表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラレルワールド  作者: 胡蝶の舞
1/2

別世界の住民

 私は心から驚いた。ましてや、こんなにも科学の進んだ時代に、魔法があるとは思わなかったから……。


『キャー!』『火事だ!』『誰か消防車を…!』

 その火事はいきなりだった。

 今は夜。この町、夜桜国の都市、金桜シティの有名な五つもある超大型タワーの一つ、クリスタルタワーが燃えていたのだ。

 私、魔一那氷華(まいな ひょうか)は、制服姿のまま、燃えるクリスタルタワーを眺める野次馬の最前列にいた。

 燃える?市長が『絶対に燃えません!この五つのタワーは燃えないので、消化器など防災具をおく必要はないでしょう!』とか言っていたものが?

 市長は嘘を言ったの?不安になり、首からかけている月形の水色と紫色が混ざったような色の宝石がついたネックレスを握りしめる。

 私が考え込んでいると、空から声が降ってきた。

「ククッ、だから言ったのにな。あいつにクリスタルタワーの支配は無理だと言ったのにもかかわらず…馬鹿なやつだ…」

 誰?こんなときにヒーローみたいに…馬鹿じゃないの?

 気になり、思わず上を見上げる。

「え…ウソ…!」

 ヒーローみたいに、なんかじゃなかった。

 クリスタルタワーの道路を挟んでたっている向かい側の高層ビルの屋上の端に、座り込んでいる男子が見えた。

 黒いマントがあり、黒い服を着ている。ショートな紺色の髪に濃い紫の瞳…。

 不思議な男子は、頬杖をつき、かすかに笑っているのが読み取れる。

 正体を知りたがった私は、人々をかき分けながら、そのビルの非常階段に周りを伺いながら忍び寄った。他の人たちは気づいていないのか、まだ、燃える宝石のタワーをまじまじと見つめていた。

 非常階段は、ビルの外の壁に這いつくばるようにくっついている。

 軽く吹く風に、自分の膝までのびた透き通る水色の前髪が、たまに顔をつつく。その髪をかき分けたい思いを我慢しながら、私は何十階分もある非常階段を上り続けた。

 屋上に行くまでに、非常階段は、建物内の螺旋階段と合流した。

「ふぅ…」

と、ため息をつき、私は立ち止まった。

 建物内に入ったので、風は吹かない。

 顔をつついていた長い前髪を耳にかけ、私は、残り少ない螺旋階段を上り始めた。


 ✽ ✽ ✽


 両開きの緑色の扉が見えた。

 おそらく、この向こう側が屋上なのだろう。それを思わせるかのような風が、扉の下の隙間から入ってくる。

 ギイィィィ…

 古いくないのに、緑色の扉は、あけるときに軋む音がうるさかった。

 この音が聞こえたのでは…?と思ったが、屋上は予想以上に風が吹いていて、軋んだ音はかき消される。

 正面を見ると、空から降ってきた声の主が、屋上の端に片足をおろして楽しそうに眺めていた。

 私は、声の主だと思われる男子に、声をかける。

「あなた、ここで何してるの?勝手に屋上に来れたみたいだけど、まさか一人でこのビルにはいったんじゃないでしょうね?」

 私の問いに、座っていた男子は身動きもせず、声だけ発した。

「…クリスタ、こんなところにいたのか…。ここ(ルピアス)じゃあ、力は三分の一ぐらいになるよ?」

 は…?

 今、私に言ったの…?

 ルピアスって何?

 謎めいた応答に私は戸惑う。

「今の言葉は私に言ったの?」

 自分の疑問を口に出す。

 はたして、相手の反応は…

「そうだけど…まさか、本当に記憶をなくしてしまったなんてね…少しショックだなぁ」

 その言葉を言うと、立ち上がった。

「はぁ、噂は事実か。誰かが消したんじゃあるまいし…」

 なんてつぶやきながら、私の方を向いた。

「あなた、誰?」

 単刀直入に聞いた。

「二度目の自己紹介かな、騎士(ナイト)だよ。覚えてないのかい?」

 騎士と名乗った人の質問に頭をまわすが…全くみに覚えがない。

 私は首を左右に振った。

 騎士は、「そうか…」とつぶやきながら、考え事をしているようだった。

「タワー一つずつに、宿り主(クイーン)がいることは知ってるよね?」

 知ってる…。それは耳にタコができるくらい聞いた言葉だ。

「でも、そんなの実在しないに決まってるじゃない。怪談と同じように都市伝説みたいなものよ」

 私が答えると数秒間 シン とした時間ができた。

 あれ?私、何かヤバいこといった…?

 騎士が背を向けた。

「そこまで人間になじんでしまったんだね…」

「え?どういうこと?」

 今の言葉を聞くと、私がこの世界の人じゃないように聞こえる。

 騎士が上を見上げた。

「今にわかるさ…」

 彼の言葉が終わるか終わらないかのうちに、誰かが上から二人の間に突っ込んだ。

 槍が長くなったような棒を屋上の地面に刺し、刺さった部分から紫の稲妻が発生している。

「やっと見つけたわ……」

 肩したまでのびた薄い紫色の髪をなびかせ、ロリータな服を着た女の子は、見えないようなスピードで、槍のような棒を、三十センチぐらいの玉のついた棒に縮めると、騎士の方にその棒を向けた。

「さぁ、覚悟しなさい、騎士!このアメジストタワーの宿り主(クイーン)アメリが、あなたを捕まえにきたのだから!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