黒猫軍師王子はお仕事中1
プロローグの茉莉が寝てる裏側の出来事ですヽ(=´▽`=)ノ
戦闘シーンあり←たいした迫力はありませんが……
柔らかい茉莉の身体を抱きしめる。
やはり、この娘は僕の……
茉莉の寝息を確かめていると足音が聞こえた。
いつでも起きられるように準備する。
「旦那、嬢ちゃんは寝たかい? 」
「ギアリウス、大丈夫です」
声をいくぶん控えめにかけてギアリウスがテントの仕切りを開けた。
あまり柔らかくない野営用の寝具と僕のマントにくるまって寝息をたてる可愛い不審者に思わず頬が緩む。
抱き上げたい、可愛いなんて衝動はいつ以来だ? ああ、『青の指揮官』殿に一目惚れして失恋してからですね。
腹筋を使って起きる。
相変わらず、わけーなとヒューっと口を鳴らしたギアリウスの音にうん……と茉莉が反応して思わず長年の相棒を睨みつけた。
幸い、彼女は起きずにそのまま僕のマントをかぶっただけだった。
怖ーとギアリウスがつぶやいてるのを聞きながらそっと寝床を離れた。
茉莉は茉莉花茶の茉莉だと彼女が言っていた。
ノーラミフィエの母君のジャスミナ叔母上と同じような名前だ、叔母上と同じく胸も大きい魅力的な体型をしている。
本当に柔らかい、いつまでもだきしめていたい。
僕は先代国王陛下、ウェティウス•グーレラーシャと異世界人で日本人、異世界の賢い黒ウサギと讃えられる、律•グーレラーシャとの間に生まれた長男で第二子だ。
今もグーレラーシャ傭兵国の国の仕事をしているので王子として扱われている、姉上リエスディア国王陛下に対して他国から呼ばれるのであれば王弟だ、もうすぐ姪のメリリノアがあとを継ぐから先王弟になりますけどね。
もっとも僕の一番有名な呼び名は『黒猫軍師』だ。
ファモウラ軍国との戦で一応、若い頃活躍したが……それも遠い過去だ。
ギアリウスは王国立傭兵ギルド所属の兼業傭兵で僕の長年の相棒兼側近だ。
本人は専業傭兵になりたいみたいだけど……王国立傭兵学校時代からの腐れ縁をいまさら断ち切らせる気はない。
テーブルのある方のテントに戻るとハナウルスと従姉妹のノーラミフィエが大型端末の前で何かを見ていた。
ノーラミフィエは僕の叔父上の末っ子で外務担当官長と傭兵ギルド管理官長の役目を担う大貴族、ヒフィゼ家の令嬢だけど専業傭兵をしていてなかなか複雑なんですよね。
長兄デシティウスも専業傭兵で次兄ジェアデオスは外務担当官長、叔父のハルリウスが傭兵ギルド管理官長をしていてデシティウスの息子ガイウスが次期ギルド管理官長らしいです。
デシティウスはギルド管理官長に一度ついたのですが、あの元妻と別れるゴタゴタのせいで……ああ、まあそれを考えるのはやめておきましょう。
まあ、あれがあるからノーラミフィエも外国人との恋愛には警戒しているんでしょうが……
「従姉妹殿、何か進展はあったのですか? 」
「イェティウス殿下、ファグレア組織の尻尾ならばなんとか……」
ノーラミフィエは大型通信機に地図を写して場所をしめした。
草原の小高い丘にアジトのテント群が、今はあるようですね。
もっともパイナ草原国の民は基本的に遊牧民なので移動して生活していますので次にそこにいるかどうか……
「戦争は生命を失いファグレアはすべてを喪うという格言を奴らは知らないのか」
いつも通り、ハナウルスが冷静に突っ込んだ。
この黒髪の男はノーラミフィエの相棒なのだが、無口の割に突っ込みがするどい。
それよりも一時の快楽なんだろうさとギアリウスが投げやりにいった。
ファモウラ軍国が敗戦し世界が前よりも平和になったといってもまだまだ紛争の種は残っている……ヌーツ帝国に反抗するオーヨ神聖有志団とか言うテロリストしかり、エナカ聖霊国とポスタ水操国の領地争いにカディナラス七宝国の秘宝が使われそうになったとか……
不安を消すように蔓延していく麻薬……グーレラーシャ傭兵国でも見つかる始末だ。
