ヒホンジン、異世界ライフ中3
えーと、あの〜なんで私、こんなゴージャスな方々とお茶を飲んでいるんですかねぇ。
天井がそこそこ高くて採光が良いように天窓があるのに優美な金属の飾りが強化ガラスを彩ってる完璧に防御力重視だと思います。
その下のシャンデリアさえたぶん戦闘時に足場とかに使えるように頑丈なんだろうなぁと思うのはかなり傭兵ギルドに毒されてる証拠だとおもうよ。
いぶし銀のような加工をされた凝った脚のテーブルに同じ細工の脚のソファーのセットは王宮の豪華な部屋にぴったりです。
でも、なんで場違いな私がヒフィゼ部屋群の応接室になんぞ呼ばれたんでしょうか?
向こうでの面接だってこんなに緊張しなかったよ。
「イェット、女性の趣味ぶれませんね」
黒い長い髪を結い上げかんざしを3つに金のサークレットをつけた水色の瞳の親しみやすそうだけど侮れなそうなどこか筋肉中年王子に似てる可愛い中年女性が私を観察してる。
あーたしか、さっきリエスディアです、不肖の弟がお世話になってまーすと元気に挨拶された……女王陛下だよね? この国だと国王陛下だっけ?
「胸が豊かな小柄な娘がお好きなんですわ」
こげ茶色の巻毛を結ったゴージャスな初老の美女が目を細めてガラスのグラスに注がれた紅茶シロップ、違う、お茶を優雅に口に含んだ。
えーとたしかノーラミフィエさんのお母上のジャスミナ様とか聞いた気がする。
ノーラミフィエさんに仕事帰りに拉致られました。
よってお茶会? と言っても夕方で赤い空が徐々に暗くなってくるのをなぜか見上げて現実逃避しちゃいました。
「お母様、茉莉はお胸だけのあの女と違いますわ」
働き者なんですわとノーラミフィエさんがにっこり笑った。
お胸だけのあの女っていうのがアレか、なぜか名前が出で来ないあのアキュア女性、ガイウスちゅんの母親らしい人のことか……
くだんの被害者ガイウスちゅんの父親にはまだ会ったことないんだよね。
なんでそんな人の元嫁でこんなに絡まれにゃならんのさ〜
「外国人が嫌いなあなたが入れ込むなんて」
ジャスミナ様が口元に手をやってコロコロと笑った。
「茉莉が働き者すぎるのが行けないんですわ、イェティウス殿下の腕の中からすぐに出てきてしまってハラハラしてしまいますの」
ノーラミフィエさんが子供みたいに頬をふくらませた。
うーん、美女がすると破壊的に可愛いすぎる。
私はどこでも小動物扱いですか? 腕に抱かれてキューキューいってる小型ワンコ?
抱いてる人も大型ワンコとかいわれてるし、もう、働いてるんですけど……まあ、超お世話になってるので文句は言えませんけどね。
「働き者さんなのはいいことですね」
ニコニコとリエスディア国王陛下がシフォンケーキにハチミツソースをかけながら鋭い眼差しで私を観察してる。
でもイェットは異世界人相手だから我慢してるのですねとリエスディア国王陛下がつぶやいたのを聞いちゃったよ。
ああ、先立つもんがほしい、やっぱり居候迷惑だよね。
傭兵ギルドって独身寮とかないのかなぁ?
