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夢幻泡影のアザレアカフェ  作者: ナナカセナナイ
クーデレ美少女 瑞原詩歌ルート
19/56

三話「アザレアの花言葉」⑪

そろそろ三話も終盤です。

ああああ!早く!叶ちゃんルートを書きたい!!

あ、一応全ヒロインのエピソード書ききるつもりです!!

プロットばっかりが先走ってゆく……。

筆の遅い自分が憎い!!ぐおおお!!

 急ぎ身支度を整える。 

 予定よりも少し早いが、余裕があるに越したことはない。

 早広が驚いたように声を上げる。

「店長、今日は急いでるんですね」

「悪いな、今日はお前の相手してやれないわ。これでも忙しいんでね」

「殴っていいいですか」

 痛い痛い。もう殴ってる。

 ぽかぽかと可愛らしい拳を抑え、笑う。

「早広、榊」

 巻き込むべきではないと思った。

 ただ、ここからは俺一人では進めない。

 頭を下げる。

 何事か、と二人が息を呑む音が聞こえた。

「どうした、店長。水くせえぞ」

 榊は何が言いたいか、察してくれていた。

 声は興奮と期待、怒りを混ぜた色に感じた。

「……詩歌を救いたい。力を貸してくれ」

 はっきりと、思いを告げる。

 もう誰も失いたくない。

 もう誰も壊れてほしくない。

 思えば今までの人生で、人に力を借りたことなどなかったのかもしれない。

 自分はいつだって与える側だったし、そう自覚もしていた。

 彼女のおかげで、他人よりも優れているという自負もあった。

 ただ、此処から先、失敗は許されない。

 万が一にも、詩歌を失うことなどあってはならない。

 そうすれば、また。

 また、俺は。


 壊れてしまう。


 どうしよう。

 不安。

 後悔。

 ああ、断られるのか。

 それもそうだ。

 こんな出会って一週間もない奴を。

 誰が信用するというのか。

 俺ならしない。

 ただ。

 こいつらなら。

 もしかして、というのがあった。

 でも違ったのだ。

 店長という権限を傘に、指示を飛ばしていた。

 こいつらは、仕方なく俺と仕事をしてきたのだ。

 言うことを聞かざるをえない。

 そんな偽りの信頼関係の中。

 急にこんなこと言われても信用できるものか。

 ああ。

 詩織、お前ならこんなときどうした?

 いっぱい教えてくれたじゃないか。

 俺が心を読めるようになったのも、お前のおかげだ。

 どうすればいい?

 だが詩織は、もうこの世にはいない。

 現実を再認識する。

 今まであった足場が崩れていくような、絶望。

 無理だ。

 俺には。


「店長」


 肩に触れる優しい感触。

 早広の声。

 常闇の世界を照らすような。

 太陽の声。


「あなたを、信じます。どうか、詩歌ちゃんを助けてあげてください。

 わたしに出来ることならなんでもします。

 榊さんもきっと、同じ気持ちです。

 どうか、顔を上げてください。

 前を、向いてください。

 いつものように。

 傲慢で、不遜で、尊大で。

 でも、成果を出せる店長でいてください。

 私達はしっています。

 あなたがしてきた努力を。

 実績を。

 同じように、その力で、今度は詩歌ちゃんを助けてあげてください」


 顔をあげる。

 にこり、と微笑む早広。

「昨日はごめんなさい。あれからずっと考えてたんです。後悔してたんです。今日、詩歌ちゃんが早退したって聞いて、もう……」

 言葉で、何と伝えたらよいのだろう。

「店長は、私達の、光です」

 違うよ。

 光は、お前だ早広。

「ありがとう……」

 頬を熱いものがつたった。

 止めようと、しかし、溢れ出るそれを抑えきれなかった。

「おい! おいおいおい、水くせえわ店長!」

 バシン! と背中に衝撃。

 榊が勢い良く俺を叩いた。

 痛みが少し心地よかった。

「いいか、俺達は同じ店でやってるんだ。いわば家族のようなもんなんだよ。家族が傷ついてるんだ、助けだすのは当然だぜ!」

「臭えわ、榊……」

「ひでえ!」

 抗議の視線。

 良い奴だ、こいつは本当に。

「ありがとう、榊」

「お、おう……」

 照れて顔をそむける榊。

 やめろ、男のツンデレは本当気持ち悪いうええ。



 少し落ち着いた。

 先程はみっともない姿を見せてしまった。

 誤魔化すように咳払いをすると、早広はくすりと笑った。

「それで、店長」

 テーブルに肘をつき、榊が問う。

「ああ、どうした?」

「作戦はあるんだろう?」

「もちろん」

 早広がびくん、と震えた。

 彼女は一度詩歌を救おうとしている。

 しかし、失敗した。

 それだけでなく、詩歌の境遇はそれ以降、より酷いものとなり、挙句の果てに本人にも拒絶されていた。

「早広」

 優しく、声をかける。

 早広は子犬のように、大きな瞳をこちらにむけた。 

「安心しろ、作戦は鉄板だ。万に一つの失敗もない」

 肩に触れ、目を見て言う。

 ぽう、と彼女は呆けて。

「わ、わかりました……」

 慌てて納得したようにそう言った。

 

 二人の目を見る。

 さあ、失敗は許されない。

「作戦を告げるぞ……」

 夜は、まだ終わりそうになかった。 

  

 


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