都市伝説の一人
暗闇の一本道の中、一人、私だけが立っていた。周りを見渡しても誰もいない。ただ、遠くの方に懐かしい風景が見える。あそこにいかなければならない気がした私は、走り出した。けれども…よくあるパターン、走っても走っても一向に近づく気配がない。
あきらめかけたその瞬間、一本道は消えた。
つまり、なくなったのだ。
空中に浮いた私は、重力に引っ張られてしたへ落ちていき……。
目が覚めたら、みたことのないような布模様が私の目に映った。
「ここは…」
私は横になっている状態で、どうやら、どこかのベッドの上にいるようだった。
ガチャ
私がいる部屋のドアが開いた。
ドアから現れたのは、私の通っている学校の風紀委員長、竹内紫苑だった。私より二学年上の彼女は、中三、私より落ち着きがあった。
「あの、ここは…」
「安心して、私の家の中だから」
落ち着きかえった彼女は、疑わしい表情をしている。
私の顔に何かついてるのかな…?
「舞一那さん…であっていますわね?」
一回だけだが、お嬢様口調で話しかけられた。
「え、あ…はい」
たどたどしい返事をした後、私はきちんと挨拶しようと起き上がろうとした。が、ズキっと頭に痛みが走った。
「あまり無理するのはやめなさい」
「え…?」
私の頭痛を予測していた彼女は、複雑な表情をする。
「あなた…、見えたの?」
はい…?
ベッドの横にあるいすに腰掛けた風紀委員長が問う。
「あの…ビルの屋上で、…誰かを……見た?」
目を踊らせながらそわそわした様子で後輩を見つめる
「それはどういう意味なんですか?」
「見えてたのね?」
無視ですか
とりあえず見えていた、と適当に答えておいた。何のことか検討がつかなかったから。
「実は…」
「久しぶりだねアメリ、今は監視官もしているんだったっけ?」
「あなたには関係のないこと……⁉」
突然、アメリは私を見つめて疑った。
「君は、…必要ない存在なんだけどね。第一、なんで君がクリスタルタワーを乗っ取ろうとするんだよ?必要ないのに」
はぁ、とため息をつく騎士。
一方、アメリと名乗った少女は、軽くにらみながら、まるで後ろにいる人間の女の子をいないかのように話をする。
「どういう意味よ?」
「そのまんまの意味さ。クリスタが後ろにいるし、彼女が宿り主だし」
「あなた、冗談を言っているつもりなの?」
後ろは向かずに眉を起用に動かした。
あんな人間の女の子に何ができるというの…
焦っている様子に騎士が面白そうに笑う。
「確認してみたら?今も持ってるんでしょ、ジュエルワールドのパラレナーリスト♪」
「言われなくても…‼」
腕につけてある紫色のリングの上に手をかざす。
空中にリストが浮かび上がり、パラレナーリストを開く。
数秒間の沈黙。
「ないわよ…?クリスタなんてコードネーム」
騎士が段差に腰掛けてニヤニヤしていた。
「何がおかしいのよ‼本当にクリスタであっているの?」
「さっきからそういっているだろう?」
「でも…」
ないじゃない。そんな名前
「そういう意味も込めて君は不必要なんだ。君の脳みそはチーズなのかい?」
「うるさいッ!」
騎士に向かってカマイタチのような風が複数吹き飛んだ。
「私が不必要なのは知っているわ。それをふまえて、私は生きてるの」
「馬鹿だな、愚かすぎる。」
騎士が空を見上げた。
「いらないやつなんてただの石ころだ。それに、クリスタはただのクイーンなんかじゃないさ」
「あなた、あの都市伝説のようなものがあるとでも?」
「みんな知らないだけさ、都市伝説だなんてとんでもない、そのうちの一人がうしろにそんざいしているじゃないか」
後ろを振り返る。
水色の髪の少女が立っていた。瞳も水色…。
「否定のしようがないだろう?前のクイーンに瓜二つ。なにか文句あるかい?」
いらいらとしてきた。
そうだ、こんなのにつきあっている暇はない。
「そのまえにあなたを捕まえてから、ね」
騎士は立ち上がった。
「ふーん。なら、クリスタは寝ていてもらっておこうかな、戦っているときの僕を見られたくないから」
クリスタ、と言われていた少女の下に黒い魔法円が浮かび上がり、魔力の力でそのまま寝てしまった。