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小動物な異世界人は傭兵王子殿下の腕の中?〜ただし殿下は中年美丈夫です〜  作者: 阿野根の作者
第一章 小動物ヒホンジンは中年美丈夫殿下に保護されました
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 プロローグ 妖精国でなく傭兵国に落ちました……筋肉だらけです

小説家になろう投稿5周年記念作品です。

 暗い、暗い、暗い……さっきまで明るい室内で王道の恋愛ファンタジー小説を読んで、トイレに立って部屋に寝に帰ろうと階段に足を一歩かけた所はずなのに……


 どこにも階段は無く見上げると薄雲がかかった夜空に三日月が細く光っていた。


 ここはどこだろう? 誘拐? それとも記憶喪失?

 着ている服を確認すると記憶通りのピンクのうさぎの耳の帽子がついたパーカー型のパジャマにセットのズボンだった。


 記憶喪失……誘拐? それにしてもわざわざ気に入ってキャロットで通販で買ったパジャマを着たままで拘束もされずに立ってるなんてことないよね? たぶんだけど……


 これからどうしようとあたりを見ると風が吹いて寒気がして思わず自分の肩を抱きしめた。

 

 どうして私、外にいるんだろう?


 不安に思いながら辺りを見回すと、どこかで光が見えたに気がした。



 怖い……でもこのままじゃ……もう一度目を凝らすと光が見えた。


 どうしよう……でもこのままでいても……

 

 行ってみよう……このままここにいても怖いし。

 

 一歩踏み出すと足に草が触れた……痛い……素足に刺さる小石と草の感触に思わずつぶやく、ひ弱な現代人に裸足はきつすぎるよ。

 

 せめてスリッパ履いてれば良かったけど……

 そう思いながら、光の元へ一歩、また一歩とあるき出した。

 

 

 何分歩いたんだろう? 光の正体が見えてきた。


 テントだよ〜なんか国防軍が災害救助とか訓練とかで使ってるのテレビで見たことあるようなの〜


 大型のテントに電気らしい明かりが軒先にいくつも灯っている。

 

 いつの間にか外に連れ出された……と言うことではないことにその前で槍を振っていた人の衣装で気がついて動悸が少しした。


 やっぱり見たことがない服着てる……少なくとも故郷ではないよ、テレビなら……ファンタジー系の映画なら……見たことがあるような無いような……


 槍を振ってた赤毛の男性は私に気がついたようで近づいてきた。

 後ずさりかけて足がもつれて倒れそうになった。


 「あ〜、嬢ちゃん、どっからあんた湧いて出た? 」

 筋肉たっぷりの赤毛の一本三つ編みの中年男性がささえてくれてきいた。


 長い赤毛、三つ編みの民族衣装テイストのファンタジー軍服っぽい格好の一見、人が良さそうな男性に警戒した方がいいんだろうけど……なんか信じらないくらい異世界テイストだと人間笑いたくなるんだなぁと思った。


 それにしても筋肉、きんにく、キンニク……なんでこう、私の周りは異世界トリップらしきことをしても筋肉男だらけなんだろう?


 エルフとか妖精とか線の細い系の理知的な美青年さんとか出てこないのかな?


 私のような平々凡々のセミロングの黒髪に茶色の目の女なんか相手にしないんだろうけどね。


 「何かありましたか? 」

 「おお、旦那、良かったぜ」

 テントの入り口が開いて長身の……やっぱり中年男性が出てきたよ。


 美しい金髪は一本三つ編み、水色の瞳の美形王子と呼んでいいほどなのに、細マッチョ、筋肉ついてるよ。


 赤毛おじさんが金髪筋肉中年王子に暗やみから突然出てきたと私の肩を持ったまま説明している。


 金髪筋肉中年王子はファンタジーの軍服みたいな黒い詰め襟長袖で裾が長くて前スリットでズボンで上に同色のマントに額には幅広の銀のサークレットだ。

 

 赤毛筋肉さんともう一人黒い髪の弓を背おった筋肉おじさんの民族衣装テイストのファンタジー軍服みたいな同型の格好だけどマントしてないし色もカーキとか灰色で明らかに中年筋肉王子? の格好は上質だよね。


