ラベンダー
「「助けてくれ!」」
バン!と扉が開かれる。
冒険者ギルド内が騒めきだした。
「いったいどうしたんだ?」
「怪我人が!早くポーションを!」
入ってきた男は大怪我をしているようだ。
人が怪我した男を囲んでいる。
ギルド職員があわてて、回復ポーションを持ってきた。
ガラス瓶なのか、薄い青色の液体が男にかけられる。
すうっと傷口がふさがっていった。
隣にいたアンが震えている・・俺にしっかりしがみついて。
ここにいるのはまずいのかもしれない。
アンをかかえて、冒険者ギルドを出た。
「大丈夫?顔色が真っ青だよ」
「・・・・」
何かトラウマがあったりするのだろうか。
俺はすぐ近くの宿屋に入った。
ベッドに座らせて、様子を見る。
こんなアンは初めてだった。
****
「・・・私ね昔、襲われたことがあって・・血を見るのが怖いみたいなの・・あと、前に放心状態になったでしょ?」
俺が盗賊に襲われたって言った時、アンの様子がおかしかった。
「とはいっても、襲われた事は憶えてないんだけどね」
アンは目を伏せている。
「そっか。だから冒険者登録しないんだ」
ずっと疑問に思っていた。
冒険者のほうが稼げるはずなのに、何で登録しないのか?
疑問だったけどあえて聞かなかった。
そんな事があったなんて・・・。
「ごめんね。全然知らなくて・・無理して冒険者ギルドに行かなくていいからね?」
俺はアンの頭を優しく撫でた。
冒険者はいつか辞めた方がいいだろう。
何か他の方法を探そう。
****
「俺、冒険者辞めようと思うんだ」
「え?」
「ああ、今すぐじゃなくて、しばらくしたら・・って事だけど」
冒険者自体にこだわりはない。
他にお金を稼ぐ、何かいいアイディアはないだろうか。
まあ、今すぐに決めなくてもいいのだけれど。
「私のため?」
アンは真っすぐ俺を見つめている。
「俺のためかな。何て言うか、アンが辛そうなのを見ているのも辛しい、また同じ事があるかもしれないし、いつかは辞める日が来ると思えば、早いか遅いかの違いだよ」
少し理屈っぽかったか。
アンが気に病んでくれなければいいのだけど。
「私のためとミライのためね」
納得してくれたようだった。
何かリラックスできるものでもあればいいのにな。
前の世界であったハーブみたいなやつ。
「あ!」
「え?どうしたの?」
俺はラベンダーをイメージする。
園芸店の店先に売っていた花。
確かリラックス効果があったはず。
紫色の小さい花が手のひらに出現した。
「これ、匂い嗅いでごらん?」
「?」
アンは素直に匂いを嗅いでいた。
俺はハンカチを取り出して、花を包んだ。
「気持ちが落ち着くと思うんだ。持ってて」
時間が経つと匂いが薄まってしまう。
俺は何回かラベンダーの花を出して、アンに渡していた。
アロマオイルというのがあるはずだけど、見たことが無いので、俺には再現できない。
再現できれば・・悔しい気持ちが心に残った。
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