パイナ草原国と共同で麻薬組織壊滅を目指してしばらくいましたが……そろそろいったん帰国しないとです。
姪の国王陛下即位の儀も近いですし……茉莉も連れ帰らないとです。
「アマイモンくってりゃ解決なのになぁ」
「だからあなたは単純なんです! 」
あ~ハニータルト喰いてぇとぼやくギアリウスにノーラミフィエがポカポカ拳を打ち込んだ。
いてーやめろー。
と言いながらギアリウスがノーラミフィエを抱き寄せた。
本当に仲良しカップルめとハナウルスがぼやいた。
あの二人はできてるんですかねぇ。
僕もいつか……茉莉がいいですね、やはりグーレラーシャの男は本能で恋愛するんですね。
「ケーリィアスとヴィヴィアーヌからの連絡で組織が何かを探して慌しいとのことですわ」
もともと、草原の神タウティウ、雨を司り草を育てる神に捧げる香で神のお告げを聴く呪術者が酩酊し瞑想するためにファグレアをつかい貢物を捧げてたとか……
たしか古代アラリスーリ帝国の流れをくむと聞いたことがあります。
あの滅んだ古代帝国の技術はトスモル技術国をもってしても解明しきれてないとか……元オーヨ神聖王国の神殿にも古代アラリスーリ帝国のような文様が刻まれてたことを思い出した。
もっとも時代的に古代アラリスーリ帝国が滅んだあとのものらしいですけど。
ちびでも探しているんじゃないか?
そうかもなぁ〜ワハハとハナウルスのボケ? にのんきにギアリウスが応じた。
茉莉を探している? まさかな……
「冗談はさておき、一度、殲滅させるべきですわ」
「とりあえず、囲んでるのは潰しておくか? 旦那」
気が合いすぎる二人は薙鎌と槍を壁から持ち上げた。
ハナウルスも当然のように短弓に矢をつがえる。
僕も天鉱合金のバトルファンを腰から引き抜いてテントの壁を睨み付けた。
未熟だ……殺気を隠しきれてない。
「誰ですか? 」
声をかけると壁が大きく裂けて黒っぽい格好をした人物が数人飛び込んできた。
ギアリウスは円刀で切りつけた侵入者を槍で受けそのまま脇をつきノーラミフィエはもう一人の侵入者を薙鎌の柄でなぐりつけ
ハナウルスが矢を足元に打ち込んだ。
侵入者の親玉らしきものが円刀でハナウルスに切りつけようとして鞭で円刀を巻き取られる。
鞭なんてどこからとつぶやく親玉、隠し技のハナウルスを甘く見ないでください。
もう一人が何かをキョロキョロ見ているのにギアリウスが突きを入れてノーラミフィエが蹴りつけて床に倒した。
全体的に侵入者たちが攻めあぐねてるのを見とった。
「ここをグーレラーシャ傭兵国のテントと知っての所業か! 」
私はバトルファンで飛んできた短剣を弾いて叫んだ。
「……それがどうした……」
覆面でくぐもった声が聞こえ親玉が円刀を構え特攻をかけた。
ヤケかよーとギアリウスが相手をしていた侵入者をぶちのめしてハナウルスの鞭で円刀を奪った侵入者を絡み取り、ノーラミフィエは親玉を補助しようとする侵入者を薙鎌で切りつけ、僕は親玉にバトルファンを投げつけた。
親玉の鼻から血が出る。
ニヤリと目が笑ったのが見えた。
かすかに調査で嗅ぎ慣れた香りが隣のテントからし物音が聞こえた。
親玉を蹴りつけて慌てて茉莉の眠るテントに入ると麻薬の香玉をいくつも首に下げた呪術者風の侵入者が装飾的なきらめくナイフで茉莉の首筋を切ろうとしていた。
針剣を髪から引き抜き呪術者に投げつけた。
狙い違わず腕に刺さり呪術者がナイフを取り落とした。
「イダイな……我が主の……ササゲ……」
どこかトランスに入った草色の目に少し恐怖を覚えた。
何処かで見た……狂信者の目だ。
たとえ自分が死のうと必ずやり遂げようとする。
僕は茉莉をマントごと引き寄せた。
「……カエセ〜」
呪術者が針剣を刺さったままの手を伸ばす。
茉莉を抱えて後ろに行く。
テントの裂け目からカーキ色だらけの覆面が入り込み呪術者を後ろからの引き釣りだし横に抱えて逃走した。
