魂ポイントの使い道
『マスター。900ポイントを使ってダンジョンの強化はいかがですか?』
圭介は深く息をついた。
黒い水晶板に、淡い光の文字が浮かび上がる。
《残ポイント:900》
《ダンジョン拡張:100〜》
《モンスター召喚:1〜》
《モンスター強化:5〜》
《マスター強化:5〜》
《宝物生成:1〜》
《食物生成:1〜》
「どうする?」
目の前に広がるのは、力のメニュー。
指先ひとつで、この洞窟に“命”を呼び込める。
だがそれは同時に、“殺すための力”を生む行為だった。
自分の選択ひとつで、誰かが死ぬ。
いや、人間を殺すために、造るのだ。
「人を、殺してまで人間に戻る意味があるのか?」
呟いた声は岩肌に吸い込まれていく。
ボクシングで殴り合っても、それはルールの中の闘いだった。
だが、ここでの“勝負”は命のやり取り。
負ければ、消えるのは自分だ。
「クソ。考えすぎても仕方ねぇ。もう3人を殺したんだ。」
圭介は拳を握りしめる。
もう後戻りはできない。
『提案:まずは拠点の安定を推奨します』
「つまり、俺が生き延びるために、ここを育てろってことか」
『そうです。“命の搾取”をすることが“あなたの延命”と繋がります』
冷たくも、妙に理にかなった言葉だった。
人間に戻るためには魂ポイントが必要。
だが、生き残るためにも使わなければならない。
「まるで、終わらない仕事を任されて、帰れないブラック企業だな」
《例えとしては的確です。さらに現在、空腹による機能低下を検知。食物生成を推奨》
「……バレてんのかよ」
腹が鳴った。空腹は極限だった。
《食物生成:1ポイント〜》
「……食物召喚」
《パン:1ポイント/おにぎり:1ポイント》
「……じゃあ、パン5個とおにぎり5個」
ピカッ。
光の粒が弾け、目の前の床に、湯気を立てるパンとおにぎりが現れた。
「おっ、ほんとに出た」
温かい香りが鼻をくすぐる。
震える指でパンを掴むと、自然と涙がこぼれた。
『マスター、食べ過ぎでは?』
『摂取制限はありませんが、消化効率は50%以下です』
「人が美味しく食べてるときに。余計なこと言うな」
笑いながらも、胸の奥は痛んだ。
先ほど倒した人間、侵入者の顔が脳裏をよぎる。
「俺は、帰る。絶対に日本に帰ってやる」
一口、また一口と噛み締めるたびに、
生きるための決意が腹の底に染み渡る。
食事を終えると、圭介は水晶板に手を置いた。
「よし。まずダンジョン拡張、だ」
『拡張範囲を指定してください』
「まずは、通路を増やして……部屋と広場を作る」
《承認。必要ポイント:500》
ゴゴゴゴ……。
地響きが鳴り、床が光を帯びて形を変えていく。
一本道だった洞窟に、分かれ道が二つ生まれ、奥へと広がる。
その先に小さな広場、さらに最奥には圭介専用の部屋が形成された。
「……これが、俺の“城”ってわけか」
岩の天井を見上げる。
青白い鉱石がほのかに光り、暗闇の中でも圭介の姿を照らしていた。
「悪くない。ここから始めよう」
《残ポイント:300》
「よし……次はモンスターだ」




