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夢幻泡影のアザレアカフェ  作者: ナナカセナナイ
クーデレ美少女 瑞原詩歌ルート
11/56

三話「アザレアの花言葉」③

「おはよーございます……、あれ、何やってんだお前ら」

 榊だった。もうそんな時間かと時計を見る。

 オープン二時間前。かなり余裕のある出勤時間だ。

 朝黒い肌、金色の髪、首元にはシルバーのネックレス。

 舐めるような視線が肌をついた。

「ほう、ほうほう。瑞原さんにもついに春が」

「待て、何かお前勘違いしてるぞ」

 余談だが、榊は詩歌のことを瑞原さんと呼ぶ。

 店長代行なだけあって、尊敬されているのか、榊は詩歌に一定の敬意のようなものをはらっている気がした。

「あれ、事後じゃねーの?」

「事後ちゃうわ! どう見たらそう見えるんだよ!」

 詩歌はコーヒーを飲んだ後、すぐに眠ってしまった。よほど疲れていたのか、起きる気配は全くない。

 節電のため、アザレアカフェは空調をいれるのはオープン三十分前――つまり九時半からと決まっている。狭い客席なので、すぐに暖気が行き渡るためだ。

 二月も上旬。まだ室内といえどもかなり肌寒い。

 控室にあった毛布を被せていた所に、榊が出勤してきたのだ。

 正直こんなに早いとは思わなかった。

「なんか色々大変みたいなんだわ、瑞原さんとこ」

 ふいに真顔に戻り、榊はその整った顔をこちらに向ける。

「その毛布、瑞原さんのだな。この子の境遇についてはある程度聞いているのか?」

 六年前の事を言っているわけではあるまい。おそらく今現在の話だ。

「……いや、まだなにも」

 実際には早広から概要は聞き出しているのだが、いかんせん情報量が少ない。

 嘆息して、俺は榊に返した。

「そうかよ、信頼されてねえんだな。お前。何か昔の知り合いだったみたいじゃねえか、その余所余所しさはなんなんだ?」

 察しが良い。詩歌は自分のことを話したりしないだろう。

 こいつは俺達の挙動を見て、結論にたどり着きやがった。

「ああ、そうだよ。こいつを助けたいのに、本人も、周りも何も教えてくれない。榊、お前はどうなんだ?」

 俺を値踏みするような視線に、真っ向からぶつかる。

 榊は少し笑い。

BY(バックヤード)でいいか? 瑞原さんが起きたら、殴られそうだ」

 煙草を咥えながら、顎で俺の後ろをさした。

 こいつ、実は結構いいやつだったりする?


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