「ご迷惑おかけして申し訳ありません」
私はソファーから深々と頭を下げた。
「……迷惑だと思うのでしたら」
「はい、頑張ります」
細められたジャスミナ様の瞳に少しふるえながら膝で手を組んだ。
なんか迫力美女こわいよ~
お母様、茉莉を威嚇しないでくださいませ〜
あら、異世界人なんですもの、きちんと覚悟を持っていただかなければ。
美しい美女親子が言い合ってる脇で黒髪の可愛い国王陛下が幸せそうにシフォンケーキを頬張ってる。
えーとつまり、イェティウス殿下にあんまり迷惑かけずに早々に自立しろってことだよね。
「マツリちゃん、パティスリーイシカワのシフォンケーキ美味しいですの」
どうしようかなと思ってたらリエスディア国王陛下がちょこんと隣に来てシフォンケーキをわざわざ皿に取って進めてくれた。
ちなみにハチミツソースはかかってない。
「ありがとうございます」
「イェットをよろしくお願いしますね」
はいと答えるとリエスディア国王陛下は安心した顔をした。
筋肉中年王子殿下が小動物にかまけてお嫁さんを見つけられないなんてことにならないように気をつけます。
このシフォンケーキ美味しい、甘過ぎない……でもハチミツソースをかけると甘いんじゃ……そういや超甘党のお国柄でしたね。
「そういえばノーラちゃん、ギアリウスさんとの仲はどうなってるんです」
好奇心いっぱいの眼差しでリエスディア国王陛下がノーラミフィエさんを見た。
「あんな男……知りませんわ〜」
「また、何かありましたのね」
ジャスミナ様がため息をついた。
あのたわわ好き男〜だから私が不安になりますのよーとノーラミファエさんが拳を突き上げた。
ノーラちゃんスレンダーですからとのんきに紅茶シロップに更にハチミツを加えて混ぜてる国王陛下。
あれにハチミツって甘いんじゃと思いながら紅茶を飲むとなんか無糖だった。
優美なお茶セットから砂糖瓶を取って綺麗な薔薇の角砂糖を2つ落として優美な銀のティースプーンで混ぜてると視線を感じた。
「律様と違いますのね」
ジャスミナ様が砂糖瓶を持つ私を不思議そうに見た。
いや、伝説の賢女な異世界人と比べられても困るんです。
「お母様より胸があります」
リエスディア国王陛下がはいっと手を上げた。
「リエスディア陛下の退位式とメリリノア殿下の即位式とかパーティとか色々準備がありますわ」
ノーラミファエさんが指をおって数えた。
時間がありませんわね。
そうですね。
三人が不穏な目で私を見た。
「頑張ります? 」
私は精一杯愛想笑いを浮かべた。
お世話になってるし裏方をお手伝いくらいいくらでもしますよ。
約束ですわ〜さっそくギルドの事務職をおど……いえ協力してもらって時間を作りますわとノーラミファエさんがウキウキ通信機を出したと思えばジャスミナ様とリエスディア国王陛下は肩を寄せ合って通信機を立ち上げて何か相談してる。
あの、出来る範囲でしかてつだえませんよ。
もう、夜だと空を見上げた。
〜で、すぐに〜
大丈夫で〜
なんか部屋の外がうるさい荒々しい足音が聞こえて扉が勢い良く開いた。
「茉莉! 」
金の髪を振り乱して美丈夫が……筋肉中年王子殿下が怖い顔で足早に入ってきて私をソファーから抱き上げようとして剣をリエスディア国王陛下につきつけられた。
い、いつの間に剣抜いたんですか? さすが傭兵国王陛下です。
「イェット、女性限定のお茶会に乱入とは不粋です」
「そうですわ」
ジャスミナ様が小刀をかまえてリエスディア国王陛下に同意した。
「姉上様! 茉莉を返していただきたい! 」
イェティウス殿下が大っきい金属製の扇を腰から抜いて構えた。
あーたしかバトルファンとか言うやつだよね、事務のガリアンさんももうちょっと小さいの持ってた。
「マツリちゃんはものではないのです! 」
なぜかノリノリにリエスディア国王陛下が素早くソファーを立ち上がって剣で切りかかった。
イェティウス殿下が身体をひねってバトルファンで受ける。
金髪が数本剣に切られて明かりに煌めいた。
えーと、真剣で姉弟ケンカ? しないでほしいです。
「私、ごときのことで姉弟ケンカしないでほしいです」
ソファーを飛び越えたり壁を蹴って飛び上がって攻撃したり激しさをます二人はとっても楽しそうだけどさ。
棚に置かれた馬の置物がリエスディア陛下の手刀で飛んでガシャンと音を立てて割れた。
こわい、でも見ないとだよね、原因は私だもん。
というか誰か〜止めてくださーい。
かしゃんと音がしてイェティウス殿下の飛ばした細い小さな剣がテーブルのグラスに当たった。