 「美形王子様なのに……中年だけど、筋肉……」

 私は現状も忘れてつぶやいた。

 嬢ちゃん、のほほんなふりして実は鋭いんじゃ……

 赤毛の筋肉おじさんがポリポリと頬を指で掻いた。


 「黒い髪に茶色の目……母上様のようにパジャマで……」

 「間諜とかじゃないと思うが……」

 筋肉中年王子が顎に指をやった、なんで色気を感じるのでしょうか? 私、精神状態おかしいからだよね。


 間諜ってスパイのこと? 館長とか干潮とかじゃないよね……赤毛おじさんから離れようと少し動いて足の裏の痛みに眉をしかめた。


 少し痛い、やっぱりスリッパはいてればよかったけど……現代人に裸足はきついよね。


 腕組みした筋肉中年王子様? が気がついた様に私の足元を見てまゆをひそめ私の前まで来た。


 「裸足なのですか? 」

 「あんまり、靴下とかスリッパとか好きじゃないんですよ」

 そういう問題かよ〜とつぶやく赤毛筋肉さんをよそに

 長身な彼に視線を合わす為に顔を上げたそうですかと中年筋肉王子様が身をかがめ……


 「あ、あの〜」

 「暴れないでください」

 何故か抱き上げられた、立て抱きされた~お、男に~。

 わーんながいまつげがよく見え過ぎだよー。

 旦那〜それやばいですぜ〜と赤毛の筋肉男が顔に手を当てた。

 「小さい傷が命取りです」

 なんか背中をポンポンされた。

 子供じゃないよ〜。


 旦那〜その嬢ちゃんはまだ不審者〜という赤毛男さんの声とまあまあ、デンカもまだまだ現役なんだし、小娘に遅れを取らんよとなだめる知らない声、黒髪さんの声かな?


 あいつらが戻ってきたら俺が嫌味を〜という声を最後にそのままテントに連れ込まれたよ。

 カーキ色のテントの中は携帯用テーブルと椅子が置かれていて筋肉中年王子様? は私を抱いたまま椅子に腰かけた。


 「ああ、か弱い足の裏がすり傷だらけです」

 「あの〜」

 足を持たれて足の裏を覗き込まれて手を当てられた。

 か弱くないもん、ここまで歩けたし、本業は立ち仕事だもん……ロマンもないけどさ……

 「リフル」

 筋肉中年王子様? がささやいた。

 足の裏がほんのりと暖かい……あれ? その美声、少し寒気を感じるよ。


 そういえば、この筋肉中年王子様? に名前名乗ってないし聞いてない、デンカさん? 殿下じゃないよね……あはは……。


「治りましたね」

 筋肉中年王子様? が手を離して微笑んだ。

 あ、……ズキズキ地味に痛かった足の裏が痛くない。


 お礼をいって事情を話したり名乗るのが礼儀だよねと思った時に勢い良くテントの入口が開いた。


 こげ茶色長い髪を一つに結い上げたの美しい姿勢のこげ茶の瞳の筋肉美女が足早に入ってきた。


 「イェティウス殿下、不審者を連れ込まれたそうですわね」

 「可愛い不審者ですよ」

 筋肉中年王子が顔を上げ私の頭をなでた。


 「そういうことではありませんわ、殿下に万が一のことがあればヒフィゼ家の、ひいては傭兵ギルドの……いえグーレラーシャ傭兵国のなおれですわ」

 美女が拳を突き上げてテントの梁にぶつけて痛いですわと手をなでた。

 わー、乱入はやめろーって大丈夫かぁと赤毛の筋肉さんがあわてて入ってきて美女に近寄って手を取った。

 

 大丈夫ですわ、この大ボケ離しなさい。

 良いから、おとなしくリフルかけさせろ。

 なんか仲良しさんな二人に置いてきぼりをくったら急に抱き上げられてるのがはずかしくなった。


 「妖精国?」

 モゾモゾしながらつぶやくとしっかりと抱えられて動けなくなった。

 「傭兵国です、グーレラーシャ傭兵国、ところで名前は? 」

 首元から話しかけられてまた、寒気を感じた。

 「長井(ナガイ) 茉莉(マツリ)です」

 「茉莉嬢ですね、僕はイェティウス・グーレラーシャ、一応グーレラーシャ傭兵国の王子……王弟です」

 えーと茉莉花(ジャスミン)茶の茉莉でといってもわか……と言いかけたところで爆弾発言に固まった。


 王子……王弟(オウテイ)殿下〜。

 もうすぐ先王弟になりますけどねと華やかに笑った殿下になんかものすごく寒気を感じたよ。


 か、風邪? それとも……異世界トリップ病とかあるのかなぁ?


