人生は苦行
地獄に行く
「良くぞ、一億ポイントを貯めたな。今やダンジョンの王、魔王だ。なのに、本当に人間に戻らないのか?」
閻魔大王がじっと俺を見つめていた。玉座に座ったまま、まるで俺の心の奥底まで覗き込むような視線を送ってくる。
俺は一度、視線を外して深く息をついた。
最初、ダンジョンマスターとして転生したあの日から、ただ一つの目的、人間に戻ることだけが俺の軸だった。
それが俺にとっての唯一の希望だった。
だが今、俺の中でその希望は薄れつつある。
もはや、人間に戻るということがどれほど意味のあることなのか、わからなくなった。
「俺は人間に戻らない。」
閻魔が微動だにせず、その問いを繰り返す。
だが、その眼差しには、どこかしらの呆れも、諦めも、そして少しの優しさが混じっているようにも見えた。
「本当に、人間に戻らなくていいんだな? すべてを捨てて、ここで過ごす覚悟はできたか?」
その問いに、俺は再び頷いた。その瞬間、心の中にあったすべての迷いがきれいに消えた。
人間に戻ることを望んでいたあの頃の自分は、もういない。
だが、それだけでは終わらない。
「集めた一億の魂ポイントを使って、ダンジョンで殺した人間を蘇らせることはできるか?」
閻魔もその言葉に、少しだけ目を見開いた。
「お前が殺した人間——お前が奪った命を、もう一度生き返らせる?」
俺の問いに、閻魔はしばらく黙っていた。その後、ふっと微笑んだ。
「よかろう。お前の魂もいただくことになるぞ?」
その言葉に、俺はしっかりと頷いた。
「俺は、地獄に行く。」
閻魔の問いが、再び俺の心を揺さぶる。
地獄に行く覚悟を決めたのか?
俺はしばらく黙っていた。その時、全ての迷いが消えた。
「俺は、地獄に行く。」
閻魔が軽く目を細め、そして言った。
「お前の願い、聞き届けよう。」
その瞬間、全てが終わった。
俺は地獄へと足を踏み入れる。だが、その先には、終わりがあるのだろうか?
それとも、また新たな始まりが待っているのだろうか?
「地獄に行く覚悟を決めた者には、二度と戻ることはない。」
閻魔の最後の言葉が、闇の中で静かに消えていき、俺の意識を刈り取った。
あの時、なぜハイキングに行ったのか、運命だったのかも知らない。
登山が趣味の青年・山本圭介は、久々の休みに一人でハイキングに出かけた。
人里離れた山奥を歩くうちに、道に迷い、気がつけば不気味な鳥居と古びた社の前に立っていた。
そこは、地図にも載っていない「神社」。
ふと鳥居をくぐった瞬間、視界が暗転。
気づくと、目の前には巨大な玉座に座る赤ら顔の男——閻魔大王。
「よう来たな。死ぬにはまだ早いが、生きて帰すにはつまらん。」
「地獄に堕ちるか、ダンジョンマスターとして働くか、選べ。」
選択の余地もなく、圭介は「小鬼」の姿に変えられ、地下の空間へ転送された。
閻魔が最後に言い放ったのは
「魂ポイントを一億集めれば、人間に戻れるぞ。楽しむがいい。」
「ただし、ダンジョン運営にも魂ポイントが必要だ。頑張れよ小鬼くん。」
読んでいただきありがとうございます。
評価が良ければ続きも書きたいと思ってます。
よろしくお願いします。




