花屋(終話)
王都に来てから数年が立った。
お金が思っていたよりも早く貯まってきたので、お店を出すことにした。
「城の仕事辞めたほうが良いよな」
思っていたより居心地が良かったので、やめる決心がつかない。
「ミライは辞めなくていいよ?他に人雇えばいいんだし」
思わぬアンからの提案。
そういう手もあったか。
「ごめん。最初は一緒にやる約束だったのに」
「いいよ。私は食堂のお仕事で接客とか勉強になったし」
お店の出店場所をアンといくつか見てまわった。
「やっぱり表通りは値段が高いな」
「裏でも大丈夫だよ。人気が出れば隠れた名店になるし」
アンはがぜんやる気に満ちているみたいだ。
最初から上手くいかないかもしれないけど、俺が仕事をやめなければ共倒れしなくても済む。
これはこれで有りなのかな?
細かいところはアンと一緒に相談して決めて、最初の通り薬草と生花を売るお店という事で決まった。
以前お店として使っていたテナントを、改装して店にする。
新しくお店を作るよりも安くなるからだ。
「名前はどうする?」
「そうだね~」
やっぱりすぐには決まらない。
まぁ、改装して出来上がるまでに考えておけばいいかな。
「ん~」
アンはうんうん悩んでいる。
「赤い・・少女」
俺は思いついたことを言ってみた。
「それ私じゃない?」
「じゃぁ黒髪のミライ」
「まんまじゃないか」
何かうまい名前はないだろうか。
結構難しいな。
分かりやすくて、憶えやすいのが良いな。
花屋と名前とか。
「花屋赤い少女」
「花と薬草のお店」
「花と薬草のアン」
「何で、私の名前を入れるのよ・・恥ずかしい・・」
「でも俺のいた世界では普通だよ?アンの働いていたところもそうだったんじゃない?」
「あ~そういえばそうかも」
「じゃあ、『花と薬草のお店アン』で決まりね」
「もう、ミライったら強引なんだから・・」
顔を真っ赤にしているアンは、とても嬉しそうだった。
****
お店は少し裏に入った通りにオープンした。
最初なので花はそんなに多く仕入れていない。
どちらかというと、薬草を集める方が大変だった。
「お客さん、来るかな・・」
緑のエプロンを付けたアンが、不安げに外を見ている。
俺は3日休みをもらって、お店を手伝う事にした。
「きっと来てくれるよ」
目新しいものを見る人はいるはずだ。
ここは王都なんだから。
通りかかる人に声をかける。
「いらっしゃいませ。今日オープンしました。良かったら見ていってください」
満面の笑顔でアンが声をかけた。
一人、お店の中に入ってくれた。
最初は売上とか、気にしないほうが良いかもしれないな。
認知してもらう方が大事だから。
「ここ、薬草もあるんだね」
冒険者の男性は声をかけてくれる。
「リクエストがあれば、出来るだけ揃えるようにします」
「へえ~そうなんだ」
男性はするっとお店から出て行った。
「行っちゃった・・」
「まあ、最初はそんなもんだろ」
俺はアンの肩を叩いて励ました。
お店の話が持ち上がった時、ひそかに思っていた事があった。
あの花を売ってみたらどうなのだろう?
いや、止めておいた方がいいかもしれない。
要らぬ心配事を増やしてしまいそうだ。
まあ想像するだけなら自由だし、面白そうだけどね。
通る人を眺めながら、妄想する。
「「いらっしゃいませ」」
アンが声を張り上げている。
「ミライも手伝ってよ」
「ごめん。ごめん」
「「いらっしゃいませ。『花と薬草のお店アン』本日オープンしました。良かったら見て言ってください」」
俺は大声を張り上げた。
俺はアンと並んで緑のエプロンを身に着けている。
一瞬ぎょっとしたような目線が俺に向けられた。
あ~俺見た目怖いからなぁ。
お店向けじゃないのかもしれない。
でも目立って宣伝になるかもしれない。
頑張るぞ。
俺は懲りずに声を通行人にかけ続けた。
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