第3話 傭兵
黒いマントを被った男は、雨の中、歩いていた。
どうやら、森を抜けて城のある街を迂回したようだ。
男はただでさえ、人と触れ合えないのに口のきけない女と触れ合ってしまった。
そして、殺した。
サイレンスへの憎しみで狂いそうだった…。
男「憎い… 憎い… 何処だ… 奴は何処に…」
男は雨の中、歩みを進める。
男が進む先で行商人が数人、木陰で雨宿りをしていた。
男は話しかけられると面倒だった為、
少し手前から走って素通りしようとした。
しかし、通せんぼをした人物がいた。
手だれの傭兵だった。
傭兵「濡れますよ お兄さん 私が護衛している方々と一緒に雨宿りをどうぞ」
男は嫌になった。
男「親切にしてくれた お礼に殺さなければならん!」
男はいきなり剣で斬りかかった!
傭兵はすぐさま剣を抜き、男の剣を受けた。
傭兵「何をするんですか!正気ですか!?」
傭兵は男に尋ねる。
男はまたも続けて斬りかかった。
男「悪いが 殺戮衝動だ おまえを殺すまで!止まらない!」
男は斬撃に力を込める。
傭兵「分かりました 狂人と言うことですね 貴方をここで殺します!」
傭兵は男の力強い斬撃を受け止めて、体当たりを喰らわせた。
傭兵は、倒れた男の胸に剣を突き刺した。
傭兵「狂人でも 人を殺めると 心が痛みますね…」
傭兵は男から剣を抜いた。
傭兵「この事は雇い主にも報告せねば…」
そう言って、傭兵は行商人達の方に歩いて行った。
男はゆっくりと体を起こした。
そして剣を取り、立ち上がる。
男はゆっくりと傭兵に近づいて、背中にズブリと剣を突き刺した。
傭兵は、腹に突き刺さる剣と血を見てから後ろを振り向いた。
そこにはたしかに胸に剣を刺した狂人が、胸から血を流して立っていた。
傭兵「…えっあぁあ…な…ぜ…」
傭兵は魂の抜けた人形のように地面に崩れ落ちた。
男は狂気の笑い声をあげた。
また女を殺した…。
少し遠くで様子を見ていた商人達が怯えていた。
女子供もいた。男の精神状態は限界だった。
男は口いっぱいに息を吸い、こう叫んだ。
男「いいか!生き残りたければ誰も俺が去るまで口を開けるな!」
男は商人達を一瞥もせずに街道を駆けて行った。
雨は降り続ける。男の脚は止まらない。




