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12.不可抗力です、不可抗力だってば

フルタイムでお仕事してたら

続きを書く暇と更新ができなかった…(´・ω・`)

今回もまた少し長め。

 

「ほんと、相変わらずだな、ユズリハ。あー笑った笑った」


「それは褒められてるのか、貶されているのか微妙な感じなんだけど」


「褒めてる、褒めてるって、ははっ!」


 そうジンは言うと、私の頭をポンポンと軽く叩く。身長差が40㎝ぐらいあるから、頭に手が置きやすいとか言われた、解せぬ。


「おっと、いけない、話が逸れたな。出来上がりは…量があるからリアルで3日ぐらい掛かりそうだ。その間はクエストとかやって時間潰しといてくれ」


「ん、りょーかい。まだ冒険者ギルド行ってないし、街も全部見てまわってないからのんびり、ぶらぶらするよ」


 私がまだギルドに行ってない事にジンが驚いてたので、ログインしてからの経緯を簡単に説明。

 そうしたらジンからも心配されたし、何かあればすぐ連絡寄越せ、いざとなったらここに駆け込んでこいって言われた。ちなみに、ソーンもジンの言葉に、うんうん頷いて、そうしろって言ってた。

 私の周りはちょっと過保護すぎやしませんかね?? ありがたいけど。


「本当に困った時は助けてもらうよ、ありがとう」


「そう言う奴ほど、そうなった時こねぇけどな」


 ボソッとソーンが呟いてたけど、私、知らなーい聞こえなかったぁーっと。まぁ、2人の厚意に感謝してるので、本当に困った時には頑張って頼ろう。


「そういえば、ソーン。掲示板はもういいの?」


「あ? あぁ、お前の情報投げたら、すごい事になってたけどな……」


 ソーンはとても遠い目をしていた。

 うん、ごめんね、ありがとう。そういうのがめんどくさいから、書き込みたくなかったんだよね、うん。

 ちょっと気になって、その掲示板をそっと覗いてみたら「吸血鬼ちゃんハァハァ…」やら「吸われたい…がっつり吸われたいぃ…」などが目に入って、そっと閉じた。うん、へんたいさん、多いのかな?かな?


「掲示板? もしかして種族掲示板か?」


「そう、それ。本人やらないって言うから、ユズリハの種族とキャラメイク時に出したっていうレア種族の情報投げたら……反応すげぇの…」


「確かに、βテスト時にNPCではいたが、プレイヤーで幻影種・吸血鬼はいなかったからな……」


「ハーフってだけでも反応ヤベェのよ…そのNPC、伯爵の影響で同じのになりたい!って奴多かったし……」


 なんかジンとソーンが気になる話をしてるけど…それについては後で聞こう。2人の会話を聞きつつ、ちらりと自分の簡易ステータスを見る。



 名前:ユズリハ Lv.4

 種族:人間×幻影種・吸血鬼 種族Lv.1

 職業:ノービス 職業Lv.1


 HP:125/125

 MP:375/375


 状態:通常、渇き(小)



 状態のところに『渇き(小)』の文字。掲示板を見ていて、ふと思い出したんですよね。

 あーやっぱりかぁ。なんか喉が渇くなぁって思ってたら……ということで、早速協力してもらう事にする。


「ねぇ、ソーン。ここ来る前に協力してくれるって言ってたでしょ?」


「あー…そういえば、そんなこと言ってたな。それがどうし……」


「血、吸わせて」



「はあぁあっ?!?!?!」


 何言ってんだ!って感じで頭をスパーンッ!と叩かれた。痛い。ソーン、めっちゃすごい顔してるし、なんか焦ってる。ジンも唖然としていた。


「痛い……ソーンが無理ならジンでもいいよ。ジンも人間でしょ?」


「確かに俺の種族も人間だが……ユズリハ、まずはどうして血を吸うのか説明してくれないか?」


「ほら、私、ハーフでも吸血鬼だから」


「説明になってるようで、なってねぇーよ!! ってか、なんで今なんだよ」


 そうソーンに言われたので、2人の前にステータス画面を投げる。そして、状態の部分を指差しつつ、ついでに説明も開いた。



『渇き(小)』

説明:のどがかわいた状態。特定のアイテムか方法でしか解除できない。(小)なので影響はないが、悪化していくと理性が朦朧とし、見境なく周囲を襲い始めるので早めの回復を。



