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私の日記  作者: コーレア
004 神戸編
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030422 昼休み→記憶

 燈川学園では、高等部・中等部が他の場所より授業時間が遅い。

 学園に通うのに電車を必要としない燈島に住む学生は、島にあるのが学園・文化施設・寺社・商業施設プラス駅と港なので皆無である。というより、燈島の半永久的な本当の意味の住民は0だ。それゆえ、南か北から来る2本の路線はラッシュとなると、咲洲や桜島などに通勤・通学する人と合わさりヤバイことになる。

 だから、咲洲や桜島にある高校が8時半から1時限目が始まるのに対して、燈川学園高等部・中等部は9時丁度から始まる。まあ、遠距離から通う人も多いので、燈川が譲ったらしいのだが。

 そして、授業の開始が遅いという事は、昼休みの時間も遅くなる。


「混んでるなあ」


 12時50分から13時40分までの50分が昼休みなため、だいぶ雲が晴れてきた空の下の連絡通路を通って、私達は食堂に急いだ。

 大学の西側の校舎にあたる『白帝』と連邦図書館を結ぶ線を底辺とした三角形の頂点にあり、通路が通る2階はロビー、上の3階と屋上は休憩場所、下の1階は縦長に食堂がある建物に入るが、ロビーと食堂を結ぶ階段に既に学生が並んでいた。

 私と授業の合間に喋る事が多い薫さん、それに途中で会った松栄(まつざか)さんと時鳥(ほととぎす)さん、途中で捕らーー招いた弁当の木菟(みみずく)と並び、列が少なくなっていくのを待つ。

 2階と1階を結ぶ木目調の階段は校舎の階段の倍ぐらいに広く、その下には食器置き場になっている。降りて右側にある自販機で食べたい物を選んで、燈島の南側の堤防にぶつかるまで途切れている所を挟みながら延びるガラス張りの5列の長机のどれかに座ってご飯を食べる。

 始業式の後、菫さんとした事を思い出しながら4人を案内して、建物の真ん中辺りにあった空いている所に座る。


「どっちも引けをとらんなあ」


 と一昨日の弁当と同じようなメニューを食べている木菟が呟き、私達は苦笑いを浮かべる。

 男子2人と女子4人の私達のグループはやはり注目を集めているようで、隣の鈴蘭や対面の薫さん達への視線のおこぼれが私達にもひしひしと伝わってきていた。

 木菟曰く「非公認で不定期のランキングでは4位の鈴蘭、5位の薫さんに加えて、ペアでは3位に『遠矢』という通り名で松栄さんと時鳥さんも数えられてる」らしい。


「遠矢?」

「ギリシャのアルテミスさんとアポロンさんからな」

「……ああ、なるほど。けどアポロンは……」

「そこはご愛嬌よ。まだ非公式だしね」


 5時限目と6時限目の間にそんな会話を交わし、岸田先生からはシンプルな赤色のみを塗ったイースターエッグを貰い、6時限目を過ごした。

 そして、6時限目が終わり、私達は教室を出る。


「私達は4組の人とだよね?」

「はい」

「それに、化学部の副部長の子も?」

「そうなるね」


 その副部長の子こそが、化学部の中の反魔法使い派、通称AMGの唯一の子らしく、細々と続けてきた化学部にとっては久し振りの5人目なので、手放そうと思っても出来ないとか。

 まあ、魔法科と2組で80人いるんだし、あまり喋る機会は無いだろうが。


「羽柴さん、ですか?」


 しかし、さんを見つけて走っていた薫さんと別れ、1人で広場に向かっている途中で、後ろから声がかかった。


「そうですが?」

「化学部の副部長の山名美羽(みゆ)です。今日からよろしくお願いいたします」


 ……固い! だが、悪人では無さそうだ。

 悪人なら魔法使いを人と思わないような言動を取るが、山名さんの目はまた別の目だ。


「私が魔法使いが嫌いだという事は部長から聞いていますよね?」

「は、はい」

「ですので、事件を解いてください」

「……はっ?」

「私のお母さんが殺された真相を解いてください」


 ………………。

 泣きそうな、何もかも信じられないような目。半月くらい前にも見た目付きだった。そして、逃げた場合の結果も知っている。


「事件を、聞かせてください。役に立てるかわかりませんが」

「っ! わかりました」


 恐らくは、初めてなのだろう。動いてもらえる事ではなく、聞いてもらえる事が。

 本人は気付いていないだろうが、頬を緩ませる彼女を見ながら、私は1つの記憶を思い出していた。


『ありがとう』


 黒に押し潰された少女が、稀代であり公には語られる事のない殺人鬼の声が、燃える建物を背景にしてフラッシュバックする。

 目をこれでもかという強さで(つむ)り深呼吸する。目を開けた後、体調を聞いてきた山名さんに背中の冷や汗を感じながら嘘をついて、そして彼女の話を聞き始める。

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