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夢殺

作者: 燐

友人「夢では人を殺せるんだな、お前。」

気が付くと視界いっぱいに広がる灰色の壁が広がっている。手には拳銃、目の前には怯えた表情の少女。またこの"夢"だ。この夢はいつもと変わらず頭にこびり付くのであろう。

自分は何故こんな場所にいるのか、なぜ銃をこの少女に突き付けているのか。…そんなことはまだ判らなくても良い。"自分のこと"もわからないままでは、どんな問答は些細なことに変わりないのではないか?そう思う。以前少女に自分のことを問いかけたことがある。だが少女は何も答えなかった。


銃を持っている手、そのものを見てみる、黒く、太く、屈強な手だ。起きた後で見る自分の貧弱な手がその手の持ち主ではないことを強く知らしめる。いつも通り銃を降ろし、後ろを向く。後ろには目の前の灰色の壁とは違い、一面ガラスが張られている。外に広がるはどこかの国の夜景なのだろう。ここは日本ではない。ソレだけは景観を見ればわかる。試しに2、3発拳銃を打ち込む。少女が小さく悲鳴を上げる。

ガラスが砕け散る。少し驚いた。砕けないものだと勝手に思い込んでいた。下を覗いてみる。ここは4階相当の高さであることが分かった。落ちればたぶん死ぬだろう。

壁沿いに沿って歩いてみる、だが怪しいところも、扉すらない。


くるりと少女に目を向ける、腰が抜けているのかその場に倒れこんでいる。こちらが向いたのを見ると再び小さな悲鳴を上げる。

貴方、名前は?この問いかけは何度目になったか、もうわからないほどにはこの夢を見ている気がする。いつも通り相手は何も答えない。ここは何処?…何も答えない。…僕は、きみから見て、どんな風に見える?この質問だけ。この質問だけは、唯一彼女が答えて得くれる質問だった。

ただ一言。怯えながら少女はただこの言葉を呟いた。…「怪物(ばけもの)」と。

その瞬間この体は"自分で会って自分じゃなくなる"

拳銃を持つ手が上がる。自分の意志じゃない。抵抗の意味もない。少女は必死に逃げようと後ずさりをする。やめろ…こうなると声が出せない。次第に足が少女に向かっていく。次第に怒りが満ちていく。一歩。一歩と進む。怒りが満ちる。そして、最初にいた位置と同じ場所に戻った。そして…。

━━━僕は"自分の意志"で引き金を引いた。

〇〇「いや、いつも僕は自分を殺してるよ。」

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