 「旦那〜なにバラしてるんですか〜」

 「不審者ですわ」

 「ギアリウス、ノーラミフィエ(従姉妹)殿、彼女(小動物)は敵ではありませんよ」

 それに日本人(ニホンジン)ですから平和主義ですよと殿下は私を抱き上げたまま立ち上がってあるき出した。


 あの〜小動物って言うほどちっちゃくないよ、皆さん身長高いけど……それにニホンジン?


 「あの〜ニホンジン? 平和主義? 」

 「違いましたか? 」

 名前からしてそうだと思うんですがと殿下が続きのテントに入りながらつぶやいた。

 「私、日本人(ヒホンジン)で小動物でもニホンジンとかでもないです」

 ニホンジンって何処だろうと私は小首をかしげた。

 小説とかの舞台であったような……あれだパラレルワールドのやつ、あの優男王子様好みだったなぁ。


 私の住んでたところは『日の大王(ひのおおきみ)の本拠の(もと)集ひし(つどいし)弓の形に連なる列島の親合国(しんごうこく)』通称『日本(ひほん)』か『弓状列島連合国ゆみじょうれっとうれんごうこく』という細長い島国で、日の大王陛下と呼ばれる国主を中心にまとまる小国の連なる連合国家なんです。


 特徴は魔改造と小学校から行われる戦闘訓練で日本人(ひほんじん)防衛型戦闘(攻撃は最大の防御な)民族なんです。


 まあ、私は落ちこぼれで弱いので生涯外国に行くことはないと思ってたよ。


 ある程度強くないとパスポートとれないんですよ。

 不本意ながら異世界に来てるけど。


 だから周囲も筋肉質の人がほとんどで小説みたいな優男さんに憧れるよ。


 まあ、二次元的なあこがれで実際は筋肉質な男性を選びそうだな……細マッチョ王子の身体を確かめるように背中に手をまわした。


 うわー親戚の兄ちゃん並に筋肉ついてるよ。


 「平和主義というより戦闘民族ですよ」

 「……あなたは疲れているようです、寝ましょう」

 困った顔をして続きのテントに敷き詰められた寝床に押し込まれた。


 ついでに自分もマントを脱いで潜り込んで抱きかかえられた。


 あの〜なんで捕獲されたままなんでしょうか?

 というか全然事情が読めてないよ、普通事情説明してから……いいのかなぁ。


 見慣れないテントの天井と嗅ぎ慣れない男性の汗とかすかに香る柑橘系の香りに心臓がドキドキする。


 でも、なんだか守られてるようで不安がよみがえってきた。


 「……帰れるのかなぁ……」

 温かい筋肉質の腕に包まれながら涙が出た。

 ポンポンと背中を中年筋肉王子様があやすように叩いてくれて……いつの間にか意識が遠のいた。


 美形だけど中年で金髪だけど一本三つ編み……なんか固い……そして細マッチョのほんもんの王子様に添い寝されてるなんて従兄弟の兄ちゃんが聞いたら殴り込みかけそうと思いながら……


 次の日気がついたら朝で金髪の美形中年王子のドアップでしかも金髪解いてて顔にかかる髪が色っぽくて、なんか妙に平々凡々でごめんなさいといいたくなったけど、お腹に腕が回ってて動けなかったのでどうしようと思ったよ。


 麗しい中年筋肉王子がなんで私を抱き込んでるのさ〜とつぶやいたよ。


 というかテントなんか補修されてませんか?

 昨日は壊れてなかったよね?


 私が寝てる間に何があった?

 あと……不思議な甘っトロい不快な匂いがかすかにした。


 なんか夜中騒いでたような……疲れから目があかなかったんだよね。


 私の異世界ライフはここからはじまった。


 「あの時、逃げてればなぁと少し思ったよ」

 そう、私はかなり立ってつぶやいたときは後悔先に立たずだった。

読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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