ちはやぶる 神代も聞かず
第17首
ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれないに 水くくるとは
在原業平朝臣
彼女は僕の恋人だ。
7歳年上だってことは全然気にしてない。とても素敵な人だと思う。とても美人で優しい。何も不満はない。
たった一つ、彼女が既婚者だってこと以外は。
彼女は3年前、結婚したらしいが、最近夫とは会話はほとんどないのだと言う。彼女の夫には結婚前から続いている彼女がいるらしい。
嘘か、本当かは・・・わからない。
「そゆー恋っていつか終わるわよ」
僕の友達がこの前そう言った。
全くもって正論だろう。
僕と彼女の恋も、彼女の夫とその恋人の恋も・・・不倫という恋はいつか終わるに決まってる。
彼女とは1ヶ月に2、3回ぐらい会うだけだ。一緒にご飯をたべたり、映画を見にいったり。秘密の恋だから、そう長く一緒にいられない。
今日は彼女と一緒に人の少ない公園で散歩している。彼女の夫が長期出張なので、以前の逢瀬とは違い、ゆっくりできる。
秋真っ盛りだ。
赤い紅葉が木を彩る。
紅葉で川が赤く染まっている。
「綺麗ね。落ちた紅葉で川が赤く染まってるわ。」
彼女が微笑む。
「そうだね。」
彼女の手を軽く握りしめる。
友達の言うとうり、この恋は長くは続かないだろう。
でも、この今、この穏やかな時間だけは・・・大事にしたい。
この歌の意味・・・
神代にも聞いたことがないよ。竜田川が真紅の色に、水を絞り染めにしているかのように見えるほどに、紅葉を敷き詰めて流れているとは。