佳代ちゃんと八重ちゃんの放課後。
『全国のコスプレイヤー集まれ! この企画サイトはコスプレに興味のある方へのものです。 コス初心者でも大歓迎! 100名様まで、 コスプレイヤーさんお待ちしています♪ ※コスプレイヤーさんは女性のみです。 ご了承くださいませ。 お客様は性別を問いません! ♡場所△〇□広場♡ 参加したいコスプレイヤーさんは下のリンクからご応募ください』
最果高校の放課後。 黄土色の天然パーマの髪の毛をゆるく二つに結んだ女子生徒が、携帯片手に友人の席へ駆け寄った。
「八重ちゃん? どしたの」
席について淡々と帰り支度をしている生徒、 栗原佳代は首を傾げた。名前通りの栗色の髪の毛がわずかに揺れる。
「これ、 見て」
人よりも少し口数が少ない生徒、 萩原八重が、 佳代の顔にグイッと自分の携帯を近づける。 八重の黄緑色のガラケーを見るたびに、現代女子高生がガラケーなんて珍しいな、 と佳代は毎回思う。 (ちなみに、本人はスマホなどに変える気は毛頭ないようである)
「……『全国のコスプレイヤー集まれ』…? 」
「うん。 私、 応募、 したよ」
「へ~! 八重ちゃんならできるよ! すごいねーこんなサイトあるんだ! 」
何やら、 八重が見せてくれたのはコスプレイヤーの集いの場の企画サイトらしい。 八重の携帯に映っているページを読み進めていく。 なかなか変わったサイトだ。 参加できるのは女性コスプレイヤーが100人。 文章の最後に応募リンクが貼ってある。 驚いたことに、 開催場所はウチの近所。
「佳代ちゃんの分も、 応募しておいた」
「えっ」
いつもの無表情で、 八重はそう発した。
(来ました、八重ちゃんの爆弾発言…! )
確かに、 佳代も八重もコスプレが趣味で、 簡単な衣装を自分たちで作って着て楽しんでいた。 でも、 それを誰かに見せたことなんて一度もない。 佳代は人見知りで恥ずかしがり屋だ。 自分のコスした姿なんて、 親友の八重にしか披露できない。
……佳代に嫌な汗がよぎった。 普通の人ならば全国のコスプレイヤーが応募する100人の中に入れることへあまり期待はできないだろう。 だが、 八重が応募してしまったからには話が違う。 なんといっても八重は………
「当選したよ」
「……………」
生まれつきの豪運の持ち主なのだから…。
「もう、 八重ちゃん! やることが勝手すぎるよ!! 私、人前でコスなんて…」
「……? 人前、 なの? 」
「そうでしょー! 八重ちゃんちゃんと記事読んだ!? 『お客様は性別を問いません!』って書いてるじゃない! 絶対見に来る人いるからー! 」
「………ごめん、 なさい。佳代ちゃん、 嫌だった?……私は、 それでも、 参加…したい、 けど」
八重は表情を崩さないものの、 勝手に応募したことをしっかり反省してくれているようである。 そういうところが八重の良いところでもあるのだが、 この素直さに佳代は弱くなってしまう。
「……ま、 まあいいよ…! 私だって、 その…ちょっとキツく言いすぎたかも…だし? …ごめん」
佳代がモゴモゴとそう言うと、 八重はホッとしたように微笑んだ。
「じゃあ、 これ、 一緒に読もう?」
八重は携帯のページを操作し、 自分と佳代に見えるように前へ差し出した。 それは、コスプレイヤー当選者への詳しい説明らしい。
『当選おめでとうございます! 今から開催についての説明を致します♪
・開催は月に4回(参加は強制ではありません。 来れるときだけでOKです)
・衣装や持ち物などは自己責任
・参加者さんやお客様とは仲良くしましょう♪
・参加料などは必要なし
・開催日→5月25日(次回の開催日は後々発表します)
何かありましたら管理人(涼風イバラ)へ』
「5月25日…。 あと2週間くらいか」
「頑張らなきゃ、 だね」
そうして、私達の物語が色づき始めたのだった。
閲覧ありがとうございました!
…後々ですがガールズラブが出てくるかもしれません。。。!