 ついでに、種族とスキル《吸血・人間》の説明もぺたりする。



《人間×幻影種・吸血鬼》

説明:人間と吸血鬼の混血。比較的見目麗しい者が多い。身体的特徴は人間寄り。定期的に血を摂取する必要がある。


《吸血・人間》

説明:時々襲う喉の渇きは人間の血でしか癒せない。拒絶された相手又は同性への吸血不可。過剰に摂取した血はHPやMPの回復に利用できる。スキル《吸血・人間》自動取得




「というわけで、この状態だから、吸血が必要なの。実際に噛み付いて血を啜るってわけじゃないから安心して?」


「……とんでもないスキルだな、おい」


 いろいろ見せたから2人は絶句して固まっていたけど、いち早く復活したのはジンだった。


 ジンの言葉に同意する。それな、ほんとそれな。拒絶された相手への吸血不可はわかるけど、なんで同性への吸血不可なんだよっていう。ここら辺は、開発組のこう強い、性癖的なのが見え隠れしてる気がするぅ……。


「その意見には同意。一応、スキルを使わなくても回復できる救済処置はある。ただお金が掛かるから」


 異性に対してスキルを使えない人用に、もちろんちゃんとした救済処置はある。

 チュートリアルで教えてもらったけど、条件をクリアしてる者に対しての限定販売で、各ギルドで1つ500〜1000Gぐらいで『〇〇の血』(〇〇には種族が入る、種族によって値段が変わる)っていうアイテムが購入できるようになってるそうだ。

 それを飲めば、このバッドステータスは回復できる。

 ただ、この特殊アイテムには《鮮度》という特殊項目があって、時間経過が関係ないはずのインベントリに入れてても、時間経過の影響を受けてしまうのだ。《鮮度》が高くないと渇きはすぐ回復しなくて、大量に飲まないと回復しないので、アイテムはすぐに飲めって感じだ。

 ちなみイチゴorトマトジュース味となっており、ちゃんとゲーム仕様なので問題なく飲める。



「それで回復してもいいけど、もしもの時のために、スキル使って慣れといた方がいいかなって思って、ダメ?」


「うーん……しょうがない、俺は別に構わないぞ」


 そう聞けば、ジンは困ったように笑ってから許可してくれた。流石ジン、話がわっかるー。

 って事で今度はソーンを見る。何やら意識がどっかに飛んでるみたいなので、顔の前で手をヒラヒラさせたり、頬をペチペチ叩いてみたりした。


「ソーン、ソーンは協力してくれるの? おーい、戻ってこーい」


「っ!!!! ちょ、わかった!わかったから頬を叩くな!やめいっ!! 」


 ガシッと手首を掴まれて動きを止められた。強く叩いてないじゃんかーそんなに焦らなくてもいいと思うって言ったら、頭をスパーンッとまた叩かれた。ひどい。

 ちなみにジンを見れば憐れみを強めた表情でソーンを見ていた。


「で、ソーンは協力してくれるの? ジンはいいって」


「ジン!お前許可したのかよ?! なんで!!」


「血を直接啜るわけじゃないそうだから、グロいことにはならないだろう。あと普通にどんなんか興味がある。そしてソーン 、お前はいろいろ思うことがあるだろうが、ここは諦めて、ユズリハに吸血されとけ」


 ジンにそう言われて、あーうー唸ってるソーン。さっき協力してくれるって言ったくせに、こいつ…。煮え切らない態度に、イラっとしてニッコリ笑いつつ言い放つ。


「……ソーン、スキル《魅了の瞳》使って無理矢理、魅了状態にしてから吸血することもできるんだけど?」


「お手伝いさせていただきますので、魅了はやめてください、まじでやめてください、魅了状態は怖い」



 ソーンさんや、魅了状態に何かトラウマが…?