高級感あふれるグラスは紅茶シロップを溢れさせながらキラキラと割れ破片を飛ばし、ノーラミフィエさんがとっさに私をかばってくれた。
危ないですわと叫ぶノーラミフィエさんを制してジャスミナ様が立ち上がって小刀を投げた。
小刀は部屋を縦断して身体をそらして避ける姉弟の向こうの壁に刺さった。
姉弟の動きが止まってこちらを見た。
「頭は冷えたかしら、大事な人をおびえさせてきがつきませんの? 」
妖艶に口角を上げる初老の美女に背筋が寒くなって思わずノーラミフィエさんにしがみついた。
大丈夫ですわと私の頭を撫でるかたわらで固まってた姉弟が動き出した。
「茉莉、大丈夫ですか」
「ジャスミナ叔母様ごめんなさい〜」
イェティウス殿下はこちらに慌てて駆け寄りリエスディア陛下は楽しくて思わず〜とジャスミナ様に頭を下げた。
グーレラーシャの男ってとノーラミフィエさんがため息をついて腰の鞭に手をやった。
イェティウス殿下とノーラミフィエさんが呼びかけたところでまたまた、乱暴に扉が開いた。
たぶんグーレラーシャの蝶番は超丈夫なんだろうなぁと思いながら乱入者に意識を向けた。
「ジャスミナ、私は限界だ」
赤毛をグーレラーシャ人らしい一本三つ編みをした茶色の瞳の比較的引き締まった系の筋肉質の美形初老王子っぽい人……イェティウス殿下によく似てる男性が足早に部屋に入り妖艶初老美女ジャスミナ様に抱きついた。
まあ、ノルディウス様、限界ですのとジャスミナ様は余裕に男性の頬をなでてる。
「リディ、いい加減に帰んねぇか? 」
その後ろからゆったりとオレンジ色髪には白髪が混じりしかも短い……がっしりとした……間違ってもおじいちゃんとか呼んじゃいけない男の色気たっぷりの老年のオレンジ色の瞳のでっかい男性が歩いてきてリエスディア陛下の隣に来て頭をなでた。
えーと誰? すごく甘い声でリエスディア陛下がラース様〜と抱きついてるけど……
お父様のノルディウスとリエスディア陛下の伴侶ラーガラース様ですわとノーラミフィエさんが私をちらっと見て教えてくれた。
「茉莉、帰りましょう」
いつの間にか筋肉中年王子殿下が近くに来て抱き上げようとしたので逃げた。
「歩けます」
「茉莉〜」
迷惑かけちゃいけないよね。
逃げるのとイェティウス殿下がなんか暗い目で私を見た。
やばいような気もする。
そんなに小動物が逃げるのが嫌ですか?
「イェティウス殿下もお疲れですよね、帰りましょう」
思わずイェティウス殿下の手を握った。
イェティウス殿下がびっくりした目で手を見て次の瞬間、とても嬉しそうに笑った。
イェティウス殿下が私の手の甲に、き、キスした。
よく見るとジャスミナ様はノルディウス様? にお姫様だっこされて首元にキスされてるし、リエスディア陛下はラース様? に抱きついて甘えてる。
下級貴族だから早々入れないのはわかりますわ……ギアリウスだけいませんのーとノーラミフィエさんが悲しそうにつぶやいてる。
「茉莉、帰りましょう」
柔らかくイェティウス殿下が微笑んだ。
はいっと返事をして手を引かれてあるき出したところで挨拶を忘れたことに気がついた。
「あの、今日はありがとうございました」
イェティウス殿下が手を離してくれないので振り向いてお辞儀をした。
「また、お招きしますわ」
「美味しいハニータルト仕入れておくのです」
「迎えに行きますわ」
美しい女性三人が口々に答えてくれた。
気に入ったみたいだなとラース様? がリエスディア陛下の頭をなでると可愛いのですと陛下がフニャと笑った。
可愛いのはおまえだとラース様がリエスディア陛下を抱き上げた。
うーん甘々だなぁとふと視線を上げるとイェティウス殿下と視線があって微笑まれた。
その顔をみたら安心してお腹が減った。
帰ろうと手を引っ張って部屋を出ておもった。
あれ? 私、もしかして……お腹が空いて飼い主を引っ張るおバカな小型ワンコ?
うーん、まあ、良いか、明日あたり事務の人とかに寮とかないか聞いてみよう。
いつまでも邪魔しちゃ、このきれいな筋肉中年王子の老後が心配だもんね。
私がずーと一緒に……居られないんだから、気立てのいいお嫁さんもらわないとね。
私みたいな庶民な小動物がいるとイェティウス殿下がいつまでも結婚できないもんね。
さっきから少しズキズキするんはお腹が空いてしょうがないからということにしておくんだ。
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m