてるんですよ……。

 この感じだとこの噴水広場で出てる屋台っぽいから、何処だろ…? 辺りを見渡して匂いの元を探してみる。

 噴水広場にも色々と屋台が出ていた。今の時間帯だと食べ物系が多めかな? 昼間はいろいろあって、じっくり見てる暇がなかったから、わからないけど。ゆっくり歩きつつ、食べたいものを探そう。



 そして、ふと、目に入ったのは一軒の屋台だった。


 漂ってくる匂いは、醤油ベースタレの良い匂い。

 この世界に醤油があるかわからないけど、それに近い。

 近づいて何を焼いてるのか、のぞいて見たら美味しそうな肉の串焼きだった。なんの肉だろ? 勝手に鑑定するのはマズイよなぁ……。


「お嬢さん、買ってくかい? うちの串焼きは美味いよ!」


 突然、声を掛けられたのでびっくりして顔を上げる。

 声を掛けてきたのは、小麦色の肌に赤髪のがっしりとした身体つきの女性だった。豪快な雰囲気で、姉御ぉ!!って呼びたくなる感じだ。

 突然だったから、何を言って良いかわからなくてどもる。


「あ、えっと…その…」



 ぐぅぅーーーーー



 そして、鳴り響く私の腹の音。

 は、恥ずかしい……



8/5修正:主人公の性格的に矛盾してた行動を修正。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