 そう思って、ジンを見ればジンも遠い目をしながら、明後日の方向を向いていた。お・前・も・かっ!

 あまりこのことについては、触れちゃいけなさそうなので、ここはスルーしておこう。とりあえず、2人から許可はもらったし。


「って事で、今近くにいるのでソーンからにしようと思うけどいい?」


「もう、好きに、してください……」


 どこか諦めた表情でいるソーンの手を取る。そして、スキル《吸血・人間》の使用対象に選択。ソーンが何やら操作をする。どうやら、使われてもいいかの確認ログが出たみたいだ。

 すると私の方にもポンとログが出た。


【ソーンテイルに対して《吸血・人間》を使用しますか? MPを20使用します。 ※使用条件クリア済 はい/いいえ】



 迷わず、はいを選ぶと私はソーンの手の甲に口付けた。




「っ!!!!!」


 ソーンの驚く気配が伝わってくる。

 思わず手を引っ込めようとしたソーンの手をさらに強く握ってから、口付けた格好のままじっと、動くなと睨みつける。ソーンと目が合うと、彼はうっと動揺した顔をした後、動かなくなった。うん吸いやすくなった。

 ちなみに、ちらりとジンを見たら、さっきよりもさらに憐れみの強い眼差しでソーンを見ていた。なんでそんな表情してんの、ジン?  分からん。



 ぶっちゃけどの程度、吸えばいいのか分からないんだよね。

 チュートリアルでは、やり方や特殊アイテムの販売場所とかの説明は受けたけど、そこでもチェシャに「あとはやってみて感覚を覚えるしかないねぇ〜」とか言われた。それから相手の顔色見つつ使いなよ、吸いすぎ注意!って言われたなぁ。


 ふと、ソーンの手がプルプルし始めた。

 ちらりとソーンを見ると、空いてる手で口元を押さえ顔を赤らめて何かに耐えてる様子……その見た目で、それは、いろいろとやばい気がするよ、うん。ここでやめといた方がいいと、本能的に思った。喉の渇きも治ったから、きっと回復してるだろ。


 口付けをやめて、パッと手を離す。

 すると、ソーンは途端にズルズルとその場に座り込み頭を抱え出した。あーーやら、うーーやら唸っている。


「ソーン、大丈夫?」



「だいじょばない……むり…まじ、むりぃ……」



 あー……これは吸いすぎたって感じ?

 ごめん、これに関しては、本気でごめん。



「ユズリハ、しばらくソーンはほっといてやれ。それより、状態はどうだ?」


 ジンにそう言われて、自分のステータスを確認する。



 名前:ユズリハ Lv.4

 種族:人間×幻影種・吸血鬼 種族Lv.1

 職業:ノービス 職業Lv.1


 HP:125/125

 MP:355/375


 状態:通常



 うん、治ってる。MPは使うときログに書いてあった通り、20減ってるけど、これぐらいならすぐ自然回復する程度なので問題ない。ただ、戦闘中に関しては、これはちょっと使えないかなぁって印象があるけど。


「うん、治ってる」


「そうか、で、俺にも吸血使うか?」


 ジンがソーンをちらりと見ながら聞いてくる。私もソーンを見る。相変わらず蹲ってあーうー唸ってる……いつ復活するんだろ、これは?って感じだ。


「うーん…やめとく。渇きは回復したし、MP勿体無いからジンはまた今度でいい?」


「おう、構わないぞ。必要になったら言ってくれ」


「うん、ありがとう。あ、そういえばこのスキル、種族特性だから掲示板に書いた方がいいんじゃない?」


 そう私が問えば、ジンは困ったように、あーと言ってから


「その辺りの判断は、ソーンに任せとけばいいんじゃないか?」


「そうだね、そうしよう」


 というわけで、よろしく、ソーン。と丸投げすることにした。




今回一番の被害者はソーン。

たまにソーンも暴走するけど、ソーンは大体ユズリハにこんな感じに振り回されてます。

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