はじめての仲間
さて、さっきぶりの冒険者ギルドだ。視線がやべぇ。
「オイ、あれさっきの…」「あのガキが?」「あぁ、『風切り』が連れてた」「かわいいな」「隠し子か?」「冗談よせよ、男嫌いの『風切り』だぞ」「ヤリモクに話掛けられんのが嫌なんじゃ?高ランク仲間の男とは普通に会話してたし」「でも女に誘われてたときはまんざらでもなさそうだったぞ」「その話詳しく」
めっっっっちゃヒソヒソされてる。「かわいい」って言ったヤツは慧眼だな。褒めてやる。
あと男嫌いの件については詳しく聞かせろ。俺初対面でめちゃくちゃ口説いちゃったぞ。
ここまますぐ依頼探しに行くのも趣がないし、ヒソヒソ話くんたちとお話しようかな。有益な情報聞けるかもしれんし。
とまで考えたところで、ガッと腕を掴まれた。なんじゃ、ルルちゃんの柔肌を雑に扱いやがって。殺すぞ。
「見付けた!!」
振り向くと、黒髪ポニテ紫目褐色肌二本角爆乳お姉さんがいた。Why?
「《影渡り》っ!」
とぷんと水に落っこちるような音がして、俺とお姉さんが影に沈んだ。Watts??
そんでもって次に光が見えた頃には見たことない場所だった。Where???
「なになになにこわ」
とりあえず作りたてホヤホヤのハンマーちゃんを構える。無体を強いてみろ、ハンマーの錆びにしてくれる。
「わっ!ごめんごめんごめんいきなり拐ってごめんなさい!!あーえっと、そうだ!僕日本人!!中身男!君と一緒!!OK!??」
「Oh…OK…?」
いやノリで受け入れちゃったけどなぜ知ってる!?ストーカーか?!師匠との前世トーク聞いてた感じ??
「あ~~~どんどん印象が悪く…!僕【闇魔法使い】で、《読心》ってスキルが使えるんです!勝手に心覗いてごめんなさいっ!!切羽詰まってて…」
「どしたん?話聞こか?」
「い、良いんですか!?ありがとうございます!身勝手に連れ去ったのは僕なのに…!優しい…!!」
ネタ通じてねぇなこれ。まぁ、状況説明してくれるなら良いか。
「えーと、何から話しましょうか」
「とりあえず敬語外して良いぞ」
「え!あの、僕前世は大学生なんですけど…年下でした?」
「イヤ俺大学の准教授」
「じゃあなおさら敬語要るじゃないですか!!」
「別に良いよ。今世ではお前のが先輩だろうし、俺は自分の口調変える気はねぇし」
「じゃあ、お言葉に甘えて…?僕の自己紹介からしま…するね。僕はゾミ。ジョブは【闇魔法使い】と【光魔法使い】で、それぞれLv.4。心配性でね。実戦経験はなくって、ずっと実家でレベル上げだけしてたんだ。それで、最近この街に来た」
「良いのか?そんなに他人にベラベラ喋って。個人情報だぞ」
「気遣いありがとう。でも、一方的に連れてきたのも知ってるのも僕だから、話しとかないとフェアじゃないでしょ?」
マジメだなぁ…
「君に声を掛けた…というか拐ったのは、仲間になってほしいから。実はその、冒険に出るのにパーティーを募ったんだけど、もう全然ダメで…」
「そうか?コミュ障ってわけでもなさげだし、何か問題が?」
「問題はー…僕の容姿がね…」
「何言ってんだ。シスター服の露出の少なさが逆にエロい完璧なプロポーションだろ」
「それがダメなんだよ!男性にはエッチな目で見られるし、かといって女性の集まりに入るのは騙してるみたいで心苦しいし…!」
「俺は全然お前をエッチな目で見るけど?」
「待って、僕の中身が男だって知った上で??」
「当然だろ」
「う~~~~~~~~~~~~~ん…まぁ、比較的カラッとした欲だし…良し!!」
「良いんだ」
「サキュバスは《読心》とは別で男の欲を感じ取れるんだよ。性行為には便利だけど、人によっては粘っこくて嫌~な感じがするのがもう無理で…」
ゾミはハァ…と重くため息を吐いた。なんか大変そうだな。
「他人事だなぁ…」
「さっきから引っ掛かってたんだが、その《読心》ってリアルタイムで思ってることが分かる感じか?」
「いや、普通は考えてることの方向性がぼんやり分かるくらいだよ。君のことが分かるのは、多分レベル差があるからだと思うよ。こんなはっきり読み取れたのは初めてだし」
「俺が経験ロクに積んでないバブで良かったな」
「ほんとにね…」
小ボケに突っ込む気力もないらしい。疲れてんなぁ~。
「それでその~、どうかな?仲間の件」
わざわざ屈んで上目遣いで尋ねられる。オイ、これ確信犯だろ。流石にエロすぎる。
マ、返答は一つだな。
「もちろん!!!俺たち仲間だろ!!!!これからよろしく!!!!!!」
「ありがとう!こちらこそよろしく!!」