8/20
金票師早川
将軍は剣を手に取り庭に出た。鞘から剣を抜く。
早川は縄をほどかれ庭に押しやられた。
「構えんのか?」将軍が言う。「これで結構」早川が答えた。
両者が対峙し静寂の中、庭にびんと張り詰めた気が流れる。
「ヤッ」将軍が剣で突いた瞬間、早川が抜刀し、両者の刃が触れて止まる。
「ウム、出来る」そう言って将軍は剣を鞘に収めた。早川も刀を鞘に収める。
「その腕と武器を我々に貸して貰いたい」
将軍の意外な言葉に早川は戸惑いの表情を見せた。
「取り敢えず明日、隣街まで荷を運ぶ仕事がある。その護衛をして貰いたい」
「隣街に行くには普遠山を越える必要がある。だが、ここは山賊の住みかになっている。結構厄介な仕事だ」
早川は答えた。
「わかった。引き受けよう」
将軍は笑みを浮かべ
「よし決まった。今夜は宴会だ。酒と料理を用意しろ」と命じた。