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君がため 春の野にいでて
君がため 春の野にいでて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ
第15首 光孝天皇
新しい年が来た。
俺は家族と旅行に来ている。楽しい旅行だ。
なのに今、俺はしかめっ面で三時間もお土産屋を転々としている。
俺にはすごく大事な人がいる。
本当は一緒に旅行につれて行きたかったけどあいつは今、重い病気でずっと病院。だからどこにも行けない。
あいつは自分が一番苦しいはずなのに、いつも俺のことを励ましてくれて、いつも笑いかけてくれて。
いつも励まされてばかりだから、今度は俺が励ましたい。
という事であいつにお土産を買うことにした。何がいいだろう。
結局ピンとするものがなく、俺はお土産屋から出た。
雪が降ってきた。袖に雪がついた。ああ・・・。雪ってなんか切ない感じがする。
あいつに会いたい。その気持ちが高まる。
ケータイが鳴った。
「ああもしもし?」
(もしもし?)
あいつだった。
「どうしたんだ?」
(何かー声が聞きたくなって。)
「あほか。恥ずかしい」
ああ、やっぱ励まされてる。
来年はこいつと旅行にいきたい。