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覚悟

「助けてあげる義理はないんだけど・・」

一度この能力を見せたら、頼られてしまうのは目に見えていた。

だから助けるのは一度だけ。

俺は覚悟を決めた。


****


「小麦ってどこにしまってありますか?」

ファーレンさんに訊ねる。

「小麦は、家の裏の倉庫にある・・」

ファーレンさんはうつむいたまま、顔を上げようとしない。

憔悴しょうすいしきっているようだった。


「裏か」

俺は家の外に出て、倉庫に近づいた。

ドアには、カギがかかっているようだった。

「アン、ここ開けてくれる?」

「え?小麦見たいの?いいけど・・」


何も疑わずにカギを開けてくれるアン。

小麦ってどんな感じだっけ。

はっきりとイメージ出来ないと、作れないので目で現物を確認する。

触ったり、手で持ったりしてみた。

「変なの」

アンは首を傾げた。

「小麦、あとどれくらいあったら足りるの?」

「ん~三倍くらい?」

「そっか」


俺は目を閉じてイメージしてみる。

小麦出てこい!

手のひらに小麦が現れる。

一個作ったところでアンに確認してもらう。

「え?今何やったの??」

「ともかくこれ小麦かな?見てみて?」


アンは指でそっと殻を取って、中の実を見てみた。

「多分、小麦だと思う」

「よかった」

「これからすることは内緒にしてね」

俺は右手の人差し指を、口に当てていった。


「え?」

俺は小麦を大量にイメージしてみた。

わらわらと何もない空中から小麦が降ってくる。

「???」

アンは目をぱちくりさせて見ている。

そうこうしているうちに、倉庫に小麦が一杯になった。

「これで足りるかな?」

「足りるって・・多いくらいだよ?これどうやったの?空間収納魔法アイテムボックスじゃないよね?」

流石にごまかしきれなくなったので、俺は正直に答える。

「実は俺、イメージしたものを作る能力があるんだ」


「ミ、ミライあの・・」

アンが何か言おうとしているが、口から言葉が出てこない。

俺は何も言わず、小屋に帰った。


****


久しぶりの我が家。

もうすっかり馴染んでしまっている。

最初来たときは、ほこりっぽかったっけ。

何もない部屋からずいぶん物が増えた気がする。


「引っ越さないとな・・」

俺は早めにベッドに潜り込んだ。

明日は朝早く起きないと。

アンに起こされるようじゃ無理だからな。


ここに来てからどれくらい経ったっけ?

寝ようと思ったけど中々寝付けないでいた。

「もう・・会えなくなるのか・・」

俺は今までの事を思い出していた。

アンの事を考えると、ギューッと胸が締め付けられる。


「俺ってバカかもな」

きっとこれが最善なんだ。

何回も自分に言い聞かせ、目を閉じた。

まぶたから、雫が一滴、一滴、したたり落ちて枕を濡らした。






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