茉莉を抱えたまま裂け目から出ると待機させてたらしい馬で逃げ去る一団が見えた。
ササゲ……
導師、逃げますという声が聞こえた気がした。
サワサワと草原が月夜に揺れ麻薬の香がかすかに香った。
「うわー、備品請求面倒くさ〜」
「そんな場合じゃないですわ」
隣のテントを覗くとギアリウスがテントの裂け目になげいてノーラミフィエにバシバシ背中を叩かれている。
もちろん中もめちゃくちゃだ。
グーレラーシャの軍用テントを襲った以上捕まえたら尻毛をむしり取るまで請求されるだろう。
追跡符をつけてあえて逃したらしいハナウルスが早速、大型通信機の地図画面を立ち上げてみている。
そんな騒がしい中でも眠る茉莉を心配して覗き込むと規則的な呼吸音に安心した。
特に怪我もないようだ。
一人くらい捕まえて金品むしり取りゃ良かった〜と叫ぶギアリウスにそれよりも後々、財産全没収すればいいのですわとノーラミフィエが応じた。
本当に仲がいいですが……今、茉莉が身じろぎしました。
「うるさい、静かに」
冷ややかに告げると二人は口をつぐんだ。
「やはり、例のアジト方面に向かうようです」
ハナウルスが地図を示した、移動する黄色い点は確かにアジト方面に向かっている。
「ケーリィアスにアジトの確認を、ヴィヴィアーヌには逃走組の偵察を」
「わかりましたわ」
ノーラミフィエが通信機を取り出して緊急コードメールを打ち込んだ。
「ギアリウス、強力時空接着剤でテントの補修及び本国に帰国申請を……軍用テントの請求も頼む」
「旦那〜、俺はなんでも屋ですかー」
専業傭兵になりたいのにーとぼやきながらもギアリウスは明正和次元製の強力時空接着剤を時空倉庫から取り出して隣のテントからなおし始めた。
ギアリウスは優秀だ、だから君は専業傭兵になれないんだよと思いながら温かい茉莉を抱きしめた。
最終武器の針剣を引き抜いた時に乱れた三つ編みを結い直すのもめんどくさいので根本の髪留めを取った。
「殿下、ケーリィアスは移動中、ヴィヴィアーヌ、逃走組を目視」
ノーラミフィエが緊急コードメールを読み上げた。
ハナウルスが地図上に二人のマークを表示する。
さて、どうに調理しますかね。
「旦那〜隣のテント補修済んだぞ」
ギアリウスが顔を出した。
茉莉をだいて中に入り寝床におろした。
今日あったのに離したくないなんてどうかしてると思いながら茉莉の柔らかい胸元に顔をうずめた。
このまま、あなたを抱きしめていたいですが……
グーレラーシャ傭兵を襲撃したバカをなんとかしないとですね。
名残惜しく思いながら元のテントに戻った。
「情報は? 」
「ケーリィアスよりアジトは移動、ヴィヴィアーヌより逃走組は新たな集団と紛れたとのことですわ」
ノーラミフィエは緊急コードメールをみながら爪をイライラかんだ。
今度の襲撃は計画的だったわけか……
「ケーリィアスよりアジト跡に煙と供物と魔法陣らしきものを発見」
「案外、嬢ちゃんの異世界召喚のあとだったりしてない」
汗だくでテントを直したギアリウスが軽口をたたきながら入ってきた。
他部族と合流人数増えてますとハナウルスが大型通信機を見せた。
なるほど……一理ある、しかしこれだけ人数が多いと厄介です。
ひとまず帰国して傭兵人数増員をパイナ草原国と協議したほうが良いですね。
「ある程度情報が集まったらケーリィアスとヴィヴィアーヌに戻るように伝えなさい……少し休みます」
体力温存は必要と言い訳をして隣のテントに戻り茉莉を抱き込んだ。
なんでこんなにも惹かれるのだろう。
僕もグーレラーシャ男と言うことだろうか?
きっと茉莉を僕のすべてで求めてしまう。
護るから僕の腕の中にいてほしいと思いながら目を閉じた。
あれだけさわいでどうして起きないのか?
本当にどうしてなんでしょうね(;・∀・)
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m