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夢幻泡影のアザレアカフェ  作者: ナナカセナナイ
クーデレ美少女 瑞原詩歌ルート
20/56

三話「アザレアの花言葉」⑫

四万文字突破あああ!!

まさか一日で三回も投稿できるとは!!

今日は!! 筆が!! 乗ってる!!

(注)キーボードです

 庭付きの一軒家。

 瑞原宅の低い門を音を立てずに飛び越える。

 玄関から入るわけにはいかない。

 庭先を見る。

 詩歌の母は、どうやらガーデニングが趣味らしい。

 三人でよく駆けまわった庭は、プランターやら植木鉢でごった返していた。

 パンジー、ビオラくらいは俺でも知っている。

 徒長して、蒸れた株が月明かりの下、こちらを見ていた。

 赤紫の小さい花は、ガーデンシクラメンか。

 腐ったもやしのように萎れた花は、悲しげに頭を垂れる。

 花が乾き、くしゃくしゃになったプリムラ。

 枯れた花がら摘みが行われていないのだろう。

 根本にある新しい蕾が、陽の目を見ずに死んでいた。


 これらは全て冬の庭を彩る花だ。

 つまり最近まで、誰かが世話をしていたことを意味する。

 背の高い、ゼラニウムの独特の香りに混じって、室内からの臭い。

 強烈な、腐臭。

 鼻にまとわりつくようなその臭いに、思わず吐き気がこみ上げてきた。

 まだだ。

 まだ、動いてはならない。

 じいと、アザレアの影に身を潜める。

 二月の夜は身を切るように冷たい。

 しかし、夜を溶かすように、自分の熱を感じた。

 早広と、榊。

 二人には指示を出してある。

 あとは、待つしかない。

「来た」

 スマートフォンが光る。バイブレーションすら切っておいた。

 ――榊からのメールだった。

 

 瑞原さんの親父が、仕事終わってそっちに向かう。両手になにか入ったビニール袋を持っている。


 返信はしない。あらかじめそう伝えてある。

 確認を済ますと、庭先のカーテンと窓が開いた。

 ――気づかれたか……?

 月明かりこそあれど、スマートフォンの明かりは目立つ。

 終わりを覚悟したが、ガラス戸を開けて、顔を出した詩歌に、そんな素振りはなかった。


 月明かりに爛々と光る艶やかな黒髪。

 それでなお、存在感を放つ鳶色の瞳。

 月と同化したような、白い肌。

 揺蕩う黒から覗く眼は、虚ろだった。

「くうきがこもってきたから、まどあけるね、おかあさん」

 店では絶対に見せることのない、甘ったるい声。

 しかし抑揚はなく、どこか詩を語るようではあった。

「ほら、つきがきれい。はやく、からだなおして、またがーでにんぐしようね」

 濃密な臭気。

 開いたガラス戸から、大量の羽虫が飛び出す。

 静かな住宅地。こんな悍ましいことになっているとは、誰が思うだろうか。

 しかし、俺は見た。

 自分の推理が当たっていたのが恨めしかった。

 よくもまあ、こんな地獄に。

 詩歌をおいてくれたものだな。

「げんきになったら、ここからでで、ふたりでいっしょにくらそうね。それまで、わたし、がんばるから」

 彼女の精神は擦り切れる寸前だった。

 いや、とうに擦り切れていた。

 摩耗し、疲弊した心は、何に救いを求めたのだろう。

 彼女が縋ったのは、何だったのだろう。

  

 鍵を開ける音。

 親父が帰ってきたのだ。

「おかえりなさいとうさん」

 淡々と、彼女は言う。

 眼はどこも見ていなかった。

「……お、おう。酒は、買ってきたんか」

「はい、ここに」

 詩歌からカップ酒をひったくると、郁夫は書斎へ向かった。

 鼻をつくような臭いに顔をしかめ、布団にくるまったそれを一瞥した。

 舌打ちし、書斎に入る。

 残されたのは、庭先に隠れる俺と。

 ”一人”佇む詩歌と。

 

 全身にびっしりと蛆が沸いた、それ。


 詩歌と同じような長い黒髪。

 バッサリと抜け落ち、枕元に散っている。 

 眼窩は昏く窪み、見たことのない虫が這っていた。

 皮膚はドロドロにとけ、ところどころ赤黒く、変色している。

 腐敗ガスの発生で、ところどころが膨満し、もはや人の形を保っていない。

 

 詩歌の、母だった。


 おそらく、数週間か。

 彼女は最後に縋ったものさえ、奪われていたのだ。

 ――「母はいますが、とても静かです。父は仕事にいっています」

 ――「さ、さあ? 知りませんよそんなこと、詩歌ちゃんの家庭環境なんて」

 ――「恭平くんは、何も変わらないんですね。六年前と。私は、これほど変わってしまったというのに」 

 ――「気のせいだよ。ああ、そうだ糞野郎。詩歌の母さんは元気か?」  

 ――「ひと月程……いや、三週間か。最後にあった日は、瑞原さんのことを少し話した日だから覚えている」 


 時系列もバラバラに、走馬灯のように過去を回想する。

 ああ、やはり認めたくはなかった。

 間に合わなかった。

 もう俺は、彼女を救えないかもしれない。

  


ご想像の通りでしたー

かなりキツイ展開で、書いてる自分も辛い……

あれ、イチャラブは?

ハーレムは?

ご安心ください!!ちゃんと用意してます!!

数話後にな!!(ゲス顔)

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