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一話 え? うそっ!? 噛み合わない会話

「え~と~? はいぃ?」


 自分でもかなりお間抜けな答えを返したなっていう自覚はある。


 だって、ディール様がいきなりおかしなことを言うから――。


「さっきから何度も言っている通り。城の中で働いてくれないか? その、お菓子がかりとして」


 よりによって、魔王様の弟君のディール様。三年前にはじめて会った時よりすっかり背も伸びて、銀糸のようなさらさらの髪も腰まで届く長さになった。


 黙って立っていても威厳を感じるその高潔な血筋のディール様の、薄い唇から紡がれたお言葉はとても不可思議で。


「あたし、たしかにお菓子づくりは好きです。でもそれは、あくまで趣味であって。三年前にもお断わりしましたように、出店も考えたことはありませんし、なにより魔王城内ではたらくなんて、想像すらしたことがないのに、なぜなんですか?」


 一気にまくしたてたあたしの顔を見下ろす濃い緑色の小さな瞳が、困ったようにゆらいでる。


 あたし、なにかおかしなことを言ったかしら?


「うん。とりあえず、ノゾミのご家族には話をしておいた。車を待たせてある。いっしょに城まで来れるか?」

「キレイ」

「はぁ?」


 キレる直前のディール様も麗しくていらっしゃる。


 キレる? 


 うん?


 あたし、ディール様を怒らせるようなことを言ったかしら?


「そういうことか。わかった。たしかに菓子づくりには慣れた道具の方が使いやすいものな。二、三日時間をやる。必要な道具をそろえておくように。服やら靴やらエプロンやらは、こちらで用意しておくから、なるべくこじんまりまとめておくように」


 ちくちくと針仕事をしているあたしの耳を、ディール様の少しかすれた声が通り過ぎた。


「あのさ。ちゃんと話を聞けな? な?」

「はい。ディール様はとっても素敵でいらっしゃいます。ですが、近頃の悪政はどういうことなんです? いきなり井戸水の使用禁止だとか、指定された水以外は使うな、だとか」


 あちゃ~、とばかりに右手で顔を覆うディール様。


「ノゾミは、そういうのを悪政と言うけど、こっちだってちゃんとした理由があるのだ。井戸水についてはまだ言えない事情がある。国民を不安にさせられない事情がちゃんとあるんだからな」


 かぁ~っこい~ぃ!!


「やっぱりなんにも聞いてない。ノゾミは三年前からなんにも変わってないのはなんでなんだ? それで、いつまで針仕事なんてつまらないことをつづけてくつもりなの?」

「だって、楽しいじゃないですか。お針子も、お菓子づくりも。ああ、そう。今日のお菓子は用意してありますよ?」

「そうではなくて」


 三年前、姉さんのお友だちが突然の大恋愛の末にギュルディーノ様と結婚して。その後のギュルディーノ様の行動の早いこと。


 まさかあの方が、前王をたおしてくださるなんて、想像もしていなかったな。


 だって前王のせいで、小麦粉も卵も値上がりするしっ。やたらに手に入らなくなるしっ。


 いいか、前王!? お菓子はねぇ、こころを潤すために必要不可欠な栄養源なのっ。


 だからっ、と力説しそうになったあたしから、ディール様がそうっと視線をはずした。


 ああ、あたしったら。また失敗しちゃった。


 つづく

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