初召喚
圭介は新しくできた広場に立ち、ダンジョンコアに問いかけた。
「……さて、次はモンスターの召喚だよな」
《召喚可能モンスター:3種》
《いずれも1ポイントで召喚可能》
《推奨:ミルワーム》
「推奨って……なんでだ?」
『ダンジョン内の生命活動には“土壌の安定”が必要です。
ミルワームは土を食べ、排泄物を高栄養化させます』
「つまり……ダンジョンの環境整備ってわけか」
『はい。環境が悪いと、他モンスターは餓死・衰弱します。生態系の構築は最優先です』
(……生態系。ゲームじゃなく、本当に“生物”なんだな)
圭介は深く息を吐いた。
鳥型、獣型、虫型――どれも戦力としては頼りない。
だが、戦う前にまず“生かす環境”が必要だという理屈は理解できた。
「わかったよ。じゃあ――ミルワームを召喚」
《承認。1ポイント消費》
床の一部が淡い光に包まれ、ぐにゃりと形を変えた。
土が盛り上がり、その中から太い何かがぬるりと姿を現す。
ずるっ……ずるっ。
「うわ……でっけぇミミズ……」
胴体はピンクがかった土色で、滑らかな粘液が表面に光る。
50センチほどの巨体が身体をくねらせ、周囲の壁を嗅ぐように触れていた。
《ミルワーム:召喚完了》
《役割:土壌整備・通路安定化》
「……うん、思った以上に“モンスター”してるな」
『この個体が増えるほど、ダンジョンが安定します。
生息地の確保を推奨』
「増えるのか、こいつら……?」
『適切な環境があれば繁殖可。現在の環境下は最低限の基準値クリアしてます。』
(ということは……コスパ最強モンスターってことか)
圭介は頷き、続いて他のモンスターを確認する。
「じゃあ、次は――偵察用にウズリットを1体」
《承認》
ポン、と軽い音とともに掌サイズの鳥が現れた。
ちょこちょこ歩き、キュッと鳴き、圭介の足元を歩き回る。
「おぉ可愛いじゃねぇか」
《警戒音を発します。侵入者感知に有用。繁殖力が強く、個体数増加に注意》
続いて、ラットファングを1体。
地面から影のように滲み出ると、キッと鳴き、素早く岩陰へ走り込む。
「おお!すばしっこい!ネズミにしてはでかいな」
《偵察・罠発動後の追撃などに使えます》
召喚した3体の初期モンスターたちが、広場の中を動き回り始める。
ダンジョンに、小さな“命の気配”が満ちていく。
「なんか、ほんとに“育ててる”って感じだな」
『その感覚は正しいです。ダンジョンは“戦場”であると同時に、“生態系”でもあります』
「戦いだけじゃねぇ、ってことか」
『はい。モンスターがいなければ、守りは成立しません』
圭介は目の前で動く小さな命を見つめる。
自分が作り出した存在。
守るために、使わせてもらう存在。
「よし。ここから始めるぞ!俺のダンジョン!」
ミルワームの有用性を理解した圭介は、そのまま一気に召喚を進めた。
「――ミルワーム、30匹召喚」
『承認。合計30体を生成します』
地面が脈打つように光り、太いミミズが次々と姿を現す。
うねうねと土を食み、壁に潜り、どんどんダンジョン内に広がっていく。
「うわ……圧巻だな。気持ち悪いけど、頼もしいっていうか……」
続けて、圭介は偵察用と賑やかしの意味も込めて鳥型を増やす。
「ウズリット、10匹」
《承認》
掌サイズのウズラもどきたちが、ピッ、ピッ、と軽い鳴き声を上げながら跳ね回る。
そして、ラットファングも少数導入。
「ラットファングは……5匹でいいか」
《承認》
スルスルと影のように走り去るラットファング。
これでダンジョン内は一気に賑やかになった。




