人形発見
その時、ひよこさんマークの引っ越し社のトラックが
ブフォフォフォ...とエンジンを派手に鳴らしながら数台やってきたのが見えた。
そして、家の前につくと、キュキュキュキューッとこれまた暴走族のバイクみたいな音を立てて乱暴に止まった。
荷台が多少浮いたような。まあ、それは考えない事にしよう。
そのトラックから、数人の男女が出てくる。
「こんにちは、ひよこさんマークの引っ越し社です
皆様をお待たせさせてしまったようで、申し訳ないです
どうですか、新居の方は。気に入られましたか?」
そのうちの一人が頭の悪そうな顔で尋ねてきた。
「あの、まだ中に入ってないから分からないんですけど」
「あっ、そうですよね!
では、お荷物運ばせていただきますので、少しお時間いただきますよぉ」
馬鹿親一号がここで余計な事を言い出す。
「あ、あのぉ、うちの子中見たがってるみたいなんでさくっと見てきて良いですか。
やっぱり、物が何も置かれないうちに一回見ておいた方が良いと思いますし。
ねっ?唯夏見ていらっしゃいよ。5分なら待ってあげるし。
あなたの部屋、因みに二回の左端の部屋ですからね」
はぁ?
見たいなんて一言も言ってないんですけど。
しかもなんか恩着せがましい言い方しやがって。
あたしは内心毒づいたが、それでもちょっとは気になったので、
「あ、じゃあ、ちょっとだけ見てきます...」
と言うなり庭の小さな門を開けて、
庭に生える整理されたグリーングラスを踏まないように気をつけながら
家に走っていった。家には鍵がかかっていなかった。
それをかなり疑問に思ったが、そこは敢てスルー。
別に盗まれるものはないはずだし。
あたしは玄関で、いつもなら乱暴に靴を脱ぎ散らかすのだが、
今日はさすがに律儀に靴を脱いだらそろえて玄関を後にした。
見たところは普通の家だった。
白い壁と、明るい色の木が使われた床を見る限り、
多分この家のコンセプトは「明るい住まい」。そんなところだろう。
あたしは一人でふんふんと頷きながら二階に向かった。
やはり一番気になるのは自分の部屋だ。
階段は、床と同じ素材で作られており、大袈裟ではない螺旋階段となっていた。
以前の家では階段がみしみし言ったりしていたのだが、
ここではもちろんそんなこともない。
さて、二階に着くと、真っ先にベランダに抜ける透明なガラスのドアがあった。
しかしそれも通るときに見るだけにし、自分の部屋に直行。
軽く深呼吸をしながら自分の部屋になる部屋の扉を軽く押した。
ちょうど東側の部屋だったので、入った途端朝日に目が眩み、眩しかった。
さすがに何もない部屋となると、落ち着いた色合いの部屋であっても殺風景だったが、
やはり綺麗で、満足できた。
しかし、丁度そのときだった。ありえないものを見つけたのは。
「うん?」
それを見た途端、あたしの口から疑問の声が漏れる。
そんなはずはない。
そこ(窓の淵)に置いてあったのは―——――人形だった。