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大樹の白い花

「はぁはぁ・・もう少しで頂上だ・・」

こんな本格的な山登りは初めてだ。

明日は筋肉痛かもしれない。


「ミライは体力無さすぎだなぁ。もっと筋力付けたほうが良い」


華奢なカモミールさんは楽々と山道を登っていた。

地元だというのもあるのかもだけど。


「俺のいた世界はあまり運動しなくてもよかったですからね」


せいぜい遠足か、部活動くらいなものか。

俺は部活なんて入ってなかったけど。


「もう少しで頂上だね。ご褒美をあげよう」



****



「やった~なんとか登った~」

疲れたが、やりきって嬉しさがこみあげてきた。

俺は近くの岩に座り込んだ。


「お疲れ様。はいご褒美」


「ん?」


カモミールさんが俺の体に触れる。

白い光が流れ込んできた。


「回復魔法だよ。これで下りも楽になるだろ?」


「ありがとうございます」


「目的の木はあそこに生えているよ」


見ると一本の大樹に白い花が一面に咲いていた。


「昔はもっと沢山あったんだけどね・・いつの間にかあの木だけになってしまってね」


「桜みたいだな」


季節も相まって、不思議と桜という感じに違和感がなかった。


「サクラとは?ミライの世界に生えていた植物か?」


「はい。それは国中に咲いて、みんな楽しみにしているくらいですよ」


「へええ・・・」


桜か。

おれがここに来ていなければ見れたのだろうな。


「あの木持って帰れないですか?」


「ええ?無茶を言うなぁ。でも下に生えている小さい木なら大丈夫かな?」


よくみると、根っこのところに小さい木が生えていた。


「この山から出たら魔力はなくなってしまうかもしれないけど、それでもいいなら」


「育ててみたいんだ」


この木ほど大きくならなくても、キレイな花をまた見たい。

植物を育てたことは無かったけど、やってみたくなった。


俺は当初の依頼のマリー花の花弁を大樹から頂く。


「少し、もらうね」

俺は木に話しかけた。

花弁をそっと、アイテムボックスに収納した。

これで鮮度は落ちないはずだ。


「ミライ、木を持って行っていいって言ってる」


「え?」


カモミールさんは木と話が出来るようだ。

「大事にしてくれだって」


「ありがとう」


俺は大樹に語り掛けた。

よろしくな。

大樹が俺にそう語り掛けたような気がした。


俺は小さい木を大事に抱え、アイテムボックスにしまった。

家に帰ったら一番に植えて育てたい。

マリー花よりもそちらの方に気が向いていた。


帰りは早かった。

行く時と帰るとき、帰るときの方が早く感じるのはなぜだろう。

山を下りて、少し休んで、町に戻る。

終わってしまえばあっという間だった。


俺はまさか、アンがどんな気持ちでいるのかなんて、全く知りもしなかったのだけれど。




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